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高級レストランの人気メニュー

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第一章

                高級レストランの人気メニュー
 その話を聞いてだった、福澄猛八条グループ系列の高級レストラン『カルメン』でシェフをしている彼は言った。
「あの、うちは」
「この銀座でもっていうんだろ」
「ええ、世界的に有名な三つ星のレストランですよ」
 先輩の藤本浩紀五十代で四角い大きな顔にある口髭と小さな目が目立つがっしりした体格の彼に話した、背は同じく一七七程だが痩せてすらりとした体形と細面そしてきりっとした強い目の光を放つ福澄とは対照的である。
「それがお子様ランチをですか」
「今度メニューに入れるんだ」
「高級フレンチでもですぁ」
「オーナーが言われたんだ」
 藤本はこう福澄に話した。
「だからな」
「オーナーのお言葉は絶対ですね」
「うちのオーナーがどなたかわかってるな」
「グループの総帥のやしゃ孫のお一人です」
 福澄は即座に答えた。
「今は神戸におられるっていう」
「グループの本拠地にな」
「そうした方ですね、お会いしたことはないですが」
「その方のお言葉だからな」
「だからですか」
「これからはな」
「お子様ランチもですか」
「うちのメニューに入るぞ」
 そうなるというのだ。
「いいな」
「わかりました」
 高級それもミシェランから三つ星を毎年貰っている店でそのメニューはいいのかと思いつつもだった。
 店のメニューにお子様ランチが追加された、そして追加されるとだった。
「えっ、今日もか」
「はい、お子様ランチ注文が入りました」
 ウェイトレスが福澄に言ってきた。
「お願いします」
「人気あるな、お子様ランチ」
「そうですよね」
「意外とっていうかな」
 福澄は考える顔になって述べた。
「注文多いな」
「家族連れですと」
「丁度いいんだな」
「小さなお子さんに高級フレンチといいましても」
「違うよな」
「はい、ですが」
 それでもというのだ。
「そこにお子様ランチがあれば」
「丁度いいか」
「日本の方だけでなく」
「外国からのお客さんにもか」
「評判いいですよ」
「そうなんだな」
「実際今注文されたのはフランスからの方なので」
 ウェイトレスはこのことも話した。
「ですから」
「それでか」
「今からお願いします」
「わかったよ」
 作るなら本気だった、それでだ。 
 福澄はお子様ランチを作った、実に見事な手捌きで作ったそれはフランスから来た子供を満足させるには十分過ぎる程だった。
 忽ちのうちにお子様ランチはこの店の人気メニューになりネットでもマスコミでも評判になった、そして。
 来店したある一家を見てだった、店の支配人が言った。
「オーナーが来られたぞ」
「神戸からですか」
「そうだ、お父上とお母上が東京でお仕事があってだ」
 藤本に話した。 
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