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車に轢かれそうになって

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第一章

                車に轢かれそうになって
 篠田恵美子はこの時長男の景樹と次男の門多を車に乗せてだった。
 買いものの帰り道を進んでいた、だが後部座席にいる息子達モアイに似た顔をした彼等は黒髪を奇麗にセットして大きな切れ長のはっきりとした目でホームベース型の顔に紅の大きな唇と形のいい鼻と眉を持つ母に言った、見れば背は一六二程でスタイルはいい。
「お母さんお家の近くになったら車ゆっくり進ませるね」
「大きな道だと速いのにね」
「それどうしてなの?」
「危ないからよ」
 母は運転をしながら答えた、荷物は後部座席の後ろにある。
「人や生きものが沢山通りからね」
「それでなんだ」
「だからゆっくりなんだ」
「そうよ、ゆっくりと進んで」
 そうしてというのだ。
「安全な様にしてるのよ」
「そういえばこの辺り最近野良猫いるね」
「うん、黒と白のね」
「ああ、あの子ね」
 母は息子達の話を聞いて頷いた、彼女もその猫雄で上が黒で足のところも黒い模様がある八割れの小柄な猫を思い出した。
「最近いるわね」
「何かご近所に凄く嫌われていて」
「いなくなれって言われてね」
「小学校の上級生の人達もいじめてるね」
「見付けたらね」
「いじめることはよくないわ」
 母はこのことを否定した。
「誰だってね」
「そうだよね」
「おかあさん言ってるね」
「そうよ、だからあの子もね」 
 その猫もというのだ。
「いじめたらいけないわ、それに野良猫のままだと何時どうなるかわからないから」
「いじめられたりするから」
「だからなんだ」
「早く何とかしないとね」 
 こう言うのだった、だが。
 恵美子はこの時具体的にどうすべきかは考えていなかった、そうして車を家に向かわせていたが不意にだった。 
 車の前に何か出て来た、それでだった。
 車を急に停めた、そして前を見ると。
「あれっ、猫!?」
「あの猫だよ」
「今お話してた」
「あの猫だよ」
「そうね、怪我してるわね」
 見ればそうだった、急に来る車の前に出て来たがだ。
 今息子達と話していたその野良猫は足を怪我していた、見れば車の前で縮こまっていて怯えていてだった。
 足がおかしい、それで車から出て様子を見るとだった。
 左の後ろ足がそうなっていた、それで母は息子達に言った。
「この子病院に連れて行くわ」
「そうするんだ」
「怪我をしてるから」
「すぐにそうするわ」
 こう言って家の帰りだがだった。
 近所の動物病院に連れて行った、そして診てもらうとこう言われた。
「左の後ろ足が折れていますね」
「そうなんですか」
「打たれたか何かぶつけたか」
「じゃあ近所の子供達が」
「この子のことは私も聞いていますが」
 獣医は恵美子に話した。 
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