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戦姫絶唱シンフォギアGX~騎士と学士と伴装者~

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第19節「Edge works feat.Thrustar」

 
前書き
就活と引越し、そしてソシャゲ。
ウマ娘とマスターデュエルにかまけてたらいつの間にか数ヶ月、そして何やかんやあってようやく更新出来る程度には文章が溜まったので久し振りに更新しました。読者の皆さん、待たせてしまってすみません!

とはいえ、質問箱に「最近、伴装者の話題が出てないのですが冷めてしまったのですか?」などといったメッセージを送るようなマネはご遠慮願いたい。
『矢の催促』、私の苦手な言葉です。というか、作家は催促されると急激にやる気を失うので、逆効果になる事を知ってほしい。我々はあくまでも趣味で書いてるので、それを義務にしちゃいけないんですよ。つい忘れがちですけど。

というわけで、Edge worksのお時間です。
3ヶ月と2日ぶりの続きをどうかご堪能あれ。 

 
「まさか敵の狙いは──我々が補給を受けている、この基地の発電施設……ッ!?」

アルカ・ノイズの放つ弾丸が、基地の発電装置を分解し、破壊していく。
警報が鳴り響き、外からの爆音が本部を揺らしていた。

「何が起きてるデスかッ!?」
「アルカ・ノイズにこのドックの発電所が襲われているの!」
「ここだけではありません。都内複数箇所にて同様の被害を確認ッ!各地の電力供給率、大幅に低下していますッ!」

同時に5箇所。モニターに表示された各地の発電施設には、本部が停泊しているドックを襲っているミカを含めた5体のオートスコアラーの姿があった。

「今、本部への電力供給が断たれると、ギアの改修への影響は免れないッ!」
「内蔵電源も、そう長くは持ちませんからね」
「それじゃあ、メディカルルームも……」

翼と緒川が厳しい表情で呟き、未来は不安に声を震わせる。

その時、誰にも気づかれぬよう、こっそりと眼鏡をかける少女がいた。

「ど、どうしたデス調?」
「しー」
「……?あ、どこに行くデス?」
「しー」
「ま、待つデス調ッ!」

潜入美人捜査官メガネ(伊達)をかけた調は、こっそりと発令所を後にすると、何処かへ向かい走っていく。
切歌も他の面々に気づかれないよう、調のものと色違いのメガネをかけ、その後に続いた。

「潜入美人捜査官メガネで飛び出して、いったい何をするつもりデスかッ!?」
「時間稼ぎ」
「なんデスとッ!?」
「今大切なのは、強化型シンフォギアの完成までに必要な時間とエネルギーを確保すること」
「確かにそうデスが、全くの無策じゃ何も──」
「全くの無策じゃないよ、切ちゃん」

そう言って調が立ち止まったのは、メディカルルームへと向かう廊下の前だった。

「メディカルルーム……?こんな所で、ギア改修までの時間稼ぎデスか?」
「このままだとメディカルルームの維持も出来なくなる」

室内に入り、部屋の四方を見回す調。ふと、ベッドの上に視線が留まった。
そこには、ガーゼと包帯だらけで眠り続ける響の姿が。

「……だったらだったで、助けたい人がいると言えばいいデスよ」
「嫌だ」
「どうしてデスか?」
「……恥ずかしい」

頬を赤らめ、調はそっぽを向いた。

「切ちゃん以外に、わたしの恥ずかしいところは見せたくないもの」
「はわああああああ……ッ!調~ッ!」

親友のいじらしさに、思わず飛び付く切歌……だったが──

「そいつは悪い事をしちゃったね」
「んぎゃッ!?あいててて……」

突然の第三者の声に、驚いて振り返る調。
切歌はそのまま床にダイブし、鼻っ面をぶつけて悲鳴を上げた。

振り返った視線の先で、壁にもたれてこちらを見ていたのは……

「その声は……天羽、奏さん……!?」
「なんデスとッ!?」
「よっ、仲良しさん」

ff

S.O.N.G.が出撃できずにいる中、特異災害対策機動部一課の戦闘部隊は基地を守るべく奮戦していた。

「新型ノイズの位相差障壁は、従来ほどではないとの事だッ!解剖器官を避けて、集中斉射ッ!」

アサルトライフルからの銃撃はあまり大きな効果が見られないものの、ロケットランチャーでの攻撃は、アルカ・ノイズ数体の身体の一部を吹き飛ばし、その場で崩壊させていく。

「行けそうですッ!」

隊員の一人が呟いた、その時だった。

背後の壁を這って来た一体のアルカ・ノイズが、丸鋸のような解剖器官で隊員に襲いかかった。

「うわあああッ!?」
「くっ……うわあああッ!」

前方から隊列を組んで迫ってくるものだけでなく、背後から回り込んでくる数体のイモムシ型も警戒しなければならず、一課は苦戦を強いられていた。

これでも以前よりは善戦している方なのである。だが、人為的に統率できるという特性が、以前のノイズと比べて厄介極まりない特性となっていた。



「一課もよく持ちこたえてくれている。だが、このままでは──」

背に腹は変えられない。ここは俺が出向くべきではないか。
弦十郎がそう言い出そうとした時、現場をモニターしていた藤尭が何かに気づいたように叫んだ。

「──あれはッ!?」

ズームアップされる映像。
そこには、戦場に立つ3人の人影があった。

『行くぞ後輩どもッ!』
『はいデスッ!』
『うんッ!』
「調、切歌!?それに……」
「奏ッ!?」
「あいつら、いつの間に!?」

マリアと翼、そしてツェルトが目を剥いた。

直後、戦場に3つの聖詠が響き渡る。

「──Croitzal(クロイツァル) ronzell(ロンツェル) gungnir(ガングニール) zizzl(ズィーズル) ──」

「──Various(ヴァリアス) shul shagana(シュルシャガナ) tron(トロン)──」

「──Zeios《ゼイオス》 igalima(イガリマ) raizen(ライゼン) tron(トロン)──」

橙、薄紅、翠緑。それぞれ3色の閃光が弾け、少女達は鎧を纏う。

今この瞬間、ザババの双刃を纏う2人の装者、そして撃槍・ガングニールを担う古兵が、晴天の元に復活した。

「ギアの改修が終わるまで──」
「この発電所は……」
「守ってみせるデスッ!」

ff

「シュルシャガナとイガリマ、並びにガングニール、交戦を始めましたッ!」
「お前たちッ!何をやっているのか、分かっているのかッ!」

専用のLiNKERが無い今、調と切歌がギアを纏うのは危険を伴う。前回も緊急時であったとはいえ、LiNKER無しでの運用はしないよう厳しく言われたばかりだ。
奏に至っては、リハビリこそ終わっているものの、LiNKER無しでの絶唱で一度命を落とした身だ。弦十郎の声も、心做しかいつも以上に語気が強いように感じる。

『勿論デスともッ!』
『今の内に、強化型シンフォギアの完成をお願いしますッ!』
『こいつらの面倒は、あたしがしっかり見といてやるよッ!』

だが3人は臆すること無く、毅然した態度で返すと再び戦闘を開始する。

『強くッ!なりたいッ!胸にある想い、果たしきれやしないッ!』
『当たらなければぁぁぁッ!』

調はシュルシャガナの機動力を、切歌はイガリマのリーチの長さを活かし、解剖器官への接触を避けながらアルカ・ノイズを掃討していく。

そして奏もまた、ガングニールのアームドギアの突貫力と範囲攻撃を活かして、アルカ・ノイズに立ち向かっていた。

「シュルシャガナとイガリマ、並びにガングニール、装者3人のバイタル安定?ギアからのバックファイアが低く抑えられていますッ!」
「いったいどういう事なんだ?」

友里からの報告に、クリスが困惑する。

「さっきの警報……そういう事でしたか」
「ああ。あいつらメディカルルームからLiNKERを持ち出しやがったッ!」
「まさかmodel-Kを?」

緒川は納得したように呟き、弦十郎が眉間に皺を寄せる。
そして翼には、そのLiNKERに心当たりがあるようだった。

「翼さん、model-Kって何ですか?」
「奏専用に調整されたLiNKERで、今でもメディカルルームに保管されていたものだ」
「って事はそのLiNKER、いわゆる旧型って事よね?」

マリアの言葉に、翼はこくりと頷く。

「ああ。マリア達が使っていたものに比べて、身体への負荷も大きく、危険度も高い……。使用者の生命をすり減らしかねない諸刃の剣だ」
「そんなもんに手を出してまで、あいつら……」

ツェルトはモニターを見上げながら、拳を固く握った。
そして、今は何の力もない、ただの義手となった右腕を見つめる。

(悪魔と相乗りする勇気……か……)

ff

「どりゃあああッ!」

四方八方から迫る解剖器官を巧みに躱しながら、奏はアルカ・ノイズを打ち倒していく。

死角を取られそうになった瞬間もあったが、起動部一課の援護射撃により事なきを得た彼女は、逆に背後を取られそうになっていた隊員の窮地を救った。

「こっちはあたしらに任せて、アンタらはケツと側面から来るやつらに専念しなッ!」
「すまない、助かった!」

アルカ・ノイズの注意は装者の方へと向くようになってはいるが、やはり数体は発電施設を破壊しようとしている。
とても装者1人では抑えきれないだろう。奏は呼吸を整えつつ、周囲を見回した。

ヨーヨー型の新たなアームドギアを駆使し、縦横無尽な立ち回りでアルカ・ノイズを撹乱しながら舞う調。

上空からの〈切・呪りeッTぉ〉でパイプオルガン型アルカ・ノイズを真っ二つに裁断し、遠距離攻撃から封じていく切歌。

2人の戦いぶりを見て、奏は関心していた。

自分よりも、引いては後輩である響やクリスよりも歳下の2人が、ここまで戦えるとは思わなかったのだ。

それも、奏と同じく適合率の低さに悩まされている2人がだ。
だからこそ……。

「あたしも負けていられないね」

不謹慎だとは思いながらも、奏の口元には一瞬、笑みが浮かんでいた。

「やあああッ!」

前方から向かってきた一団へアームドギアを向け、割れる勢いで地面を蹴る。
撃槍の切っ先は弾丸のように、アルカ・ノイズを貫き赤い塵へと変えていく。

更に、頭上より回転しながら迫ってきたイモムシ型をバックステップで回避すると、着地した瞬間を狙い槍を突き出す。

団子のように串刺しにされたイモムシ型アルカ・ノイズも、赤い塵となって崩れ落ちた。

「調!切歌!上に飛べッ!!」

振り向いた調と切歌は、奏の意図を察して跳躍する。

〈STARDUST∞FOTON〉

次の瞬間、奏が投擲した槍が何本にも分裂し、広範囲に渡ってアルカ・ノイズの群れを貫いた。

「これが、奏さんの力……」
「2年間のブランクがあったとは、とても思えないデスよ……」

まるで本能で戦っているかのような奏の戦いぶりに、調と切歌は度肝を抜かれる。

そして……

「装者だけに負担を負わせるなッ!我々も続けッ!」
「各班、後退しつつ援護射撃ッ!彼女達の足でまといにはなるなよッ!」

3人の戦いを見て、そして歌を聴いていた一課の隊員達も、士気を取り戻していった。

だが……



「ニコイチに1人足してもギリギリ?これはお先真っ暗だゾ~」

発電施設の上から戦場を見下ろしていたミカは、嘲るように笑った。

「でも流石に邪魔なんだゾ。そうだゾ、弱っちい奴らから先に退かせばいいんだゾ~」

更なるアルカ・ノイズを召喚しようと、ミカはジェムを取り出そうとする。

次の瞬間、ミカの手がジェムごと凍りついた。

「ッ!?なんだゾ!?」
「見ねぇ顔だと思ったら、起動したばっかのガキンチョじゃねぇか。ったくサンディの野郎、面倒臭ぇ相手を押し付けやがって」

ガラの悪い声に振り返ると、そこには1人の男性……いや、男性型の自動人形(オートスコアラー)が立っていた。

黒いワイシャツの上に氷のような薄水色のベスト。声の印象と裏腹に、着崩されていない紳士服でありながらも第一ボタンは開けられている。

雪のように白い頭髪には、何本か蒼が混ざっている。
ギリシャの石膏像のように整った顔立ちでありながら、目つきは鋭く、三白眼となっている細い瞳がミカを睨みつけていた。

「お前、誰だゾ?ミカ達と同じオートスコアラーなのか?」
「俺はダイン。ダイン・リーベンヘルツ。テメェらのくっだらねぇ復讐劇を終わらせに来たぜ」 
 

 
後書き
奏さんをどう混ぜるかがこのシーンの肝ですね……。あと映像よく見たらあのシーン、機動部一課も撤退せずに戦ってたので描写に入れております。
それと、このシーンになってから映っていないセレナですが、アドルフ博士の所でリハビリ中です。おそらくこの戦いの映像も向こうで見ている事でしょう。
了子さんは言わずもがな、エルフナインちゃんとギアの改修してる所です。時間かかってるのは、原作より直さなきゃいけないギアが増えてるからですね。

さて……ようやくアルカ・ナイツを動かせるぜおっしゃああああああ!!
お待たせしました。次回は遂に彼らのターンです!!気合い入れて取り掛かります。お楽しみに!!

P.S.サブタイの『Thrustar』とは、貫くという意味の『Thrust』に星を意味する『Star』、推進する事を意味する『Thruster』を掛け合わせた言葉です。スペルミスとかではありません。 
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