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飲み合い

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第一章

                飲み合い
 セルビアの王子であるマルコは愛馬であるシャラッツに乗り百ポンドもの重さの棒を持ってトルコと常に戦っていた。
 見事な長身で逞しくすらりとした身体であり浅黒い肌を持ち細面の顔は彫があり黒髪と黒い目には精悍さがある。
 敵とは徹底的に戦い正当なセルビアの後継者であるオウロッシュを支えセルビアの者達にはこの餓えなく優しい人物である、だが。
 非常に酒が好きで常に飲んでいた、それでだった。
「マルコ王子はまたか」
「うむ、またワインを飲まれてな」
「そうしてか」
「今は酔い潰れておられる」
「そうか、素晴らしい方だが」
 それでもとだ、宮廷の者達は嘆息した。
「困ったところはな」
「うむ、お酒がお好きでな」
「毎晩浴びる様に飲まれ」
「そして酔い潰れられる」
「飲み過ぎだ」
「全くだ、無類の酒好きなのがな」
「そのことが困りものだ」
 その酒好きであることがというのだ。
「困ったものだ」
「どうしたものか」
「せめて程々にして欲しい」
「そうだな」
 こう話していた、兎角彼は酒好きで常に飲んでいて夜は常に酔い潰れて寝ていた。それで周りも彼を諫めたが。
 マルコはそれだけはという顔で言うばかりだった。
「私にとって酒はセルビアと同じだ」
「愛すべきものですか」
「第一にですか」
「そうだ、酒がなくてはだ」
 こう言うのだった。
「私は生きていけない、毎晩潰れるまで飲んでこそな」
「生きられますか」
「そうなのですか」
「だからですか」
「これからもですか」
「他のことは慎めるが」
 それでもというのだ。
「それだけは駄目だ」
「そうですか」
「ではですね」
「これからもですね」
「酒だけは飲ませてくれ」
 こう言ってだった。
 彼は毎晩酔い潰れるまで飲んだ、それは彼が仕えて絶対の忠誠を誓っているオウロッシュが言っても同じだった。すらりとした気品のある青年であり豊かな金髪と澄んだ緑の目に白い肌の身体が印象的である。
 その彼もマルコに言ったが。
「それだけはです」
「無理か」
「はい、酒はです」
「どうしてもか」
「止められません」
「そうか、だが深酒は毒だ」
 オウロッシュはマルコにこのことから話した。
「だからな」
「それもわかっていますが」
「止められないか」
「そうは」
 こう言ってだった、忠義を尽くしている彼に言われてもだった。
 マルコは酒を止めなかった、これにはオウロッシュも他の者達も困っていた。だがそんな時にであった。
 セルビアのある村にいる初老の男、黒い口髭のサイタが王宮にこう言ってきた。
「マルコ様のお酒のことでお困りですか」
「毎晩深酒が過ぎてな」
 オウロッシュはサイタにどうにもという顔で答えた。 
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