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それ以上

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第二章

「全くな」
「左様ですね」
「庭といい」
「この様な庭ははじめてです」
「嘘の様な庭です」
「この地をよく活かしている」 
 城があるそこのというのだ。
「平らだな、ここは」
「はい、寒くです」
「そして湿度が高いです」
「その為ミラノ等の庭とは違いますね」
「ナポリのものとも」
「線を縦横に配してだ」 
 平らなそれをというのだ。
「開かれた軸線で造られているな」
「左様ですね」
「その為見えるものが長く大きいです」
「それも実に」
「そうなっています」
「草木を奇麗に刈り込んでだ」 
 王はそちらのことも見た。
「運河や噴水まである」
「草木だけでなく」
「水もありますね」
「それを庭の景色の一つとし」
「また庭を支えさせていますね」
「擁壁に階段、カスケードまでもうけ」
 そしてというのだ。
「高低もあるな」
「人の手のそれが」
「それも見事ですね」
「造園家のアンドレ=ル=ノートルのものだとか」
「これは」
「見事なものだ、これだけの庭は余もはじめて見た」
 王はにこりともせず述べた。
「実にな」
「陛下もですか」
「これだけの庭ははじめてですか」
「はじめてご覧になられましたか」
「そうだった」
 実にというのだ。
「見事なものだ、しかしだ」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「庭だけではない」
 王は断言した。
「間違いなくな」
「では城ですか」
「城の中ですか」
「城の中こそがですか」
「そここそがなのですね」
「あの男が本当に見せたいものだ」 
 フーケ、彼がというのだ。
「これからだ、だからな」
「それではですね」
「これよりその城に入り」
「そうしてですか」
「城の中を見ますか」
「そうする、そして宴もな」
 こちらもというのだ。
「見るぞ」
「わかりました」
「それではです」
「これよりですね」
「城の中に入りますね」
「そうする」
 こう答えてだった。 
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