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太ったからこそいい

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第一章

                太ったからこそいい
 四宮由梨は結婚して三年目の主婦である、夫の小五郎とは今も仲睦まじいが。
 友人の五条早苗に久し振りに会った時に喫茶店の中でこう言った。
「あの、最近主人が」
「どうしたの?」
「前にも増して夜私を求めてくるの」
 大きな蒲鉾型の目でやや面長で赤い大きめの薄い唇を持っている。色白で長い黒髪をポニーテールにしている。背は一六四位だ。
「どういう訳か」
「いいことでしょ、それって」 
 早苗はその話を聞いてこう返した、やや細めの黒目がちの目で五角形の白いの顔で黒い髪の毛をショートにしている。背は一六〇程でスタイルはいい。二人共今はスラックスにシャツというラフな格好である。
「旦那さんがそうしてくれるなら」
「そうだけれど新婚の時みたいにね」
「求めて来るの」
「結婚してから半年位までの時みたいにね」
「今はなのね」
「毎日。それも何度もね」
「旦那さん今年三十よね、それで肉体労働なのに」
 作業現場の監督をしているのだ。
「そうなの」
「ジムにも通っていてね」
「それでそれは凄いわね」
「どうしてかしら」
「それは旦那さん本人に聞いてみたら?」
 早苗は由梨に率直に答えた。
「もうね」
「主人自身になのね」
「別に悪いことじゃないし聞いたら言ってくれるでしょ」
「そうね、ただ私最近太ったのよ」
 由梨はここで早苗にこのことを話した。
「服の上からじゃわからないけれど」
「その実はなの」
「お腹も出て身体全体がね」
 それがというのだ。
「結婚したての時よりも」
「太ったの」
「そうなったの、スタイル悪くなったのに」 
 それでもとだ、由梨は話した。
「どうしてかしら」
「旦那さんが余計になのね」
「求めて来るのよ」
「じゃあそのことをね」
「聞くわね」
「そうするわね」 
 こう言ってだった。
 由梨は実際にだった、その日夕食を作ってだった。
 仕事とジムから帰ってきた夫の小五郎、一八〇近い背で引き締まった身体に細面で細い目に明るい顔立ちで癖のある茶色がかった髪の毛の彼に一緒に夕食を食べている時に尋ねた。
「あなたどうして最近夜毎晩なの?」
「駄目か?」
「駄目じゃないけれど。子供だって欲しいし」
 まだいないがというのだ。
「それでもね」
「毎晩なのがかよ」
「気になって。新婚の時みたいにだから」
 早苗に言ったことをそのまま言う。
「だから聞いてるけれど。最近私太って来たのに」
「その太ってるのがいいんだよ」
 小五郎は食べながら答えた。
「もうな」
「太ってる方がいいって」
「俺な、痩せてる人よりもな」
 おかずのチキングリルを食べつつ話した。
「太ってるな、今のお前みたいな体型の方がな」
「好きなの」
「服を着てたらわからないけれど」
 太っていることがというのだ。
「それが脱いだらな」
「そうしたスタイルなのがなのね」
「好きでな、それで最近な」
「毎晩なのね」
「そういうのが一番そそられるんだよ」
 小五郎は笑ってこうも言った。 
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