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少女は 見えない糸だけをたよりに

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5-3

 10月の末、燿さんの24才のお誕生日ということで、ホテルのレストランでお祝いの食事をすることになっていた。私は、ピンクのシルクドレスとローヒールのパンプスを、お父さんが買ってくれていた。これから、必要になってくるからと。だけど、私が育った生活環境とまるで違うし、こういうドレス自体も初めてで、自分でも不釣り合いな感じで恥ずかしかった。

 燿さんは、首回りが開いた真紅のドレスを・・。周りの人の目を惹き付けるような美しさ。やっぱり、気品があるお嬢様なんだ。朝から、あの美容院に行っていたみたい。

「燿 誕生日 おめでとう」と、お父さんが乾杯して、みんなスパークリングワインだったけど、私は白ぶどうのジュースで。

「燿 どうだ 帯屋のほうは」

「はい なんだか みなさん 言葉少なで いつも 叱られているみたいで・・」

「そうか 確かに みんな 話しはしないな だけど、燿に逆に叱られるんじゃぁないかと思っている節もあるぞ お前は キリッとし過ぎているからな まして、ワシから言うのもなんだが 美人だ みんな 一歩 引いている」

「お父様 私 そんなに お高くとまっていませんよ」

「お前からしたらな でも、周りからしたらどうだろう 燿さんが笑ったぞ なんかあるんじゃぁないかとかな 香波 最初 どうだった? 燿のこと」

「えっ えぇ 最初 怖かったかも えーと 話す言葉が スパッとしていて」

「そうだ 燿 お前は頭が良すぎるんか なんでも、スパっと結論も出す 行動も早い だから、周りの人間は怖がるんだよ 冷たくも感じる だけどなぁー ウチの商売はご婦人も多いんだ 息抜きに来店される方も多い だからな わかるだろー 旨く、言えんが それを受け止めることが出来なければ、みんなをまとめられないぞ」

「お父様 私、大学出て まだ 2年目よ そんなこと・・」

「なにを 言っておる あの料理屋にお世話になって何年になる 今は、立派に勤め上げているじゃぁ無いか そのためにワシはあそこで働くのを許したんじゃぞ 燿ならできる」

「はい いろいろ 教えていただきました お父様 今日は私にお説教するためなんですか」

「ちがうわー お祝いじゃ 今のは 祝いの言葉と受け取れ」

「うふっ 私は 立派なお父様で幸せですわ ねぇ 香波」

「又 香波をだしにするのはよせ」と、少し、雲いきが怪しくなってきたので・・

「あっ あー お父さん 私 あの日 お父さんがお言葉掛けてくださって うれしかったんです 落ち込んでいたのを でも、お父さんがおっしゃっていたように バクがいつも側に居るんだと 元気が出るんです 自転車で走っている時もバクが横で走っているし こうやって、食べている時も、バクが一緒においしいって言ってくれているし だから あの時の言葉 忘れません 私には、素敵なお父さんです」

「そうか 香波は 素直で良い子じゃのー いや 燿だって ワシの自慢の娘だぞ」

「お父様 二人の娘に囲まれて お幸せですね」と、お母さんが

「あー でも、聡も ずーとつくしてくれて 今のワシがある 感謝しているおる これからもな」

 私は、だんだんと、この家の娘になっていってるんだ。良いのだろうかと、いつも考えてしまうのだ。1年前は、小麦粉を溶いたものに野菜を入れて焼いたものしか食べていなかった。だけど、豪華なお料理を前にして、生まれて来る家によってこんなに違いがあるのかと。だけど、私には愛する人が居て、私を大切にしてくれている家族が居る。私は、この幸せを思いっきり感じようと思っていた。 
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