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花形キクゴローと重力まんじゅう戦線

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お腹からキュウという声が聞こえてきたのだ。

お腹からキュウという声が聞こえてきたのだ。
「あちゃー」と、私が自分のお腹に手を当てる。
「何の音かしら?」「恥ずかしながら空腹に耐えきれず、胃袋が食べ物を要求してるんです。
すみません。
先に食事をしてもいいでしょうか?」
「かまわんぞ。
むしろ、こっちこそすまぬな。
君らの貴重な食料を奪おうとしてるんだから」「いえ、気になさらないでください。
じゃあ私、食事の準備しますね」
私が立ち上がると、すかさずお菊ちゃんが言った。
「台所をお使いなら、お貸ししますよ」
私は頭を下げながら答えた。
「すみません。
お願いできますか?」「どうぞどうぞ。
そこを使って」
私は案内されるままお菊ちゃんについていった。
そして料理の下拵えをした後、台所に鍋を置いてスープをコトコト煮込んでいると、不意に背後からお客さんの呼ぶような声で「キクゴロー、ご飯はまだかいの?」と言ったものだから、「あっ!はい、もうじきお待ちしています!」と答えたが、振り返っても誰もいなかった。
気のせいだろうと思い再び調理に戻ったが、しばらくすると今度はまた別の方角から「おい君。
ちょっと来てくれ」というお客の声が聞こえるもんだから振り向いて見るとやはり誰もいない。
何なんだろこれ。
お菊ちゃんはもうお仕事に行っちゃってるから相談できないし……。
それにさっきのあれは何だったんだろう? やっぱり誰かいるんだろうけど……。
「何で誰もいなくてお客だけが喋るんだ?」と首を傾げていると突然後ろからお菊ちゃんが現れた。
お皿いっぱいに乗ったまんじゅうと温かいお茶を持っている。
「あら? 何かあったの?」「ああいや、別に」私は苦笑いをした。
「そう? まぁいいけど。
はい、出来たお料理持って行って。
お客様は食堂に通しておいたから。
それから、あなたに大事な話があるから後で私の部屋に寄って」と言って出て行った。
私はお皿の載ったトレイを持ち、急いで部屋へと向かった。
私は部屋の扉を開けたが中は暗い。
明かりを付けようとした時、暗闇の奥から小さな手が出てきて、私の腕を掴んで引きずりこんだ。
そしてそのまま抱きすくめられてしまう。
そして耳元でささやく声が聞こえてくる。
「あなた、なかなか良い腕をしているわ。
どう、私たちの仲間にならない?」「え?なんのこと?」「今度来る時は手土産を用意してきなさいな。
私たちみんな待っていますから」と言い残すと闇の中に消えていくのであった。
「あれっ?何だ?」「あの子も妖怪の類なのか?」などと考え、何が何だかわからず呆然としていたが、しばらくしてハッとしたように、慌てて明かりを点けた時には、部屋の中からお客は一人も居なくなっていたのであった……。
完。
…………って何だこりゃー!!
* *
「……って何だよ!一体!意味分かんねーぞ!これ!」私は憤慨していた。
何が妖怪だ!何が仲間になれだ!それにあの手、どう見ても人間じゃないか! しかも何?私のことを知っているみたいだったけど。
そんなの有り得る?
「まさか宇宙人じゃないよね……。
まぁ確かに最近UFOが墜落してくることが多いし」とブツクサ呟いていると廊下を駆け抜ける音がした。
「大変ですお嬢さま!大変な事が起こりました!」ドアをバターン!開けると、そこには汗だくになって息を切らせているメイドがいた。
どうしたというのか。
顔は真っ青だし、全身がガクブル震えまくっている。
おまけに顔面に『ヤヴァイ』という感じの縦線が入っている。
何があったか聞くと、何でも先ほどまで厨房で働いていた女の子が消えたらしい。
どういうことだ? どういうことか聞きたくても本人は姿を消してしまったわけだから確かめようがない。
私は不安になった。
「とにかく警察に相談しよう」と思ったものの「どうしたの? 何が起こってるのかわからないわよ?」と、いきなり少女が現れると私は驚いた。
お菊ちゃんである。
しかし様子がおかしいぞ? 何と彼女のお尻から、長い棒みたいな尻尾が出ているではないか! 私はビックリしたがお菊ちゃんの方はそれどころではないようだ。
顔を強張らせて言う。
「それが……、さっきまでは普通だったんだけど、気が付けばこうなっていたの。
まるで化け物に変身したみたいな」
そう言ってお菊ちゃんは自分の姿を確認すべく窓の前に立つ。
「ああ……ああ……」お菊ちゃんの顔に驚きの表情が浮かぶ。
「お菊さんが……、鬼になってしまった!!」「えぇ!?」
私はお菊ちゃんに近寄るとお腹の部分をぺたぺたとさわる。
すると「きゃああ!」と悲鳴を上げられたので思わずビビッたが、すぐに手を放す。
「……何もないぞ」お菊ちゃんが恐る恐る自分の体を確認してみると、その体は普通の人間のそれと何ら変わらなかった。
ほっとする私に彼女は聞いてくる。
「ところであなた、誰なの?」「お菊さんの友達です」私は胸を張って答えた。
「ああ、あなたね。
あなたはお菊さんがいつもお世話になっている人ね」と納得してくれた。
「ところで、あなたのその格好はコスプレ?」「違いますよ。
これは普段着です。
私はお菊ちゃんの召使なので」「へぇ、そうなの? それにしてもすごいのね。
私、初めて見たわよ。
その服。
そんなのどこで買ってきたの?」「これは自分で作ったんです」「へ? あんたが作ったの? すっごいわねぇ」
「そうでもないですよ。
ところで、その尻尾はどうしました?」「分からないわ。
いつの間にか生えていたのよ。
でも、不思議ね。
お父様の話では、うちの一族にはたまにあるらしいの。
先祖返りって奴ね」
「なるほど。
それは興味深いですね」私はメモ帳を取り出した。
「でも良かったですね。
大した怪我も無くて」
「うん、お陰さまでね。
あ~、お腹減ったわ」
私たちはそんな会話をしながら部屋を出て階段へと向かう。
途中、二階へと上がる途中の階で、踊り場に誰かが立っていた。
何者だろうか。
暗かったのでよく分からなかったが、何となく知っている人のような気もするが……。
私は近づいていくとその人物に声を掛けた。
「あのー、どちらさまですか?」すると向こうも声をかけてくる。
「お前、何をやってるんだ」
ん、このしゃべり方、もしかするとお菊ちゃんのお兄さまかしら。
すると相手は答える。
「俺は大航海時代号だ」
「は?」と私は首を傾げた。
大先生が大黒船をくれた時に言った台詞が蘇る。
「お前が乗っているのが大航海時代号のプラモデルじゃ」……ええと、つまり彼はロボットだということかしら。
「それで? あなたの名前は?」「俺は大航海時代の遺物だ」と彼は言う。
「それではあなたが、大先生の言っておられた大航海時代号とか大先生が呼んでいた物ですか」「そういうことになる」
「じゃあどうしてこんなところにいるの?」私は尋ねた。
「大先生から頼まれて、お前が来るのを待っておったのだ」
「え、どういう事なの?」
「俺の本体がここに来れないからだ」
私はよく理解できなかった。
だがとりあえずお菊ちゃんは「じゃあもう行くけど、あとでお茶飲みに来るからね」と言うと返事も待たずに去って行ってしまった。
残された私と大先輩?とで話を続けることにする。 
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