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アザラシが助けてくれて

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第二章

「そいつが出て来てくれてな」
「それでか」
「それで助けてくれてか」
「ここまで連れて来てくれたか」
「泳いでいる俺に寄り添って泳ぎを助けてくれてな」  
 そうしてというのだ。
「それで温めてもくれてな」
「そうしてか」
「ここまで連れてきてくれたのか」
「そうしてくれたのか」
「そうなんだ」
 実際にというのだ。
「これが、あっ」
「どうしたんだ?」
「何があったんだ?」
「あそこにいるぞ」
 トンプソンは海の今自分達が乗っているボートから少し離れた場所を指差した、するとそこにだった。
 一匹のアザラシ、ゼニガタアザラシが顔を出していた。
「あいつが俺を助けてくれたんだ」
「キュウ」
 アザラシは彼を見て一声鳴いた、その彼を指差してトンプソンは話した。
「ミューって名付けたけれどな、雄みたいだな」
「あいつがか」
「あいつがあんたを助けてくれたか」
「そうなんだな」
「そうなんだよ」 
 こう言うのだった。
「有り難いことにな」
「嘘みたいな話だな」
「アザラシが助けてくれるなんて」
「そんなことがあるんだな」
「しかし本当だ、五時間程泳いだけれどな」
 それでもというのだ。
「こうしてだ」
「あんたは助かった」
「そうなんだな」
「この通りな」 
 スタッフ達に笑顔で話した。
「助かったよ」
「そうなんだな」
「あんたはアザラシに助けられたんだな」
「そうなったんだな」
「そうだよ、信じられないがな」 
 そのアザラシ、彼がミューと名付けた彼を見つつ話した。
「これは本当のことなんだよ」
「じゃあアザラシに感謝しないとな」
「絶体絶命のところを助けてくれたからな」
「そうしてくれたからな」
「一生忘れないよ、有り難うな」
「キュウ」
 まだ顔を出しているアザラシは返事をする様に鳴いた、そしてだった。
 海の中に消えていった、トンプソンも他の者達もそんな彼をじっと見送った。そしtてトンプソンは妻と娘、息子の元に戻ってだった。
 アザラシのことを家族に伝え知り合いにもそうしていった、カルフォルニアの海での奇跡の様なわである。


アザラシが助けてくれて   完


                2022・3・26 
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