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第二話 吸血鬼その一

                  第二話  吸血鬼
 八条学園高等部の空手部道場においてだ。一人の少女がだ。
 少し小柄でひょろ長い感じの少年と打ち稽古をしていた。その稽古はだ。
 少女が圧倒的優勢だった。少年は少女の拳や蹴りを受けるばかりだった。その稽古を見てだ。
 他の空手部員達はだ。やれやれといった顔で言うのだった。
「江崎もなあ。黒帯なんだけれどな」
「それでもあれか」
「全く。何時まで経っても弱いよな」
「っていうかあれだろ」
 ここで空手部員の一人が言った。
「宮本が強過ぎるんだよ」
「だよな。あいつの強さはちょっとなあ」
「女の強さじゃないよな」
「ああ、ありゃ化けだぜ」
 そこまで強いというのだ。少女はだ。
 見れば今も少年を圧倒している。そしてだった。
 その圧倒的な強さのままだ。審判役の顧問の先生に言われた。
「それまで!」
「やっぱりな。全然勝てなかったな」
「ああ、宮本の一方的な勝ちだったな」
「江崎も全然勝てなかったな」
「今回もな」
「あの二人ってあれなんだろ?」
 ここで二人の関係について話された。空手部の部員達の間で。
「幼馴染み同士なんだろ?」
「ああ、それで親同士が決めた許婚らしいぜ」
「江崎が道場の跡取り息子でな」
 それでだというのだ。
「宮本は道場主の親父さんの親友の娘さんでな」
「で、親同士の決めた許婚でか」
「幼馴染みでもある」
「そんな関係なんだな」
「じゃあ御互いよく知ってるんだな」
「それでもあれみたいだぜ」
 今度はこんな話になった。
「江崎は子供の頃何かっていうと宮本にいじめられて泣かされてたらしいぜ」
「だろうな。宮本気が強いからなあ」
「それで江崎はあの性格だしな」
「それじゃあそうなるだろ」
「今と変わってないんだな」
 子供の頃の関係が今も続いているというのだ。
 それでだ。彼等はさらに話した。
「あれで許婚かあ」
「こりゃ宮本のかかあ天下だな」
「ああ、絶対にそうなるな」
「その前に江崎道場継げるのかね。一応黒帯にしてもな」
 黒帯といっても色々だ。強い者もいれば弱い者もいる。
 それでだ。彼等も言うのだった。
「あんな弱い黒帯ないだろ」
「この前だってうちの不良連中に絡まれてたしな」
「ああ、あの屑共かよ」
「あいつ等な」
 どの様な素晴らしい林檎ばかりでも中には腐った林檎が一つはある。まさにそれだった。
 それはこの八条学園でも同じでだ。彼等はその不良達の話もした。
「はっきりとした証拠はないけれどな」
「あいつ等色々やってるよな」
「ああ、カツアゲに万引きな」
「いじめだってするしな」
「それに女の子だってな」
 顔を顰めさせてだ。その不良達の話をするのだった。
「校長も全員退学させたいみたいだけれどな」
「証拠がなくて中々みたいだな」
「っていうかあの連中江崎もいじめてるしな」
「弱そうな奴には絶対にたかるからな」
「それも徒党を組んでな」
 そうした連中だとだ。彼等は忌々しげに話していく。 
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