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お化けアパート

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第一章

                お化けアパート
 サラリーマンの小林健太郎はこの時自分が住んでいるアパートの大家である越後武蔵に苦い顔で言われていた。
「だから新しいマンションを建てたからね」
「そっちに移れっていうんですね」
「そうだよ」
 半分白髪の茶色の髪を肩の高さでウェーブさせて揃えている初老の男性が細面でやや細い吊り目の明るい顔立ちの癖のある短めの黒髪の痩せた長身の青年に言っていた。男性の背は一七〇位で中肉である。彼が大家の越後であり言っているのが小林である、
「もうね」
「いや、ここでいいですよ」
 小林は越後にこう返した。
「俺は」
「築四十年その実六十年のボロアパートがかい?」
「トイレも風呂もありますし」
「どっちもボロボロじゃないか」
「俺使えればいいんで」
 その今にも崩れそうな二階建てで十六程部屋があるアパートの前で話した、隙間風が凄そうな外見である。
「しかも家賃安いですし職場からも近いですし」
「しかしもう住んでいるのは君だけだよ」 
 大家は小林に苦い顔で告げた。
「いい加減建て替えたいんだよ」
「家賃払っていてもですか」
「うん、マンションに移ってくれないかな」
「いやあ、ここが気に入ってまして」
「どうしてもだね」
「はい、いさせて下さい」 
 小林は越後に笑って言った、そしてボロアパートに住み続けていた、アパートは腐りそうな畳と小突いただけで壊れそうな壁にだった。
 全体的にボロボロの造りだった、だがそれでも小林は住み続けていたがある夜仕事から帰ってコンビニ弁当と缶ビールで夕食を摂り何か出そうな風呂場で身体を奇麗にして温まって布団に入ったのだが。
 真夜中にだ、不意に声がした。
「うわ、噂通りだな」
「そうね」
「凄い廃墟だな」
「お化け屋敷みたいね」
「っていうかそのものだろ」
「何が出てもおかしくないわ」
「何か?何が出るんだよ」 
 小林は声を聞いて目を覚ました。
「一体」
「げっ、何かいるぞ」
「お化け本当にいるの?」
「お化け?何処にいるんだよ」
「あんただあんた」
「あたし達の目の前にいるあんたよ」
「俺?俺はサラリーマンだぞ」
 布団から起き上がりながら応えた。 
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