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飲むと地が出る

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第二章

 葵が酔い潰れて寝ようとするとだった、彼女の夫の為友が来て彼女をベッドに連れて行った。一八〇近い長身で癖のある黒髪を真ん中で分けている面長の優しい顔立ちの太った中年男だ。その彼が妻の部下達に話した。
「うちの飲むと乱れますね」
「乱れてはないですけれど」
「まあその」
「何て言うか」
「自分の趣味ばかり聞いてないのに話しますね」 
 夫はまさにそのことを話した。
「そうしますね」
「いや、それは」
「ちょっと私達からは」
「何とも」
「ええ、それはわかってますから」
 夫だからだというのだ。
「学生時代から一緒ですから」
「そうなんですか」
「そうだったんですか」
「課長とは」
「高校時代から。高校時代うちのは酷い振られ方をしてそれを周りに言われて心を閉ざして」 
 葵のそのことを話した。
「それで誰とも付き合わなくなって趣味に埋没したんですが」
「それでその趣味のこともですか」
「誰とも付き合わなくなって」
「それで」
「話さなくなって。唯一話していた僕には凄い喋って」
 その趣味の話をというのだ。
「今はお酒が入るとです」
「話す様になったんですか」
「そうだったんですか」
「高校時代のことから」
「そうでした、高校時代とても暗かったんです」
 当時の葵はというのだ。
「今は明るいですがね」
「随分変わったんですね」
「そんな過去があって」
「そこから」
「大学に入ってから明るくなったんです、大学も一緒で」
 夫としてその頃のことも話した。
「その時に高校時代よりも仲良くなって付き合う様になってお互い就職してからです」
「結婚されて」
「そうしてですか」
「今もですか」
「一緒にいます、酔った時のうちのはそうなるってことは大目に見て下さい」 
 こう言ってだった。
 夫は妻の部下達の世話を彼等が帰るまでした、そしてこの時からだった。
 葵の部下達は飲んだ時に喋る彼女の言葉を暖かい笑顔で聞く様になった、自分達の興味のある話ではなかったがそこに彼女の姿の一つを見ているとわかったからだ、普段の明るく面倒見のいい彼女のことも知っているからこそ。


飲むと地が出る   完


                 2022・3・21 
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