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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~

作者:黒井福
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GX編
  第112話:目には見えずとも愛はある

 
前書き
どうも、黒井です。

今回はちょっとした説明会。奏のシンフォギアがアルカノイズに分解されなかった理由についての説明もあります。 

 
 何処とも知れぬ城の様な場所の中、その玉座には金髪の1人の少女が腰かけていた。床につくほどの金髪を三つ編みにした少女の数歩前、玉座に続く階段の最上段には颯人と対峙した魔法使いビーストに変身した少年も居る。

 さらに玉座に続く階段を降りた先にある広場には台が4つあり、奏達と戦ったオートスコアラーにクリス達と戦ったレイアが台の上でポーズを取っているのが見える。
 残りの一つには赤い髪と異形の爪が生えた手を持つ少女がやはりポーズを取っており、その少女に青いメイド服のような服装の少女が寄り添っていた。

「いっきま~す♪ チュッ」

 青い服の少女は玉座に座る少女に向けて告げると、赤い髪の少女に口付けをした。その様子を他の者達は顔色を変えずに見ている。

 2人が口付けをしている部分が仄かに光り、何かが流し込まれるような音が響く。どれだけそうしていたか、青い少女が口を離すと赤い少女が動き出した。

「ん……ぁ、あ~……」

 赤い少女が動き始めると青い少女はその場から数歩離れる。青い少女が離れると、赤い少女はポーズを崩しその場にへたり込んだ。そのままその場で立ち上がろうと身動ぎするが、赤い少女はどこか弱々しく声を上げるだけで立ち上がる事はなかった。

「――――最大戦力の一角……ミカを動かすだけの想い出を集めるのは、存外時間が掛かったようだな?」
「いやですよぉ、これでも頑張ったんですよ? なるべく目立たずに、事を進めるのは大変だったんですからぁ」
「心配するな。ミカの分は俺が働く。現代の魔法使いも大した事なかったしな」

 ミカと呼ばれた少女が本調子でない事に玉座に座る少女が仄かに落胆を滲ませるが、ビーストの少年が自信に満ちた声で告げる。
 が、玉座の少女は彼がウィズに敗れてボロボロの状態で帰ってきた事を忘れてはいなかった。その少年が、相手を侮った事を告げた事に鋭い視線を向けた。

「……無様にボロボロになって帰って来た身で、よく吠えるな?」
「ん~?」

 少女の言葉に、少年は惚ける様に視線を中空に彷徨わせる。その光景に少女は玉座を立つと、少年に近付きその背を蹴り飛ばした。

「づっ!?……へへへっ」
「フン……まぁいい。これで、オートスコアラーは全機起動。計画を次の階梯に進める事が出来る」

 少女が満足そうに言うが、背中を蹴られた少年とは別にミカと呼ばれた少女も何やら調子が悪そうだった。立ち上がろうとしても元気無さそうに座り込んでしまう。

「どうした、ミカ?」
「お腹が空いて、動けないぞ……」

 何らかの不調があるのかと玉座の少女が声を掛けると、ミカは力なくそう答えた。その言葉に少年は肩を竦め、玉座の少女は溜め息と共に青い少女に目を向けた。

「ガリィ」
「あ~、はいはい。ガリィのお仕事ですよねぇ」

 青い少女――ガリィは芝居がかった仕草でその場を後にしようとする。その背に向け、玉座の少女がついでとばかりに声を掛けた。

「ついでにもう一仕事、熟してくると良い」
「俺も一緒に行こう。連中にはまだ戦いの場に出ていない魔法使いが居た筈だ。もしそいつが出てきた場合、その力も見ておきたい」
「ふむ……まぁそうだな。最悪でもガリィは守ってやれ、ハンス」
「了解、キャロル」

 少年と少女は互いをハンス、キャロルと呼び合い、ハンスは立ち上がるとガリィの傍へと向かう。

 揃ってその場を後にしようとするハンスとガリィ。その際、ガリィは後ろを振り返りキャロルの事を見た。

「そう言えばマスター? エルフナインは連中に保護されたみたいですよ?」
「把握している。何も心配はいらん。それよりガリィ、分かっているとは思うが……」
「わ~かってますって。ハンスには手出ししたりしませんよ~だ。ハンスはマスターのですものね~」
「分かっているならばいい。さっさと行け」

 意味深な笑みを浮かべるガリィに対し、キャロルは次第に苛立ちを隠さず告げる。犬を追い払うように手を振ってさっさと行くように促すと、ガリィは態とらしく怖がるような素振りを見せハンスの腕に抱き着き引っ張っていく。

 2人の姿が消え、その場に残されたのはキャロルにレイア、ミカ、そして奏達と戦ったオートスコアラー・ファラのみ。

 空腹を抱えて座り込んでいるミカは別として、レイアとファラは2人を見送ると視線をキャロルの方へ向けた。

 直後、2人の視界を何かが通り過ぎる。視界を通り過ぎて行った物を目で追うと、その先ではガリィが立っていた台に突き刺さった一本のナイフが。

「~~~~~~~~!!」

 先程までとは打って変わって、キャロルは奥歯を噛みしめ怒りを押し殺すようにしながら台に刺さったナイフを見ている。状況から見て、キャロルがナイフを投げたようだ。

 それが分かっても、レイアとファラは何も言わなかった。ただ何も言わず、主の怒りが静まるを静かに待っていたのだった。





***




 時は少し遡り、S.O.N.G.の本部である潜水艦の発令所には颯人を始めとした魔法使い3人と、奏を始めとした装者7人が集まっていた。

 突如としてS.O.N.G.のメンバー達が突然の襲撃を受けた。しかも敵は錬金術と言う魔法と酷似した能力を駆使してくる。
 この事態に、弦十郎は海外で活動していた颯人・奏・翼・マリアらを招集し、今後の対策を練る事にしたのだ。

「魔法使いとシンフォギア装者勢揃い……とは言い難いのかもしれないな」

 集まった面子を前に、弦十郎は開口一番やや渋い顔でそう呟いた。それもその筈で、現在翼とクリス、そして奏のシンフォギアは現在了子の手により修理作業が行われていたからだ。

 先日の戦いで、翼とクリスはノイズに酷似した敵によりギアコンバーターが破損。また奏も、2人ほどではないがシンフォギアに小さいとは言い難い損傷を受けていた為、メンテナンスを兼ねた修理を受けていた。

 弦十郎の後方のモニターには現在の3人のギアの修理状況が表示されている。装者は飽く迄使う側であって専門家ではないので、それを見ただけでは3人のシンフォギアが破損しているという事だけしか分からない。魔法使いの3人は言わずもがなだ。

「これは?」

 モニターに映ったギアペンダントに慎二が首を傾げると、あおいと朔也が説明し始めた。

「先日の戦闘で破損した、アメノハバキリとイチイバル、そして奏ちゃんのガングニールです」
「ん? 奏のガングニールもやられたのか?」
「やられたって言うより、ダメージを受けたってだけだよ。ギアは分解されなかったけど、ダメージはしっかり受けてたから了子さんが修理するって」

 戦闘の結果を聞いていた颯人は、奏のガングニールが破損したと聞いて首を傾げたが詳しい事を奏が説明する
 それが終わったのを見て、朔也が説明を再開した。

「奏ちゃんのガングニールはともかく、残りの二つに関してはコアとなる聖遺物の欠片は無事です。ただ……」
「エネルギーをプロテクターとして固着する機能が、損なわれている状態です」
「……セレナのギアと同じ……?」

 あおいの説明に、マリアはアガートラームのギアを見た。

 フロンティア事変の最後の戦いでマリアはアガートラームを纏えたが、戦いを終えるとギアは破損した状態に戻りその後うんともすんとも言わなくなった。
 その後はセレナが戦えない事とマリアが収容所に入れられた事、更には了子が多忙に追われた事も手伝って今まで了子の元で保管されていたのだ。なのでこちらも破損した状態から変わっていない。

 とは言え、ここにはシンフォギアの専門家である了子が居る。彼女が居れば、ギアが破損しても修理する事は可能であった。

「勿論直るんだよな?」

 クリスが信頼を込めて問うと、モニターに了子の顔が映し出された。その表情は若干疲れているように見える。

『勿論直るか直らないかで言えば直るわ。ただ直せたとしても、あの新型ノイズがギアを分解した絡繰りが分からないと今回の戦いの繰り返し。一撃でもノイズからの攻撃を喰らえばアウトって言う、今までに比べて遥かに危険な戦いになるわ』

 了子の言葉に装者達は息を吞む。今までの戦いで命の危機を感じなかった訳ではないが、ギアが一撃で分解するノイズの出現に今までとは違う緊張感を抱かずにはいられなくなるのは無理からぬ事だった。

「となると、現状戦えるのは俺と透、響ちゃんの3人だけって事か」
『いえ、奏ちゃんのギアは損傷自体は小さいから、少しの修理で戦線復帰できるわ』
「あ、そう言えば何でアタシのギアは分解されなかったんだ? 翼と同じ攻撃を喰らった筈なのに?」
『そこも分からないのよねぇ。修理と同時進行で現在調査中なのだけれど、分解の仕組みが分からない限りどうにも……』

 天才とは言え万能ではない。分からない事はどうしても存在する。了子が不可解な事態に首を傾げていると、颯人の言葉に切歌と調が食いついた。

「待ってほしいデスよ!」
「私達だって――――」

「『駄目だ(よ)』」

 自分達も戦えると主張する切歌と調。実際先日の戦いでは、戦えなくなった透とクリスの2人を助け出したのはこの2人だ。2人には敵に挑み、戦えなくなった透たちを助けたという実績がある。
 それなのに戦力外通告されるのは納得いかないと声を上げる2人だったが、それを遮る様に弦十郎と了子が声を上げた。

「どうしてデスか!?」
「……LiNKERが無いからに決まってるだろ」
『奏ちゃんの言う通り。ここに在るLiNKERは奏ちゃん用に調整した物。調整も無しに使ったら、どんな副作用が出るか分かったものじゃないわ』

 奏に続けるように了子が説明した。彼女の言う通り、今本部に存在するLiNKERは奏専用に色々と調整を施してある。肉体が成人しており、また本人の希望もあって薬効を高められた劇薬だ。それを未成年の2人に投与した場合、最悪初期の奏の様に副作用に苦しめられる可能性すらあった。

 そんな事を見過ごせる訳がない。ましてや、LiNKERを用いないでシンフォギアを纏うなど……

「……何処までも私達は、役に立たないお子様なのね」
「……メディカルチェックの結果が思った以上に良くないのは知ってるデス。……それでも――!?」

 口惜しそうに俯く2人に、奏は近付くとそれぞれの頭を撫でた。

「「わっ!」」
「そうしょげるな。今は、って話だ。状況が落ち着けば、了子さんが2人に調整したLiNKERを用意してくれる。そうだろ、了子さん?」

 奏がモニターに映る了子を見ると、了子は仕方ないという様に苦笑した。誰も2人に合わせたLiNKERを作るなどと言ってはいない。寧ろ了子としては、奏の二の舞を避ける意味でも2人にLiNKERを与える事にはやや否定的であった。

 とは言え、戦闘に出れる者が限られるS.O.N.G.からすれば戦える者は1人でも多く確保したい。戦える者が1人でも多くなれば、その分1人1人に掛かる負担は軽くなる。
 尤も了子と弦十郎は、そんなこと口が裂けても言わないが。

「だから、今は大人しく待っとけ。な?」
「そうだぞ。2人に何かあれば、マリアとセレナも悲しむ。2人の気持ちは俺も分かるから、今は耐えよう」

 そういう意味では、一応この場に参加しているガルドも同様だった。彼の場合は、アルドの許可さえ出れば直ぐにでも戦いに参加できる。
 問題はアルドがその許可をなかなか出さない事なのだが…………

「――――さてと」

 徐に颯人が手をパンと叩く。その音に全員の視線がそちらに向いた。

「現状確認はこれでお終いかい、おっちゃん?」
「ん、そうだな。今共有できる状況はここまでか」
「んじゃ、次はあの子の事か?」

 颯人の言うあの子……とは、先日の戦いでクリスと透に接触してきた少女・エルフナインの事だ。切歌と調に2人が救助された際、一緒に連れてこられたのである。
 明らかにこの事態に関して何らかの情報を持っている様子だったし、何よりも色々と見てしまった彼女は例え無関係であったとしても放置する事は出来ない。

 今、そのエルフナインが居る部屋に弦十郎を始めとしたS.O.N.G.の主だった面子が集まり事情を聞いていた。

「僕は、キャロルに命じられるまま、巨大装置の一部の建造に携わっていました」

 決して広いとは言えない部屋に、エルフナインは当然の事として弦十郎に魔法使い3人に装者7人が集まる。どう考えても部屋の面積に対して人数が多すぎて、弦十郎にガルド、颯人の3人は部屋の入口から中の様子を見ていた。

「ある時アクセスしたデータベースより、この装置が世界をバラバラに解剖するものだと知ってしまい、目論見を阻止する為に逃げ出してきたのです」
「……世界をバラバラにとは、穏やかじゃねえな」

 エルフナインの話を聞いて誰もが思った事を、クリスが代表して口にした。

「うん……それを可能にするのが錬金術です。ノイズのレシピを基に作られたアルカノイズを見れば分かるように、シンフォギアを始めとする万物を分解する力は既にあり、その力を世界規模に拡大するのが建造途中の巨大装置『チフォージュ・シャトー』になります」

 何とも恐ろしい話だ。ノイズの攻撃にすら耐えるシンフォギアをも分解してしまう力を世界規模で使われたら、どれほどの被害になるか等想像もしたくない。

 だがエルフナインの話には明らかに噛み合わない部分が存在していた。

「ちょい待ち。今万物を分解するって言ったが、なら何でアタシのガングニールは分解されなかったんだ? アタシのギアも翼と同じ攻撃を受けたんだぞ?」
「そ、それ、は…………」

 どうやら奏のシンフォギアが分解されなかったのはエルフナインにとっても想定外の事であり、何と答えるべきか分からない様子で視線を彷徨わせていた。

 答えに窮したエルフナインが黙ってしまった事で、その場に居心地の悪い沈黙が降りてきた。その沈黙を1人の女性が破った。

「その疑問については私が答えましょう」
「うぉっ!?」
「なになに?」
「アルド?」

 声を掛けてきたのはアルドだった。何時の間にか颯人達部屋の外に居た男3人の背後に居たアルドが声を上げたものだから、部屋の外に居た3人は飛び上がるほど驚いた。
 アルドの更に後ろには、何故かウィズの姿もある。彼は何も言わず、部屋の中のエルフナインの事を見ていた。

「アルド? 了子さんの手伝いでアタシのガングニール修理してるんじゃ?」
「修理のお手伝いと言うよりは、気になる事があったので調査に付き合わせてもらったんです。その結果、奏さんのシンフォギアについて分かった事がありました」
「それは?」

 全員の視線を受けつつ、アルドはフードの陰から見える口を開いた。

「奏さんのシンフォギアが軽い損傷で済んだのは、結論から言ってしまえば颯人が原因です」
「俺?」

 他の装者と奏を比較した際、明確に違うところが一つある。
 それは颯人と魔法的な繋がりを持っているという事だ。奏が受けるシンフォギアのバックファイアを代わりに請け負う為、颯人は奏と魔法でパスを作り負担を自分の方に流している。その繋がりは未だに切れてはいなかった。

「颯人の主観では奏さんの負担を自分が受けているだけと言う印象でしょうが、その実2人の間には魔力でラインが出来ている状態です。そのラインを維持する為、奏さんには颯人から僅かながら魔力が絶えず流れ込み続けているんです」
「で、それが?」
「錬金術も魔法も、術や能力の行使には魔力が使われています。そして術として変換された魔力同士は、場合にもよりますが互いに反発し合います」

 何より奏に流れ込んだ魔力はシンフォギアにも影響を及ぼしており、シンフォギアのバリヤーフィールドに混じり奏の体とシンフォギア自体を守護するのに役立っていた。
 つまり、奏のシンフォギアは奏自身も気付かぬ内に魔法使いの鎧に近い性質を持ち始めていたのだ。シンフォギアと魔法使いの鎧、両方の性質を持ち始めていたと言っても良い。

 その結果、奏のシンフォギアはアルカノイズに分解される事を免れたのだ。ただし、魔力による防御力のブーストも完全なものではなかった為、度重なるアルカノイズの攻撃などで損傷は免れなかったらしい。

 アルドの話を聞き、颯人は嘗て使用した指輪を取り出し眺めた。

「そっか……俺、また奏を守れたんだな」
「颯人……」

 感慨深そうに呟く颯人に、奏が熱の籠った視線を向ける。2人の間に漂う雰囲気に、中てられることになった他の者達は逆に恥ずかしがったり興味深そうな視線を向けたりしていた。

 その雰囲気を払う様にウィズが咳払いをした。

「んんっ、そんな事よりそこのお前に一つ聞きたい」
「は、はい! な、何でしょう?」
「単刀直入に聞く。お前、錬金術師だな?」
「はい。ですが、キャロルの様に全ての知識や能力を統括しているのではなく、限定した目的の為に作られたにすぎません」
「作られた?」

 生まれた、ではなく作られた、と言う言い方をするエルフナインに響が疑問の声を上げるが、一方でその答えを聞いたウィズは傍から見ても分かるほどの敵意をエルフナインに向け始めた。

「……ホムンクルスだな?」
「! ご存じでしたか。その通りです」
「一応聞くが、製作者は件のキャロルか」
「はい……」

 次第にウィズの敵意がエルフナインにも伝わったのか、微かに体を震わせ始める。異様な緊張感が漂い始めた事に、その場の全員が固唾を飲んでエルフナインとウィズを交互に見た。

 と、その時ウィズは徐にハーメルケインを取り出しエルフナインに向け近付こうとした。瞬間、彼の意図を察した颯人と弦十郎が左右から抑えに掛かり、ガルドが部屋の前で通せんぼして通れないようにした。

「ちょちょちょ!? ウィズいきなり何してるんだよ!?」
「お前達は錬金術師の事を何も分かっていない。今回の事件の首謀者の手により生み出された存在だぞ、何か仕掛けられているに決まっている。ここで始末する方が後の為だ」
「だが同時に重要な情報源だ!? それにだからと言って命を断とうとするなど間違っている!!」
「そんな甘い事を言っていると、今に足元を掬われるぞ!」

 ウィズは完全にエルフナインを早々に始末する事に決めているようで、颯人と弦十郎を振り払ってエルフナインに刃を振り下ろそうとしている。強い殺意を向けられ、エルフナインは身を縮こませて震えていた。エルフナインを守る様に、部屋の中で響が彼女を抱きしめ透が2人を背に庇う様に立つ。

 尚も暴れるウィズに、颯人は弦十郎と頷き合うと力尽くでその場から引き摺って行こうとした。

「とにかく! まずは色々と話を聞いてからでも遅くねえだろ、とりあえず落ち着け!」
「まずは頭を冷やせウィズ!」
「放せ貴様ら!! 後で後悔する事になるぞ!」
「あぁ、もう!? 悪い、ちょっとウィズの頭冷やさせて来る! 話は後で纏めて聞くから進めといて!」
「あ、アタシも行く!」

 ウィズを颯人と弦十郎が引っ張っていき、奏がそれについて行くと最後にアルドがエルフナインを一瞥して去っていった。

 後に残されたガルド達は、ウィズ達の姿が見えなくなったことを確認すると重圧から解放され大きく溜め息を吐くのだった。

 その光景を遠くから見てほくそ笑んでいる者が居るとも知らずに………… 
 

 
後書き
という訳で第112話でした。

ビーストに変身した少年の名前はハンスと言います。因みにフルネームはハンス・キャンベリアです。

奏のシンフォギアが分解されなかったのは、端的に言ってしまえばこの時点で改修されたシンフォギアに近い性能になっていたからです。本作では魔法使いと錬金術は根っこの部分が同じなので、錬金術に対しても防御力を持っているという設定です。この設定まで持っていくために、颯人には奏をあんな風に助けさせた面もあります。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。 
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