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仮面ライダーAP

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第2話 変身、ライダーマンG

「……」

 ノバシェードの誕生に纏わる、時代の影。その背景を知るが故に、彼らによるテロの被害を知りながらも、遥花は憎しみに身を落とせずにいるのである。

 警視総監の娘という、本来なら優先的に能力無効化の手術を受けられる立場でありながら。現在に至るまでその権利を周囲に譲り続け、シェードによって改造された右腕を今もなお残しているのも。ノバシェードに対する、罪悪感によるものであった。
 彼らの哀しみが止まらない限り、自分もまだ、この「右腕」から逃れるわけにはいかないのだと。故に彼女は「仮面ライダー」に代わり、「右腕」の力でノバシェードの怪人達と戦い続けていたのである。

「……あなた達、本当にそれでいいの? こんなことを続けていたら、身体だけじゃなく……心まで怪人になってしまうのよ!?」
「我々にそれ(・・)を求めたのは、あなた達人類の方でしょう? ……いえ、ご理解頂かなくとも結構。我々は誰になんと言われようと、我々のやり方で充足を得るのみですから」

 遥花の悲痛な訴えにも耳を貸さず、3人の怪人達は同時に触手を繰り出して行く。3人掛かりともなれば、流石に遥花の身体能力でも避け切るのは難しい。
 通常兵器でも倒せてしまうレベルの劣悪な改造人間が、構成員のほとんどを占めている中で。改造中の突然変異により、本場(シェード)の怪人にも引けを取らない戦闘力を得ている彼ら3人は、ノバシェードのトップ3に恥じない力を持っているのだから。

「あうぅッ!」
「オラオラどうだァッ! 俺達3人の改造手術には、シェードの怪人から得た生体データも使われてっからなァ! お前が今まで仕留めてきた劣化レプリカ共とは、一味も二味も違うんだぜェッ!?」

 咄嗟に改造された右腕を盾に防御するが、それだけで防ぎ切れるものではなかった。敢えてじわじわといたぶるように飛ぶ触手の連撃は、遥花の柔肌に生傷を与えていく。
 その攻撃は彼女の服さえ剥ぎ取って行き、やがて遥花はあられもない下着姿にされてしまった。艶やかな黒のレースが、彼女の白い柔肌をさらに引き立てている。

「そんな状態では戦いにもならないでしょうし、これでおしまいですね。今、とどめを刺してあげましょう」
「……バカ言わないで。私の戦いはまだ、始まってすらいないわ!」

 だが、それしきのことでいちいち恥じらっている彼女ではない。ゴールドフィロキセラから放たれた触手の一突きをかわし、遥花は胸を揺らして後方にバック転する。
 その先に停められていたGチェイサーのシートを開き、「仮面ライダーG」の仮面に酷似したマスクを取り出した瞬間。彼女の「戦い」は、第2ラウンドへと突入するのだ。

「やぁあぁッ!」

 力強い叫び共にマスクを装着した瞬間、遥花の「変身」が始まる。

 マスクを中心に閃く紅い光が、彼女の肢体を包み込み。全身に隙間なく密着した、黒の外骨格が形成されていく。
 豊満な胸により内側から押し上げられている「G」の形を描いたプロテクターや、複眼を囲う同じ形状の意匠は、仮面ライダーGに酷似していた。

 3年前よりもさらに発育した双丘を含む、圧倒的なボディラインを露わにしているスーツ。頭部を含む体の大部分を、その外骨格や仮面で覆い隠している一方で、ただ一つ露出している口元。
 黒のスーツとは対照的な、口元から窺える雪のように白い肌と桜色の唇は、より「人間」らしい美貌を強調している。この姿こそが、番場遥花という改造人間に与えられた、真の力そのものなのだ。

「さぁ、本番はここからよッ!」

 ――番場遥花はこのマスクを付けることによって「ライダーマンG」となり、手術した腕が電動しアタッチメントを操ることができるのである。
 
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