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厳しい上司の弱点

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第一章

               厳しい上司の弱点
 大西緋沙子は主任として頑張っている、仕事は出来るが部下にはかなり厳しい上司として知られている。
 それは特に同じ大学の後輩である松岡護堂に対してだった。
 大柄で優しい顔立ちだが気弱で要領の悪い彼に一五〇程の背で長い黒髪を後ろで束ねた地味なスーツ姿の彼女が言っていた。吊り目できりっとした表情でピンクの唇は小さく色白で卵型の頭を持っている。
「またミスがあるわ」
「えっ、何処がですか?」
「こことここよ」
 護堂が作った書類のミスを一つ一つ指し示しながら指摘した。
「漢字や計算がよ」
「間違えてますか」
「この書類急いで作成したでしょ」
「はい、他のことをしていて」
「いつも言ってるでしょ、お仕事はね」
「段取りを考えて」
「そうしてよ、目の前のことだけやるんじゃなくて」
 自分より二十五センチは高い彼を見上げつつ話した。
「もっとね」
「先のことをですね」
「考えてね」 
 そのうえでというのだ。
「やっていくのよ、計画的によ」
「先のことまで考えて」
「だから急いでやるお仕事も出て」
 目先のことにかまけてというのだ。
「そうなるのよ」
「そうなんですね」
「そうよ、兎に角この書類はミスをなおして」
 こう言って突き返す、こうしたことが常で。
 兎角緋沙子は厳しい上司として知られ護堂は特に言われていた、だが仕事は出来ると定評があった。
 その為課の課長や係長からも信頼されていた、それで安定して仕事を任されていた。だがある日のこと。
「えっ、現場からですか」
「うん、建設部門のね」 
 課長が緋沙子に話した。
「そちらどうしても人手が足りなくて」
「私がですか」
「今手が空いているのは君とね」  
 たまたま重要な仕事が終わったばかりだったのだ。
「松岡君だよ」
「彼ですか」
「来週の月曜は二人で現場に行ってね」 
 建設のそこにというのだ。
「作業手伝ってくれるかな」
「朝からですね」
「その日一日はね、いいかな」
「わかりました」
 会社の指示なら頷くしかない、それでだった。
 緋沙子は仕方なく頷いてその日は朝から護堂と共に現場の応援に赴いた、だが作業服を着て現場に出てすぐに。
 現場監督にだ、彼女は驚いて言われた。
「おい君シューズは駄目だ」
「えっ、持って来たんですが」
「安全靴あるからそれ履いてくれ」
「安全靴ですか」
「ここは建設現場なんだぞ」
 だからだとだ、中年男性の現場監督は話した。
「危ないからな」
「安全靴ですか」
「それを履いてヘルメットもだよ」
 これもというのだ。
「被るんだ、それで手伝ってくれ」
「わかりました」 
 緋沙子も頷いてだった。
 安全靴を履いてヘルメットも被って作業に入った、だが。
「おい、大丈夫か?」
「あの娘もうへばったぞ」
「体力なさ過ぎだろ」
「重いもの全然持てなかったし」
「全く体力ないな」
「それに比べてな」 
 建設現場で働いている人達はここでだった。
 護堂を見た、見れば。 
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