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ウルトラマンカイナ

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特別編 ウルトラカイナファイト partEXTRA

 
前書き
 今回はちょっとしたおまけエピソードをお届け致しますぞ! 特別編最終話の裏側的なお話になりますー(*´ω`*)
 

 
『いやはや、聞きしに勝る美しさだな。君のような美女が、数多の侵略者達を退けて来たBURKの新隊長だとは……にわかに信じられんよ』
『……恐縮であります』

 ウルトラマンカイナをはじめとする6人の新世代ウルトラマン。彼らとBURKの長きに渡る戦いの日々が終わりを告げ、3ヶ月が過ぎた頃。
 弘原海に代わりBURKの隊長に就任した駒門琴乃は、新設されたブリーフィングルームで独り背筋を正していた。眼前の巨大モニターに映された「超大物」は、彼女の毅然とした佇まいとその美貌に感嘆している。

『さて……我々も可能な限りで協力はさせて貰ったが、やはり君達BURK日本支部の活躍がなければ、此度の勝利はあり得なかっただろう。改めて、世界を救ってくれたことに礼を言わせて頂きたい。ありがとう、ミス・コマカド。ミスター・ワダツミにも、よろしく伝えて欲しい』
「……恐縮であります、大統領。しかし、これもあなた方をはじめとする各国支部の支援と……ウルトラマン達の尽力があってこその結果です。我々は、この星を守り抜いた『力』のほんの一部に過ぎません」

 挨拶代わりの口説き文句をにべもなく流されてしまった、その超大物――もといアメリカ合衆国大統領は、苦笑を浮かべながらも彼女達の功績を率直に称賛していた。
 だが、大統領直々の言葉を受けてもなお、琴乃は眉一つ動かすことなく整然とした佇まいで彼と向き合っている。「鉄の女」とは、まさしく今の彼女のためにあるような言葉なのだろう。

『物質的にはそうかも知れん。だが、そのウルトラマン達と我々を精神的に動かしたのは、紛れもなく君達だ。……あの青年達も(・・・・・・)、君達の支えがあったからこそ、この6年間を戦い抜けたのだと私は見ている』
「やはり……気付いていらしたのですね」
『我が国のBURKは、衛星上から全ての戦いを観測していたからな。ミガキ・アライシ、カナメ・ホズミ、タケル・ハドウ、ユウスケ・シイナ、ランマ・アカツキ……そしてユズル・カザマツリ。6年間にも渡る彼らの献身は、まさしくヒーローと呼ぶに相応しい行いだったと言えよう。もし彼ら6人が我が合衆国の国民だったなら、勲章を用意していたところだ』
「……そこまでご存知ならば、彼らがその類を欲する性格ではないことも把握されているのでは?」
『無論、知っているとも。……一個人に託すにはあまりにも強大過ぎる力。それを一身に背負っていた彼らが、どのような思いで戦って来たのか。その重責に伴う苦悩と、葛藤もな』

 琴乃自身が薄々察していた通り、アメリカを含む諸外国はすでに、6人のウルトラマン達が依代としていた地球人達の情報を得ていた。
 まるで彼らの全てを見て来たかのように語る大統領の口振りに、琴乃は違和感を覚え眉を顰めている。いくら大国アメリカのトップといえど、多くの悲しみを背負い戦って来た青年達の思いまで分かると言うのか、と。

「ウルトラマンとの接触者である彼らの存在を認知していながら、あなた方はその身柄を強引に確保しようとはされなかった。……何故です?」
『子供でも分かる単純な話だ。彼らがウルトラマンの依代として選ばれた理由は、未だ科学的に解明されていないブラックボックスなのだろう? であれば、取り返しのつかない結果に繋がり得る選択は避けねばならん。「イカロスの太陽」の運用計画が凍結されたようにな』
「諸悪の根源であるテンペラー軍団が全滅した今、その懸念は無くなっているはずです。現に各国支部から派遣されているBURKのリーダー格は、いずれも各支部の広報活動を経験している良家出身の『美少女』ばかり。……これには、あなた方なりの『思惑』があるのでは?」
『他国の真意までは測りかねるが、少なくとも我が国としては「希望的観測」に過ぎんよ。あくまで本人達の幸せを願うだけの、可愛らしい恋のキューピッドだと思ってくれ』
「……」

 テンペラー軍団を打倒した後も、日本国内に駐留している各国のBURK。その部隊や艦隊等を率いているリーダー達はいずれも、見目麗しい美女や美少女ばかり。
 各国が弓弦達の正体を把握しているのであれば、体良く自国に身柄を取り込むためのハニートラップ要員だという可能性も出て来る。それ故に自分が相手だろうと臆することなく、毅然とした態度で追及して来る琴乃の凛々しい貌に、大統領は不敵な微笑を浮かべていた。

『……人の口に戸は立てられないものだよ、ミス・コマカド。彼らにも(・・)いつか必ず、その正体を暴かれる時が来る。真実を知る我々には、その日のために「後ろ盾」を用意しておく使命があるのだよ。限りなく「超人」に近しい存在だった彼らを、無思慮な悪意から守るためにもな』
「仰ることは……分かります。ですが大統領、なぜあなたはそれほどまでに彼らを……?」

 全てを見通していながら交渉材料にしようともせず、あくまで友好的な姿勢を示し続ける大統領。その真意が読めず、訝しげに目を細めている琴乃の言葉に、彼は神妙な表情を浮かべていた。

『なぜ……か。ミス・コマカド。君は、ヒーローになるための条件は何だと思う?』
「は……?」
『私は今でも(・・・)、それは「愛」だと思っている。理屈を超えた、無償の愛。私は、それを届けられるようなヒーローでいたい』

 やがて呟かれたのは、「愛」などという突飛な言葉。やるかやられるか、という激動の6年間を過ごして来た者達にとって、それほど信じられないものはない。
 その「愛」のために戦って来たウルトラマン達の背中を知る琴乃ですらも、大統領の言葉がどこまで本心なのかまでは推し量れず、ただ困惑するばかりであった。

『君も私と同じ気持ちであることを祈っているよ……ミス・コマカド。それでは、今日はこれで失礼する』

 それでも構わない。と言わんばかりに、大統領は微笑を浮かべて一方的に通信を切ってしまう。話し相手がいなくなり、静寂に包まれたブリーフィングルームに独り取り残された琴乃は、暫し天を仰ぐと。

「……言葉通りの意味であると、信じたいものですね。マスターソン大統領」

 せめて今からでも、彼の言葉が真実になるような世界に近付いて欲しいと、静かに祈るのだった。

 ――彼女はまだ、知らなかったのである。

 アメリカ合衆国大統領、スコット・マスターソン。かつては彼も、「ウルトラマンスコット」と呼ばれる光の巨人だったのだと。
 
 

 
後書き
 今回は1987年のアニメ「ウルトラマンUSA」から、ウルトラマンスコットことスコット・マスターソンにご登場して頂きましたー(о´∀`о)
 過去作品の主役ヒーローだった人をめっちゃ偉い人として出す、という小ネタは拙作「仮面ライダーAP」でもやってたことなのですが、やっぱりそういうシチュエーションに燃えちゃうタチなので、今回もやらずにはいられませんですた(*´ω`*)


Ps
 劇場版仮面ライダーアギトの警視総監のシーンとかすごい好きでしたし……(*´꒳`*) 
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