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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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本編
  二十一話~失ったもの、得たもの

side ティアナ


六課襲撃の翌日。私は隊舎周りの調査を担当していた。


「ひどいことになってしまったな」
「シグナム副隊長……」


話しかけてきたのは病院の方へ行っていたシグナム副隊長。


「そちらの方はどうでした?」
「隊舎にいたものはランスの治療のおかげで皆2~3日で退院できるそうだ。それより、高町隊長は?」
「いつも通りです。ヴィヴィオのこと聞いた後もいつも通りで………」
「そうか。ここは私が引き継ぐからお前は病院へ向かえ」
「いえ、ですが………」
「行ってやれ。スバルのパートナーはお前だろう?」
「……わかりました。ありがとうございます」


病院に向かう前に報告を。


(なのはさん、ティアナです)
(どうしたの?)
(シグナム副隊長が変わってくださったので病院に行ってきます)
(そう……病院には士郎君が行ってるから現場の状況とかも伝えておいて)
(わかりました。それと、スバルにあのことを話してもいいですか?)
(う~ん、そこはティアナに任せるよ)
(はい。それでは)


念話を切って私は病院へ向かった。



side ランス


「はぁ……」
「珍しいね。ランスがため息なんて」
「……フェイトか」


こいつも無理してるな。うまく隠してるつもりみてえだが俺には通じねえ。


「人の心配より自分の心配しろよ」
「うん……。でもね、ランスが落ち込んでたら私も元気でないよ、だから元気出して」
「……………プッ、くっ、はははははははは!!!」
「何で笑うの!」


全く、こいつ自分が何言ってんのかわかってねえみたいだな。


「今のセリフ、落ち込む恋人を励ましてるみたいだったぜ」
「ふぇ、ふぇ、ええ!?」


やっぱわかってなかったか。


「はうぅぅぅ……」
「ま、ありがとよ。おかげで少しは楽になったぜ」
「う、うん……」
「じゃ、俺は行くわ」


そういって踵を返した。



しかし、ヴィヴィオを助けてやれなかったのは俺だ。嬢ちゃんもアーチャーも俺を攻めはしなかったが……だからこそ俺は未だに自分の不甲斐無さに苛立っていた。
そんな俺にフェイトは自分なりの励ましをしたかったのだろう。
だとすれば俺がくよくよしてるわけにはいかねえな。
そして俺は調査を再開した。



side なのは


調査中、ある物を見つけた。それは……





ヴィヴィオのぬいぐるみだった。私が初めて出会った時に買ってあげて、そっれからずっと持っていたものだ。
ところどころが焦げ、ひどい状態だ。
私は、あの子を助けられなかった。守ってあげると、ママになってあげると約束したのに。


「あ、………」


今の私には涙をこらえることしかできなかった。




side 士郎


病院に来て、シャーリーたちの病室を訪ねると、


「ごめんなさい…私がもっとしっかりしていれば…!」
「謝るな。君たちは悪くない。これは私達前線の責任だ。だから気に病むな」
「でも、私達の所為でヴィヴィオは……!」


アルトが言うが、


「ヴィヴィオを助けられなかったのも全て私たちの責任だ。君たちが謝ることではない」
「でも!私たちは何もできませんでした!」
「そんなことを言うな。起きてしまったことは仕方がない。悔やむより対策を考えるんだ。いいな」


そういって私は病室を出た。


「ヴィヴィオ……すまない……」


連れ去られたヴィヴィオを思いながら、私はその場を去った。



side ティアナ


スバルの病室に入ると、先客がいた。


「ティアさん」
「エリオ、キャロ。あんたたちも来てたのね」
「はい。調査はフェイトさんがやってくれていますから」


改めてスバルを見る。



「ほら、差し入れ。受け取んなさい」
「……ありがと、ティア」


完全に落ち込んでるわね~


「なにしけたツラしてんのよ。もうじきギンガさんも来るわよ。そんな顔で会うわけ?」
「……合わせる顔ないよ…」


話は聞いてるけど……


「士郎さんだって怒ってはいなかったわよ」
「……ほんとに?」


これは嘘だ。私はまだ士郎さんに会っていないのだから。
そんなことを考えていた時、ドアが開いた。


「スバル……」


入ってきたのはギンガさんだった。


「ギン姉……」
「歯を食いしばりなさい」
「え?」


次の瞬間、ギンガさんがスバルの顔を殴った。グーで。


「ちょ、ちょっとギンガさん!?」
「ティアナは黙ってて」


いつもと雰囲気が違う……


「スバル、私が心配だったのはわかるわ。その件に関してはごめんなさい。だけど、味方の事を攻撃するほど冷静さを忘れるなんてダメよ」
「うん……ごめんなさい」


ここは二人だけにしてあげたほうがいいかしらね。


(エリオ、キャロ)
(ティアさん?)
(ちょっと外に出るわよ)


二人も私の意図を察したのか


「スバルさん、温かい飲み物いりませんか?」
「私たちで買ってきますね」
「ギンガさん、私もこの子たちについていくんでスバルお願いします」
「え、ええ。わかったわ」


私たち3人は病室から出て売店に向かった。




side はやて


「お疲れ様です。八神二佐」


地上本部内を歩いていたら、オーリス三佐とすれ違った。聞きたいこともあったのでちょうどいい。


「オーリス三佐。少し、お時間よろしいですか?お伺いしたいことがありますので」
「これから会議がありますので、そのあとに。私からもあなたにお伺いすることがありますのでこちらから連絡いたします」
「そうですか、それでは」


そういって別れる。しかし………
両手の甲を見る。残り一画ずつしかない令呪。ヴィヴィオが攫われたのは私のせいだ。令呪の使い方を間違えてしまったせいで………
それに、もう一つ。私はおかしいことがあることに気が付いていた。
その二つを踏まえ、私はあることを考えた。だが、可能なのだろうか?士郎かランスに聞いてみる必要があるな……



side ヴィータ


「おい、無理すんなよザフィーラ。ひどい怪我だったらしいじゃねえか」


あたしはシャマルとザフィーラの見舞いに来ていた。


「平気だ。ランスの治癒魔術のおかげでこのくらいならば問題はない」
「私は明日には退院するわ。ザフィーラのおかげで怪我も軽かったから」
「あたしも、リインが守ってくれた。リインとユニゾンしてなきゃ死んでたかもしれねえ」
「マリーさんから連絡を受けてるわ。リインちゃんも、明日には目を覚ますって」


リイン………



side ティアナ


私達が部屋に戻ると、スバルの表情が良くなっていた。そこで、私はなのはさんから聞いていた話をして、さらに元気づけてあげることにした。


「ティア、話って何?」
「私たちのこれからのこと。どうやら六課の任務はレリック捜査からスカリエッティ一味の捜索に代わるらしいのよ」
「雪辱戦、ってことね」
「ええ。幸い六課のみんなのけがは軽いですしね」
「そうね。でも、私はかなりの重傷だったはず……ティアナは見てたのよね?私が治されるところ」
「はい。ですが、なのはさんから絶対にそのことは言うなって………」


あの……アヴァロン?の存在は下手なロストロギアよりも強力なものだから話さないようにって言われた。だが……気にならないわけがない。
あんなものを出した士郎さんの事が………
彼は何者なのだ?特に彼の扱う武器。質量兵器にしては不可解な部分が大きく、魔法兵器にしては危険。謎は深まっていくばかりだった。



side はやて


「それで、聞きたいこととは?」


会議を終えたオーリス三佐と合流し、話をしている。


「レジアス中将のお仕事についてです」
「匿秘事項がほとんどですので、お話できることはありません」
「私の話を、聞くだけ、聞いてください。戦闘機人と人造魔導士……どちらも中将が局の戦力として取り入れようとしましたよね」
「昔の事です」


反応は予想通り。だからこそ話を進める。


「中将は今でもその計画を裏で進めてはいませんか?」
「…………」
「スカリエッティならその取引相手としてうってつけです。彼が技術を確立させたところで検挙し、回収した戦闘機人の試験運用をする。そして……」
「くだらない妄想はそこまでにしてください」


やはりここで話を止めに来た。これは繋がっているのは間違いないだろう。


「証拠もないことをべらべらと話したところで時間の無駄です。それよりも先日の事件の際、貴方が会議室から抜けた後に本部で膨大な魔力が観測されています。八神二佐、あなたが関わっているのではありませんか?」


令呪の事か……やっぱり観測はされていたか。だが、こちらも探られぬように準備はしてきてある。


「それに関しては上官に口止めされていますので、私の方からはお答えできません」
「……そうですか。それと、先ほどのお話、続きは調査申請書を持ってきてからにしてください。それからならお話を聞きましょう」
「ええ。近いうちに必ず」


そうして私たちは別れた。私も、この後は用事があるからあんまりのんびりしてられんしな……



side スカリエッティ


私はウーノと共にディードとオットーの持ち帰った衛宮ランスの情報を探っていた。
そして………


「これは!………フフ、素晴らしい、実に!!」
「ドクター?見つけたのですか」
「ああ。見たまえウーノ」
「……これは!?いったいどういうことなのでしょう……」
「これが真実ならばますます彼に興味が持てるね……」


ディードの武装は砕かれたが、この情報に比べれば安いものだ。砕かれた武装がこちらのリカバリーを受け付けないのもこの情報が確かであることを示している。
さあ、もっと私を楽しませておくれ!




side 士郎




私達は現在、スバルとギンガの父親ゲンヤ・ナカジマ三佐から戦闘機人事件についての話を聞いている。


「戦闘機人のベースは人型戦闘機械だ。人の体に機械を埋め込むことで戦闘能力の向上を図る、それが戦闘機人計画だ」
「だが、どうしても拒絶反応などの問題は出てくる。それを解決したのがスカリエッティだ」


クロノ提督の発言に質問を投げかけるシグナム。


「その方法と言うのは?」
「素体の人間の方を機会に適合するように生まれる前に調整する技術。それを生み出したのさ、あの男は」
「次にスバルとギンガの出自についてですが…」


フェイトが切り出すと、


「衛宮士郎、って言ったか、おめえさんは見たんだろう?」
「はい、彼女の腕……確かに機械の腕でした」
「……ギンガとスバルはな、戦闘機人事件を追っていたうちの女房が保護した実験体だったんだ。俺たち夫婦は子供に恵まれてなくてな。そんな時に見つけた二人が自分に似てるって言って女房がな。普通の子供として育てていこう、ってよ」


しばらく沈黙が続いた後、三佐が語りだした。


「女房が亡くなったのはあいつらにそれなりに物心がついた時だった。任務中の事故とか言ってはいたが、俺は女房が見ちゃいけねえものを見ちまったんじゃねえか、って思ってる。俺が引き続き捜査をしてもよかったんだが、女房との約束でな、ギンガとスバルを一人前に育てる、って決めてたから危険が伴うような調査はあまりしていなかった。だがよ、地道には続けていたんだ。いつか告発の機会があるかもしれねえからな。八神はよ、自分とこの事件に戦闘機人が絡むと予測してたから俺んとこに捜査を依頼してきたんだ、あの狸娘はよ!」


手玉に取られたことが悔しいのか三佐はお茶を煽った。
その光景に皆は笑っていた。私とランサーを除き、だが。


(戦闘機人、ねぇ………)
(殺すのか?)
(いいや、俺はマスターに従うさ。殺せと言われりゃ殺すし、捕えろと言われりゃ捕える。サーヴァントが口出す話じゃあねえさ)
(そうだな)


俺はどう動くべきか、傀儡(サーヴァント)として動くのか、それとも………



side はやて



「おまたせや、ロッサ」


本局にてロッサと合流する。


「さすがのはやても元気がないかい?」
「……そやね。今回のヴィヴィオ誘拐は私の失態が招いた事態やから。せやけど失ったものは取り返す。今度は後手には回らんよ」
「それだけ言えるなら大丈夫だね」


そう言って頭を撫でてくるロッサ。また子ども扱いして………


「しかし、本気かい?はやてとクロノ君の頼みだから許可は取ったけど……」
「隊員たちの住居や生活スペースを考えると、本部は必要不可欠。今後の事も考慮すれば移動できた方がええからな」
「それは、そうだけどね……」


ロッサは心配そうだ。なぜなら……


「廃艦前のアースラを使おうなんてさ……」
「アースラは私たちの思い出の船や。最後に一緒に頑張ってもらいたいからな……」
「………そこまで言うなら止めないよ」


お休み前にもう一仕事お願いやで、アースラ。



side ディエチ



「いや、いや……!」
「はぁ~い、お姫様。怖くないですよ~」


回収した聖王の器。そのことレリックを融合させるための最終調整中だ。


「バイタル、魔力値ともに安定。移植準備もOK」
「ふむ。丁度いいタイミングだ」


検査が終わったところでドクターが入ってきた。ウーノ姉さまがレリックのケースに手をかけたところで……


「ママ、パパぁー!いや、うああああぁぁぁぁぁ!!!!」


突然叫びだした。


「あら~わかるのね。今から自分がどうなるのかが。泣いても叫んでもだ~れも助けてなんてくれませんよ~?」
「さあ、始めようか!聖王の器に、王の印を譲り渡す。ヴィヴィオ、君は私の最高傑作になるんだよ!!」
「いやあああああ!!!!!!」




side なのは



「こんなところにいたのか、風邪をひくぞ」
「士郎君……」


一人で海を眺めていると士郎君がやってきた。


「ヴィヴィオの事を考えているのか……」
「うん……」


二人の間に沈黙が流れる。破ったのは士郎君だった。


「すまないな。私は、守ってやれなかった」
「違うよ!!」


思わず叫んだ。士郎君が驚く。


「なのは………?」
「士郎君は、ギンガを助けた、スバルの事も助けた!でも私は……何もできなかった!犯人を捕まえることも、ヴィヴィオとの約束を守ってあげることも!」
「……………」
「あの子は今頃泣いてる!きっと助けてって言ってる!今すぐ助けに行きたい!でも私は……!」


管理局員だから、と続けようとした。しかし、続くことはなかった。なぜなら、士郎君に抱き寄せられたから。


「もういい。我慢するな。一人で抱え込むな。辛くなったら私を頼れ。寂しいなら泣いてもいい。君は一人じゃないんだ。私は君の味方でいるから……」


その温もりに包まれて、私は知った。この胸の高鳴りの正体を。安心感の訳を。
私は……………






士郎君が、好きなんだ……
ようやく気付いた、自分の気持ち。
私はそのまま士郎君の胸の中で子供のように泣いた。その間、士郎君はずーっと頭を撫でてくれていた。
落ち着いた私は言った。


「ヴィヴィオを助けよう。二人で……」
「ああ。きっと……」


彼と一緒なら、きっと助けられる。そう思ったところで、私は意識を手放した。



side 士郎



「…………なのは?」


胸の中の彼女に問いかけるが、


「すぅ、すぅ………」


疲れが出てきたのか、寝てしまっていた。


「さて、どうするか………」


服を掴まれてしまっているので、離すことが出来ない。私は抱え上げて彼女の部屋へと連れて行った。
その際、フェイトが驚いていたが、安眠するなのはを任せ、私は一人で外へ出た。


「我ながら凄いことをしたものだ……」


我慢する彼女はとても弱々しく見えた。あんな風に子供をあやすかの様にしたのは失礼だったな……
明日にでも謝っておくか。



と、相変わらず素晴らしい勘違いをしている士郎だった……… 
 

 
後書き
二十一話完成で~す。


この話はものすごく悩みましたね~。なんせなのはさんが自分の思いを自覚する話ですからね。


次回はもっと大変なことが起きる(予定な)はずですのでご期待ください!


それでは~ 
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