| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ウルトラマンカイナ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

特別編 ウルトラカイナファイト part8

 ――かくして。

 ウルトラアキレス。
 ウルトラマンザイン。
 ウルトラマンエナジー。
 ウルトラマンアーク。
 そして、ウルトラマンジェム。

 カイナの窮地に立ち上がった5人の後輩ウルトラマン達は、こうしてこの場に合流して来たのである。
 満身創痍のカイナを庇うように立ち並ぶ彼らは、それぞれの胸中に負けられない理由を秘めているのだ。多くを語らずとも、闘志に満ちた彼らの背中が、それを雄弁に物語っている。

『お前達……今のサインがどういうものなのか、分からないわけじゃないだろう……!? 「イカロスの太陽」のことを知った上でのことなのか!?』
『当然でしょう、カイナ兄さん。この中に、身内(・・)がいることをお忘れですかな?』
『ザイン……!』

 カイナの問い掛けに応じるザインは、BURKの専任分析官としての観点から、今回の参戦を「当然」と言い切って見せた。他のウルトラマン達も顔を見合わせ、深く頷いている。

『あれがどういうものであろうと、使ったのが弘原海隊長ならば……信じるしかないでしょう? 俺達は皆、彼の支えがあったから1年間も戦って来られたのです』
『ザイン兄さんとアキレス兄さんの仰る通りです。あの信号の真偽など、俺達には関係ありません。現に奴らの攻撃で、あなたが窮地に陥っている。これ以外に駆けつける理由が必要ですか?』
『アキレス、エナジー……』

 疲弊のあまり、片膝を着いていたカイナに肩を貸しながら。アキレスとエナジーも、ザインと同様の姿勢を見せている。

『そうですよ、水臭いこと言わないでください! 俺達だって、伊達に今日まで地球を守ってきたわけじゃあないんです!』
『エナジー兄さんやジェムの言う通りですよ。……俺達の出動に理由が必要なのでしたら、それはあのサインだけで十分なんです』
『ジェム、アーク……ふふっ、確かにそうかもな。済まない、愚問だったよ』

 この中では特に若手である、ジェムとアークも反応は同じであった。怪獣や異星人の脅威とあらば、どこにいようと必ず駆け付ける。それが、ウルトラ戦士の基本原則なのだから。

『……ふん、若造5人が集まったところで何が出来る。ならばその手並み、篤と拝見させて貰うとしようか……「各々の舞台」でな』
『なに……!?』

 一方、そんな彼らの様子を冷酷な眼差しで見つめていたテンペラー星人は。片腕を勢いよく振り上げ、「絶世哮」に続く新たな技を繰り出していた。
 彼が従えている5体の怪獣が、突如この場から姿を消してしまったのである。その「気配」は一瞬にして、この場から遠く離れた地点へと「散開」していた。

『姿が消えた!? ……でも、気配は感じる!』
『まさか、テレポートか!』
『左様……奴らの転移先にいる人間共を見捨てて、全員で我と戦うか。カイナを置いて、分散するか。好きな方を選ぶが良い』

 テンペラー星人は自らが従える怪獣達を、遠く離れた別々の場所へと瞬間移動させてしまったのである。今頃は転移して来た怪獣達に、現地の人々が襲われている可能性が高い。

『テンペラー、貴様ッ……!』
『ふん、何を迷っている。貴様らにそのような余裕があるのか?』
『くッ……!』

 その暴虐を阻止するには、変身したばかりでエネルギーが充実しているアキレス達が各所に飛び、怪獣達を制圧して行くしかない。だが、それはすでに消耗しきっているカイナを、この場に残して行くことを意味している。
 今の彼1人で、テンペラー軍団最強の首魁を相手に持ち堪えられるかどうかは、「賭け」であった。

『……怪獣達が転移した先には、抵抗する術もない人達がいるんだ。皆、行ってくれ! 奴はオレが、なんとか食い止めて見せるッ!』
『だけどカイナ兄さん、その状態のあなたを1人にしておくわけには……!』
『いや……ここはカイナ兄さんを信じよう。俺達は直ちに各地に飛び、怪獣達の対処に当たるべきだ』
『アキレス兄さん、しかし!』

 カイナを置き去りにする判断に、乗り切れないアーク。その肩に手を置くアキレスは、周囲を見渡しながら今後の方針を定めようとしていた。
 今こうしている間にも「抵抗する術」がない人々は、突然転移して来た怪獣に、為す術もなく蹂躙されているのかも知れないのだと。

『アーク、お前ほどの男が何を狼狽えている。俺達が奴らを全員秒殺して、この場に戻って来れば済む話だ』
『それとも、その自信がないのか? 何なら、俺が「2体分」引き受けてやっても良いんだぞ』
『まさか……! じゃあやってやりますよ、やれば良いんでしょう!?』
『俺達だって、伊達に1年間も戦って来たわけじゃあないんです! やって見せらァッ!』

 アキレスと同じ見解を示すザインとエナジー。そんな先輩達の言葉に焚き付けられ、躊躇していたアークとジェムもようやく覚悟を決めるのだった。

『よぉし、2人共その意気だ。……カイナ兄さん、よろしいですね?』
『あぁ……済まない、アキレス。皆のこと、よろしく頼む』
『任せてください。……行くぞお前達ッ! ダァアッ!』

 後輩達の意見が纏まったことを確認したアキレスは、カイナと頷き合い――大空へと手を広げて飛び上がって行く。彼に続き後輩達も、矢継ぎ早に地を蹴って四方に飛び去って行くのだった。

『……了解。ジュアァッ!』
『デアァーッ!』
『テェーイッ!』
『タアァーッ!』

 散り散りに暴れ回っている怪獣達を仕留め、牙無き人々を守り抜くために。

『頼んだぞ……皆ッ! 生きて帰って来てくれッ!』
『……案ずる必要はないぞ、ウルトラマンカイナ。誰1人として、帰ってくることなどあり得んのだからなッ!』

 音速を超えて飛び出していく後輩達。その勇姿を見送った後、カイナは拳を構えて再びテンペラー星人と相対する。
 一方、両手の鋏を振り翳して妖しげに嗤う首魁は。自らが統べる軍団の勝利を確信し――再び、凶悪な破壊光線を放つのだった。

『貴様ら全員、我が軍団の前に滅びるが良いッ!』
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧