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真剣に

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第一章

                真剣に 
 ロッテオリオンズの監督に金田正一が就任した。この時ある記者が仕事仲間に話した。
「あの人は凄いぞ」
「現役時代の成績に、だよな」
「ああ、お前も知ってるな」
「それ位知ってなくてこの仕事やってやれるか」
 同僚はこう記者に返した。
「流石にな」
「そうだよな」
「ああ、あの人は滅茶苦茶練習してたからな」
「もう走って走って走りまくってな」
 そうしてというのだ。
「体力と足腰鍛えてな」
「あの成績だな」
「村山さんがだぞ」
 村山実のことだ、阪神のエースとして知られた彼である。
「同じ練習して音を上げたらしいぞ」
「あの練習の虫の村山さんがか」
「ああ、長嶋さんに勝とうと必死でな」
「あれだけ練習していた人がか」
「金田さんの練習したらな」
 それでというのだ。
「もうな」
「音を上げたんだな」
「ああ」
 そうだったというのだ。
「あの人でもな」
「そんな練習してたんだな」
「食事も凄かっただろ」
 金田のそれはというのだ。
「食費に金相当かけて」
「自分ですき焼き作ってな」
「薬膳料理も作ってたな」
「あとスープな」
 この食べものの話もした。
「漢方薬も入れた鶏を丸ごと入れたな」
「何か参鶏湯とかいうんだろ」
「その名前か?」
「ああ、金田スープとか言われてるけれどな」
「それも作って食ってるな」
「何か韓国の方の料理らしいが」
「それも食ってか」
 作ってというのだ。
「身体に気を使って」
「一日六千カロリー摂って」
「それで走って走って走りまくって」
「とんでもない練習をして」
「しかも怪我や身体を冷やさない様にして」
「飲み水にまで気を使って」
「それで四百勝だ」
 この未曽有の記録を達成したことがここで話された。
「凄かったな」
「その金田さんがロッテの監督になってか」
「じゃあロッテは相当なことになるな」
「一体どんな練習するか」
「他のことも気になるが」
「どんな練習をしていくんだろうな」
 このことが気になるのだった、そして金田は監督になると選手達に言った。
「いいか、飯はバランスよくたっぷり食え」
「たっぷりですか」
「食うことですか」
「そや、肉も野菜もや」
 そうしたものをというのだ。
「ええもんをな」
「たらふく食え」
「そうしないと駄目ですか」
「それからや、あと煙草は吸うな」
 これは絶対に駄目だというのだ。 
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