宝くじを当てても

　　　　　　　　　　　　　　　　宝くじを当てても
　この世の邪悪を具現化したが如き読売ジャイアンツの入団会見を見てだった、武者小路学は孫の悟まだ小学校高学年である彼に話した。
「いい選手が多いがな」
「そうなんだ」
「それでも殆ど出て来ないからな」
「プロ野球って厳しいの？」
「いや、巨人は最近選手を育てないんだよ」　
　祖父は孫に話した、還暦になったばかりで白髪頭に痩せた顔は皺だらけだ。小さな目で唇は薄く一七〇程の背で中肉の体格である。
「それでだ」
「殆どなんだ」
「一人出たらいい」
　六人程いる選手達の中でというのだ。
「もうな」
「こんなにいるのに？」
「ここは選手を育てないで他のチームから掠め取ってばかりだからな」　
　そうして強奪した選手ばかり使うからだというのだ。
「だからな」
「それでなんだ」
「このチームは駄目なんだ」
「巨人はそうなんだ」
「ああ、いい選手を獲得してもな」　
　苦い顔で言うのだった、悟はこの時はその話をただ聞いただけだったが。
　大学生になってだ、小田幸平という巨人のキャッチャーを見て首を傾げさせた。外見は祖父の若い頃そっくりになっているが皺はなく髪の毛は黒い。その彼が大学で友人達に話した。
「あんないい選手何で使わないんだ？」
「だって巨人だぞ」
「あそこフリーエージェントの補強ばかりだろ」
「そんなチームだからな」
「小田も大していいと思ってないんだよ」
「阿部も入ったしな」　
　このこともあってというのだ。
「大事に使わないんだよ」
「元木や清原がいじめてもスルーだよ」
「チームとしてもな」
「こんないい選手宝くじみたいなもんだろ」　
　首を傾げさせたままこうも言った。