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老け顔でも

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第二章

 四十五歳になってだった。
 サラリーマンの夫の秀幸一七五程の背で最近腹が出て来て髪の毛も白くなっていたがまだ若い頃の整った雰囲気を保っている彼と用事で街を出ている時にだ。
 ふと夫が街の占い師を見て占ってもらおうと言ってだ。
 夫がその人相見の占い師に健康特に肥満に注意と言われてから陽子もなったが。
 彼女の年齢を聞いてだ、占い師は驚いて言った。
「四十五歳ですか!?」
「はい、そうですが」
「いや、お顔や手を見ても」
 老人の占い師は驚きを隠せない顔で言ってきた。
「とても。まだ三十歳にです」
「えっ、十五歳も若くですか」
「見えます、日々充実した生活を送られていて」
 そうしてというのだ。
「努力を重ねてご自身を磨かれているからでしょうか」
「若い頃はいつも老けていると言われていましたけれど」
「ならそれがそのままです」
「維持されてですか」
「今は若くです」 
 その様にというのだ。
「見えるのですね」
「そうですか
「日々の努力と充実もあり」
「そうなのですね」
「そうです、では占わせてもらいます」
 占い師は陽子にここまで言ってだった。
 占いをはじめた、その結果は非常に幸福に満ちたものであった。
 陽子は占いの結果に満足していたが傍にいた夫は言った。
「三十に見えるなんてね」
「四十五歳なのに」
「凄いね」
「昔は老け顔って言われていてね」
 陽子は思わず苦笑いになって街を共に歩く夫に話した。
「高校一年生で大学生とか大学を出てるとか言われたのに」
「それが今ではだね」
「若いって言われるなんてね」
 ついつい微笑んで話した。
「思いもしなかったわ」
「そうだったんだ」
「ええ、若い時はそう言われて今はそう言われるなんて」
 陽子はさらに話した。
「そう思うと老け顔も悪くないかも知れないわね」
「そう言うんだ」
「ええ、駄目かしら」
「そうなったのは毎日の充実と努力もあるってね」
「占い師さん言ってたわね」
「そのことはいいんだ」
「それが普通だと思ってるから」
 陽子自身としてはというのだ。
「だからね」
「そう言える人だから今は若く見えるのだろうね」
「占い師さんが言ったみたいに?」
「うん、人は充実と努力の中で磨かれるんだよ」
「そうしたものなのね」
「そうだろうね」
 夫は笑顔で話した、そうして若々しい妻を見た。その顔は確かに四十五歳にはとても見えなかった。


老け顔でも   完


                  2022・4・18 
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