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おっちょこちょいのかよちゃん

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207 剣奪還班の分割

 
前書き
《前回》
 戦争主義の世界の本部から異世界の剣を奪還した三河口達剣奪還班はクイーン・ベスの艦隊と再合流する為に海上で敵対するヴィクトリア女帝の艦隊の突破を試みる。剣を安全に運ぶ為、三河口、濃藤、奏子は先行し、残りの者で敵艦隊を殲滅させる。そして後は平和主義の世界の本部へと剣を輸送するのみとなった!! 

 
 和光晴生が本部に到着した頃には時既に遅しだった。そして同じく本部に到着した房子を発見する。
「総長、これは一体!?」
「どうやらやられてしまったようね。折角杯を奪えたというのに・・・」
 そして建物付近へ進む際に西川と奥平がのびているのを確認した。
「順三、純、大丈夫!?これはどういう事なの・・・?」
 しかし、二人は喋る事も出来なかった。
「晴生、レーニンの所へ急ぐわよ!」
「はい!」
 二人は建物内の扉へと急ぐ。
「重信総長!」
 東アジア反日武装戦線の三人組の組織「さそり」が現れた。
「剣は取られたの!?」
「はい、俺達はさっきまで斧を振る高校生のガキとやってたんですが、その隙に剣を取られたようです!」
「そうみたいね。それにこの建物の有様・・・!!」
 房子は半壊した本部の建物をもう一度見る。
「東アジア反日武装戦線の皆で剣を取った人達を追いなさい。杯は取る事に成功したと聞いたから私達赤軍で杖と護符を取りに行くわ。この世界の人のさらに大物と共にね」
「はい!」
「重信房子、和光晴生」
 レーニンがその場に現れた。
「まずいことになってしまったぞ。四つの道具を揃える装置に三河口健とかいう小童(こわっぱ)に剣を偽物に置き換えられた上に貴様らが製造した機械も完全に使用不可能になってしまった!」
「何ですって!?」
 さらにトランシーバーから声が聞こえる。
『こちら山田義昭!三人組の高校生にウチの本部の工房が破壊された!!』
「ええ!?」
 房子にとっては追撃ちをかけるような凶報だった。

 ありはレーニンの攻撃を虞美人の移動術で何とか回避していたが、暫くその疲れで意識を失っていた。
「・・・う」
「お目覚めですか?」
 フローレンスがその場にいた。
「・・・え、ええ。私達は一体?」
「レーニンに妲己といいます人の攻撃を受けかけましたのです。虞美人の能力でその場から離脱しました為に命は助かりましたが・・・」
「『ましたが』って?」
 夫の悠一がその場にいた。
「りえちゃんがいないんだ。もしかしたらと思うんだが」
 ありは見回す。りえの姿だけはない。
(・・・まさか、杯を取られた!?)
「杯を取られたかもしれないって事ね。今皆に連絡するわ」
 ありは通信機を出して領土攻撃班、本部守備班、剣奪還班、そして藤木救出班全てに連絡した。
「こちら領土攻撃班、煮雪あり!異世界の杯を持つ安藤りえちゃんが行方不明!誰か見たって人いたら連絡お願い!!」
 ありはとんでもない失態を犯したと思いつつ返事を待つ。

 かよ子達はありの報告を受けて気づいた。
「りえちゃんの捜索願いだ・・・!!」
「山田かよ子、我々が今目撃した事だ。連絡するのだ!」
 次郎長が促した。
「うん!」
 かよ子は通信機に口を近づけた。
「こちら山田かよ子!私、見たよ、りえちゃんを!」
『本当!?かよちゃんの所にいたの?』
「狐に変身する女の人に連れて行かれてるのを見たんだ!捕まえようたしたけど見失っちゃったんだ!」
『ええ!?方角は?』
「私達が向かう方向と同じだよ!」
『ありがとう!』
(隣のおばさんとこのお姉さん、りえちゃんと一緒に行動してたんだね・・・!!)
「私達もりえちゃんを助けに行かなきゃいけないかな?」
「いや、我々の目的は藤木茂と言う者の救出だ。二つの目的を一気に達成するには無理がある。他の者に依頼した方がよかろう」
「う、うん・・・」

 さり達もありの報告を受けていた。
「やっぱりあり姉と一緒だったんだ!長山君、さっき眼鏡で見せた事をこっちからも私のお姉さんに連絡して!」
「う、うん!」
 長山は通信する。
「こちら長山治!そのりえちゃんが女の人に連れて行かれているのを僕の眼鏡で確認したんだ!」
『了解、ありがとう!』
(その杯の持ち手の子、大丈夫かしら?)

 剣奪還班もその報告を受ける。
「杯の持ち主が行方不明?つまり杯が取られたって事なの?」
「確か杯の持ち主の子はありちゃんや悠一さんと共に行動していたはず。二人は一度東京へ出向いて赤軍や反日武装戦線から杯を守る為に戦った縁もありますからね」
 三河口がゆりに説明した。
「そうなの。あり、悠一君、聞こえるかしら?ゆりよ。今こっちは剣を取り返したところ。私達が今そっちに向かうから待ってて!」
『う、うん』
『待ってます!』
 そしてゆりは政美の方に顔を向ける。
「政美ちゃん、探知能力で私の妹を探して!」
「はい」
 政美は探知能力で目や耳を最大限に駆使した。
「ゆりさんの妹って護符の持ち主の人?」
 マリエルが聞いた。
「いや、別の妹だ。護符の持ち主の姉貴であり、ゆりちゃんの妹でもある」
「そうだったわね」
「いた!」
 政美はやや東を指差した。
「よし、行きましょう!」
 剣奪還班は寄り道する。

「ええ!?待ってられないわあ!!それにりえちゃんが大野君達と会ってるなら今すぐにでも急いでいかなくちゃあ!!」
 冬田は騒いでいた。
「落ち着きなさい、冬田美鈴ちゃん。先程、レーニンや妲己にやられまして自分達が死にかけました目遭いましたのを忘れましたか?それにこれからどうしますか、救援が参りますから考え直します時です!」
 フローレンスが制した。
「それなら私一人でもお!」
 冬田は羽根に一人で乗ろうとする。しかし、羽根が巨大化しなかった。フローレンスが強制的に羽根を無効化したのだった。
「お待ちなさいと言いましたでしょ!」
「ちょっと、冬田さんだっけ?あんた静かにしなさいよ」
 りえの友達の溝口みゆきも胡散臭そうに言った。
「でもお・・・!!大野君達が見たってえ!それならここでじっとしているわけにはいかないわあ!!」
「少し黙らせました方がいいですわね」
 フローレンスが指を冬田の額に突き付けた。冬田はその場で意識を失い、倒れた。そしてフローレンスは本部に連絡を取る。
「イマヌエル、そろそろ昼食どきですわね」
『ああ、各々に配膳するよ』
 皆は昼食の時間とした。
「煮雪ありさん、貴女のお姉様がいらっしゃいますまでお待ち致しましょう。新たな仕事ができまして面倒ではありますが、剣が取り返せました事は朗報でもあります」
「そうね、お姉ちゃんや健ちゃん達、やったのね・・・」

 昼食後、暫くしてゆり達剣奪還班があり達の元にやって来た。
「来たわよ」
「お姉ちゃん!」
「フローレンスもいたのね」
「はい、そうだ、この子も起こしませんと」
 フローレンスは冬田を起こした。
「わ、私は一体・・・」
「寝てたのよ。騒いでたから」
 鈴音が説明した。ゆりはあり達の周囲を確認する。
「これだけの人員でも敵わない程の強敵だったって訳?」
「はい、実は戦争を主義とします世界の長も現れました訳で・・・」
「杉山君と同化したあいつか」
 三河口が確認した。
「現地にお会いなされましたのですね?」
「ああ、剣を取り返した時に一度鉢合わせた。だが、杉山君の姿になったんだ。その後、奴はまた襲いかかろうとして何とか逃げ仰せたのだが、奴は俺の能力(ちから)や剣の能力(ちから)を吸収したような感じだった。前よりも強くなっているかもしれん」
「そうですか、報告ありがとうございます。私は先に本部へ戻らせて頂きます。他に色々と片付けなければなりません事がありますので」
 フローレンスは姿を消した。
「そうだ、かよちゃんや長山くんって子の報告だとりえちゃんはかよちゃんの向かう方向に行ったって聞いたの」
「かよちゃん達の方角へ向かってる?確か剣の持ち主は剣を取られた時に殺されたけど、そのりえちゃんって子は生け捕りなの?なんか引っかかるわね」
(山田さん達の方角・・・!!なら大野君に会えるかもしれない!)
 冬田は少しの期待を膨らませた。
「私達も剣を早く持ち帰りたかったけど全員で班を複数に分ける必要があるわね。あり、悠一君、貴女達は杯と、その持ち主、どっちを取る?」
「杯も大事だけど、りえちゃんも心配です」
 悠一が答えた。
「分かったわ。その女の子や杯の奪い返しに私達を手を貸してあげるわ」
「お姉ちゃん、ありがとう!」
 ありは姉に礼をした。
「濃藤君と北勢田君と奏子ちゃん、三人は妹達について行ってくれる?」
「はい!」
「三人共健ちゃんの学校の友達よ。奏子ちゃん、皆をその羽衣に乗せてあげて」
「はい」
「湘木くんと健ちゃん」
「はい」
「二人は引き続き剣を本部へ届けに行って来て。その子の羽根に乗せて貰ってね」
「え、ええ!?」
 冬田は残念がる声を漏らした。
「何よ?気に食わないの?」
「私・・・、その・・・」
「りえちゃんの救出に行きたいんだろ?大野君に会えるかもしれないと思って」
 三河口に読まれた。
「う・・・」
「そういえば貴女は出かける時もフローレンスにそんな我儘言ってたわね。我慢しなさい。その大野君って子と一緒にいればデート気分で浮かれるでしょ。むしろ邪魔になるだけよ」
「は、はあい・・・」
 冬田は反論できなかった。
「これ以上油売れないわ。二人共、追っ手が来る前に先に行って」
「はい、早くしろ」
 三河口に催促されて冬田は羽根を広げて三河口と湘木を乗せて飛んで行った。
「それじゃ、私達は杯を取り返しにいくわよ」
 剣奪還班は杯の奪還、杯の所有者の救出、剣の本部輸送、それぞれの目的の達成を目指す。 
 

 
後書き
次回は・・・
「氷雪の楽園」
 かよ子達藤木救出班は爆発と大量の矢に襲われる。そしてその襲撃者の正体が解った時、杖の所有者達の戦いが始まる。その一方、とある雪山では一人の少年が多くの女にスケートの姿で魅了させていた・・・!! 
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