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そこは本当に出る

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第二章

 唯は次の日職場で弘田に昨夜家で観た心霊番組であのトンネルのことが出ていたと話した、すると。
 弘田は真顔でだ、唯に話した。
「子供の時一家であそこを通ったんだ」
「車で?」
「父の運転する車で母と僕と妹でね」
 四人でというのだ。
「そうしたらね、出たんだよ」
「そうだったの」
「一家全員見て悲鳴を挙げて」
「それでどうなったの?」
「父がアクセル踏んで全速力で逃げたよ」
「助かったのね」
「けれどその後一家全員車と一緒にお祓いしてもらったよ」 
 唯に暗い顔のまま話した。
「そうしてもらったよ、それでもう二度とね」
「あのトンネルにはなのね」
「行かない様にしているんだ」
「そうなのね」
「うん、両親も妹も健在だけれど」 
 それでもというのだ。
「僕もだよ、二度とね」
「あのトンネルは行かない様にしているのね」
「絶対にね、本当に出るから」
 そのことをこの目で見たからだというのだ。
「僕は行かないんだ」
「そうするのね」
「絶対にね」
「それであの時も遠回りでもだったのね」
「行かなかったんだ」
「そうだったのね、わかったわ」 
 唯は弘田に真顔で頷いて応えた。
「じゃあこれからもあのトンネルはね」
「行かないことにしようね」
「そうしましょう、落ち武者が団体で囲んで来るとか怖いから」
「番組でもあったね、昔はあそこに砦があって」
「皆戦で討ち死にして」
「その怨みが残っているからね」 
 だからだというのだ。
「トンネル掘る時も色々あったみたいだし」
「そうした場所は実際にあるのね」
「そうだよ、そしてそうした場所にはね」
「絶対に近寄らないことね」
「そうした方がいいんだよ」
 弘田は暗い真剣な顔で話した、そして実際にそのトンネル以外にもそうした話のある場所に唯を連れて行くことはなかった。彼女と結婚して家庭を持っても子供達にもそうした。それは彼の両親と妹も同じであった。彼が言う通りに。


そこは本当に出る   完


                  2022・3・21 
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