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花形キクゴローと重力まんじゅう戦線

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「花形キクゴローと重力まんじゅう戦線」

「花形キクゴローと重力まんじゅう戦線」とはどういった筋書きの映画でしょうか?
また、「宇宙を旅する少女たち」という設定はどのような意味でしょうか?
ご存知の方、教えてください。
お願いします。
よろしくお願いいたします。
これにチャンバラスペースオペラの大御所マンダリン大先生が答えた。
「ペーソスだよ。
花形キクゴローは朝寝朝酒朝湯が大好きで寝所を潰したあげく娘を質入れした」
「ひどい親ですね」
「少女たちは置屋を命からがら脱走し駿府の港へ着いた。
そこで言葉巧みにまんじゅう漁船に誘い込まれた」
「泣きっ面に蜂じゃないですか!」
「キクゴローの直系子孫に言われとうないわい」
「それで少女らはお兄さまとお呼びすることになった。
キクゴローは小さな娘ながら、自分たちの家族を信じ、娘の願いを聞き入り、そしてお兄さまは言うに事欠いて泣く。
それまでの事はキクゴローが娘の気持ちを理解しようなどとは、そんなことは一言も言う資格がありませんよって言うと、お兄さまは泣く。
それで思った。
僕は妹に情が湧いたのだと。
そしてお願いを受けることになり、大先生がキクゴローを探しに行くと、お兄さまが娘に言うのだ。
俺は、僕たちはお兄さまが家族だったのだと。
お兄さまは、俺たちは兄妹だったのだと。
もう家族なんだと。
こうしてキクゴローは大先生を迎えることになった。
その後キクゴローは泣き出すことも少なくなっていた」
「お兄さまはその後、キクゴローに妹は僕たちにとっての妹ではないと教えたって」
「それが花形キクゴローという物語の筋書き」
「花形キクゴローが旅するというのは?」
「キクゴローは生まれつき、重力が重くて歩くのが難しいから船に乗せられた。
そこに少女は言ったんだ。
これまで、僕たちは妹の身には重くて大変な物がたくさんあります。
ですから、お兄さま、これから僕たちが、もう少し、お兄さまに甘えていたい、お兄さまは妹のために頑張るのですから。
と。
だから、娘たちが生きるためだけでも手伝いましょうって」
こういうの、映画のシナリオみたいで笑ってしまいますね(私は映画見てません!)。
私は「宇宙戦艦ヤマト」を見ていただけなのですが……。
「君は他人事みたいに言うが、花形キクゴローの子孫である自覚を忘れとるね。
当主としてこの歴史的事件をどう思っておるんじゃ?
君自身がその身を持って体験したことじゃぞ?」
「そうですね……」
私は少し考えてみた。
そして答える。
「まあ、いいんじゃありませんか? 今となっては、歴史にIFはないんですから」
「なんとも気楽な物言いだのう。
わしらの苦労が水の泡になるではないか!」
「それならそうとはっきり言ってくださいよ。
私だって忙しいんですよ? これ以上仕事を増やさないで下さい」
私が抗議すると、マンダリン大先生は呆れたような顔をして黙り込んだ。
「……しかしまあ、君の言う通りかも知れんのう。
過ぎた事をあれこれ言っても始まらない。
これからの事を考えねばなるまい。
では、まずは今後の方針を決めようと思うのだが……。
何か良い案はないかのう?」
「うーん、やっぱり宇宙戦艦の建造しかないでしょうねえ。
宇宙船を建造すれば、どこかの星系にある資源惑星を探すこともできるし、そこから燃料なり何なり補給することもできる。
それに、いざとなったら乗組員も乗せることができるし。
宇宙海賊とかに襲われた時でも役に立つと思いますけど」
「だが、金がかかるだろう。
今の財政状況だと、とてもじゃないが無理だ」
「やっぱりまんじゅう漁船で少女たちに身体で稼いでもらわねばいかんかのう? じゃが、それは寝所を潰した花形キクゴローの踏襲だぞ。
世間が許してもわしが許さんぞ。
どうしたものかなあ……」
大先生が腕組みをして考え込む。
「あの、ちょっといいですか?」
「どうした、赤毛くん?」
「いえ、そもそもどうして、私たちがこんなことをやってるのかなって、ふと思ったものですから」
「どういうことかね?」「だから、私たちは別に銀河連邦政府のエージェントでもなければ、ましてや地球防衛軍の隊員でもないわけですよね。
それなのに、何でここまでやる必要があったのかなあって」
「何を言っとるか! そんなの決まっておろう!」
大先生は壁の掛け軸をバーンと叩いた。
『愛は大宇宙!』と揮毫してある。
花形キクゴローの直筆だ。
「いいか! 我々がここで諦めたら、人類は滅亡してしまうのだぞ!? そんなことが許されてたまるものか! 君たちはもっと本腰を入れて、人類の未来について考えるべきではないのかね?」
「……すみませんでした。
私の認識が間違っていました」
するとどこからともなくきな臭い香りが漂ってきた。
「まぁまぁ。
壮大な法螺話は置いておいて。
タキオン茶をめしあがれ」
看板娘のお菊ちゃんがヒヒ団子を運んできた。
ここの饅頭はどれもこれも旨い。
ヒヒは大先生の大好物である。
「さすがは大先生のお嬢様。
素晴らしい手並みです。
ありがとうございます。
いただきます。
うん、うまい!」
「どういたしまして。
あなたたちには感謝しているもの。
うちの父の無軌道ぶりにも困ったものだけど、その尻拭いをいつもしてくれているのよね。
だからこれはほんの御礼。
あと、これサービスね」
お菊ちゃんはそう言うと、小皿の上に載った一口サイズのまんじゅうを差し出した。
「いいんですか? お店の売り物じゃないんですか?」「いいのよ。
お父さんも喜んでくれると思うから」
「では遠慮なく」
私はそのまんじゅうを口に放り込んだ。
するとお菊ちゃんは微笑みながら言う。
「ところで、お二人はこれからどうするおつもりなのかしら?山賊岬へ参ると伺ってますが、今夜は嵐ですよ」「えっ、そうだったんですか?」
そういえば外が暗かった。
「あら、ご存じなかったんですか。
お気をつけて下さいましね。
海に出るのは初めてなんでしょう? 遭難したりしないといいんですけど」
「大丈夫だよ。
この大黒船がある」
私は一抱えもある模型を取り出した。
木造の帆船に七福神が乗っている。
旅には欠かせないお守りだ。
お菊ちゃんがそれを指差す。
「ああ、これ。
大航海時代号のプラモデルね」
「そうです。
私が作ったものです。
これを枕元に置いて寝るんです。
すると必ず財宝にありつけますよ」
「うそぉ! すごいじゃないですか。
それ売って下さいな。
お金になるから」
お菊ちゃんが身を乗り出してきた。
「もちろん。
でも高くつきますよ」
私はニヤリと笑ったが、彼女は気づかないようだ。
大先生もニコニコしながら言った。
「ああ、お前のお命もな!」
お菊ちゃんがクワッと牙を剥いた。
額に三番目の目が開く。
彼女の種族は怒りのあまり額の目に眼力が集まるらしい。
「そんなの駄目ですよ。
だいたい、大の大人が子供を誘拐するなんて最低ですよ」
「お主も大概失敬な奴だのう。
こんなものくれてやるわ。
売るほどある」
大先生は背負ったマンダリン袋から大黒船を五つも取り出した。
「うひょー。
いい出来ですね。
じゃあ、これ一つ頂きましょう」
私は嬉々として大黒船の一つを手に取ったが、その時だった。 
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