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大秦王の使者

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第二章

「ローマよりよかったな」
「左様ですな」
「そして店も多くです」
「商われているものの質も種類も量もよいです」
「麦にしましても」
「そしてだ」
 使者はさらに言った。
「あの生地だ」
「絹ですな」
「あれは素晴らしい生地です」
「あの様なものを着るとなると」
「凄いですな」
「酒も食べものもよい、何かだ」
 使者はその巨大な門を前にして言った、それこそローマですらそうそうはない様なその門をである。
「この国はローマよりもな」
「豊かな様ですな」
「それも遥かに」
「そう感じますか」
「どうもな、そして都はどうか」
 使者はさらに言った。
「今から中に入ってな」
「そうしてですな」
「見ますな」
「そうしますな」
「そうしようぞ」
 ローマの兵よりも質のいい鎧と兜を身に着け戟という武器と腰の剣で武装した兵を観つつ言った、その横には弓矢や弩を持った兵もいる。
 門を潜り街に入るとだった。
「何という人と店の多さか」
「家の多さか」
「これはローマより上か」
「ローマより賑やかだぞ」
「人の数はローマと変わらずとも」
「人や馬、車の数が違う」
「立派な屋敷も多い」
「凄いところだな」
「全くだ」
 使者も驚きを隠せない顔で言った。
「これでは我等はな」
「まるで物乞いですな」
「その一団ですな」
「長旅を経てきたにしても」
「それでも」
「元の身なりが違う」
 そもそもというのだ。
「ローマから見れば」
「全くですな」
「書も多い様ですぞ」
「何か木かそれに近いものを束ねてそこに文字を書いていますが」
「それを読む者も見受けられますが」
「その書の数も」
 これもというのだ。
「ローマより多い様です」
「何か羊皮紙より質のいいもので作った書を持っている者もいます」
「その書も多いです」
「書もここまで多いとは」
「恐ろしい国ですな」
「どういった国か、そしてこの道の広く長いことといえば」
 使者は今度は自分達が今歩いているそれの話もした。
「恐ろしいまでだ」
「人と領土は同じ位でも」
「豊かさが違いますな」
「ローマとは比べものになりませぬ」
「こちらの方が」
「そう思えるな」
 使者は周りのあらゆるものを驚きを隠せない顔で見回しつつ供の者達に話した、そうしてであった。 
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