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要石

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第一章

                要石
 鹿島神宮は日本でも非常に古い神社である、この社の奥には小さな社がありそこには小さな石が祀られている。
 この石の真ん中には少しばかりくぼみがある、だが。
 この木は非常に大きな石であると言われている、それで神宮を領内に持っている水戸藩の藩主徳川光圀はその話を聞いて言った。
「その石はそんなに大きいのか」
「はい、その様です」
「一体どれだけ大きいかわからぬとか」
 側近達は光圀に述べた。
「果たしてどれだけ大きいか」
「わからぬとか」
「全く以てです」
「途方もないそうです」
「そうか、ではな」
 それならとだ、光圀はその話を聞いて言った。
「掘ってみよう」
「そうしますか」
「その様にされますか」
「ここは」
「一度」
「どれだけ大きいか確かめてみるとしよう」
 光圀は持ち前の好奇心それが学究の志の高さにもなっているそれを発揮して述べた。
「それではな」
「そうされますか」
「ではこれよりですか」
「神宮に人をやり」
「そうしてですか」
「うむ、大きさを確かめよう」 
 こう言ってだった。
 光圀は自ら大勢の者達を率いて神宮に赴いた、そのうえで神宮の宮司に対して自分の考えを述べた。
「その様に考えておる」
「それはまた物凄いことをお考えですな」
 老宮司は光圀の言葉に仰天して応えた。
「あの石の大きさを確かめますか」
「実際にその周りを掘ってな」
「そうしてですか」
「うむ、大きさを確かめる」
 宮司に自分の考えをあらためて話した。
「そうする」
「ですか、あの医師は兄でも地の真ん中にまで通じていて」
「そうしてか」
「地揺れを起こす鯰の頭を押さえておるとか」
「それで揺れを封じておるか」
「本朝は何かと地揺れが多いですが」
 それでもというのだ。
「それを起こす鯰を押さえているとか」
「そうなのか」
「ですから掘り続けていけば」
「その鯰を見るやも知れませぬな」
「ではその鯰を成敗すれば地揺れも起こらぬな」
 光圀は宮司の言葉を聞いて述べた。 
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