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おっちょこちょいのかよちゃん

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195 飛ばされた場所で

 
前書き
《前回》
 赤軍の和光晴生が召喚したというゴジラを撃破したかよ子達だったが、その場に戦争主義の世界の長・レーニンの声が聞こえ、倒したはずのゴジラが復活し、その攻撃でかよ子達は遠くへ飛ばされてしまった。そして赤軍の和光晴生はとある少年の嫁に相応しい相手が自分達や戦争主義の世界の人間との利害が一致している事に都合よく思う。そして領土攻撃班の領土奪還にさり達本部守備班が援護に向かい、一部を平和主義の世界として取り戻す事に成功したのだった!! 

 
 本部の管制室。かよ子の母達は本部守備班からの連絡を受けていた。
『こちら本部守備班の羽柴さり。領土攻撃班の援護をして東側の街の奪還に成功したわ。暫くテレーズ達とそこで待機する』
「了解しました。敵が侵入してきましたら迎撃お願い致します」
『了解』
「さりは順調なんね」
 まき子は娘が無事で心が落ち着いた。
「しかし、山田かよ子ちゃん達ですが、今、高速で目的地から遠ざかっていますのですが、何がありましたのでしょうか?」
「私が聞いてみるよ」
 イマヌエルが通信する。
「こちらイマヌエル。藤木茂救出班。何が起きた?」
 しかし、応答がない。
「何か危険な状態に遭いましたのかもしれませんわね。地図の様子ですと赤軍や敵の人間と交戦した様子や何も気配が感じられませんでしたから。暫く待ってみましょう」
「そうだね」
「かよ子、無事かしら・・・!?」
 まき子は娘が心配になった。
「きっと大丈夫だよ。まだ点が消えてないという事は命に別状はないという事だよ」
「そうよね・・・」

 かよ子は気が付くとまた知らぬ場所にいた。そこは谷の中だった。
「かよちゃん、気がついたんだねえ〜」
「まるちゃん・・・。そうだ、私達って・・・」
 かよ子は先程まで自分達がどうなったか思い出していた。
「そうか、私達はあのゴジラと戦ってそしたらレーニンが出てきて、またそのゴジラが出来てきて・・・」
 かよ子は頭がこんがらがった。
「左様、あのゴジラという怪獣によってここ迄飛ばされたのだ」
 石松が捕捉した。
「そうだった・・・」
「ここは、本部に連絡した方がいいな」
 椎名が通信機を取り出す。
「こちら藤木救出班、椎名歌巌。レーニンという男の攻撃で目的地より遠くの方へ飛ばされた。谷底にいる」
『ああ、連絡がつながったか。こちら本部のイマヌエル。レーニンの攻撃と言っていたが!?』
「ああ、ゴジラのような怪獣が現れてそいつを倒したらレーニンの声が聞こえて来た。奴のセリフからするとその怪獣とやらが赤軍の和光晴生とかいう者が作り出したものらしい。レーニンは倒した怪獣を再び呼び起こしてその怪獣の攻撃によって目的地から遠ざけられたという事だ」
『了解。今皆がいる谷は様々な山脈が存在する「混沌の山脈」の中だ。緑がない大きい山が東の方角に当たる。もう夕方になっているし、あまり無理をしないほうがいいだろうから、ひとまずそこで休憩した方がいい』
「了解」
 通信が終わった。
「イマヌエルの言葉に従う方が良かろう。今日はここで休む事にして、あの岩だけの山を越えて目的地に向かうとしよう」
 次郎長が提案した。
「うん、ごめん、皆、おっちょこちょいしちゃって・・・。それがなければここまで飛ばされる事にならなかったのに・・・」
 かよ子は罪悪感でいっぱいだった。
「山田かよ子、あの襲撃はお主の失態ではない。誰でもレーニンが出てくるのは予想だにせぬことであったのだから気を落とすな」
 石松が慰めた。
「そうだよ、かよちゃん、こんな事で落ち込んじゃだめだよ!」
「そうだブー、オイラ達は意地でも藤木を取り返すブー!」
「だからここでメソメソすんなよ!」
 まる子が、ブー太郎が、大野にかよ子が励まされる。
「まるちゃん、ブー太郎、大野君・・・。うん、そうだよね!」
 かよ子はくじけまいと思うのであった。それを傍から見ていたのり子は考える。
(ももこちゃん達、一人だけの友達じゃなく、皆であの子を励ましてる・・・。そっか・・・)
 のり子も言葉を掛けようと進む。
「かよちゃんだっけ・・・?私も精一杯手伝うよ!」
「のりちゃん・・・。ありがとう!」
 そして藤木救出班は谷で一夜を過ごす事になる。

 戦争を正義とする世界の本部。レーニンはある物を用意させた。2台の自動車だった。
「自動運転が可能な自動車だ。これで和光晴生を迎える」
 自動運転する自動車のうち1台は本部を出た。
「はて、貴様が中心となって動くか?」
「ああ、いいぜ」
「レーニン様、杯を所有者ごと奪うという事ですか?」
「その通りだ。重信房子、貴様にも付いて来て貰おう」
「畏まりました、レーニン様」
「本部の警備は他の者に任すがよい」
「はい」
 レーニンと重信房子はもう1台の自動車に乗車し、出発する。

 かよ子達藤木救出班は谷で夜を過ごす。
「それにしてもここは冷えるのお〜」
 友蔵は寒がっていた。通信機を出す。
「ちょっと、フローレンスさんとやら、ストーブを用意してくれんかの?」
『ストーブ!?仕方ありませんわね』
 羽根の上にストーブが現れた。この日は麻婆豆腐に卵スープと中華風の献立だった。
「はあ〜、明日こそハンバーグ出ないかな〜」
 まる子は願う。その時、フローレンスの声が聞こえる。
『皆様、食後にこちらをどうぞ』
 皆の前にプリンが出てきた。
「うわあ~、プリンだあ~。やったあ~」
「まる子や、良かったのお~」
「ほう、『ぷりん』か。西洋の菓子だな」
 次郎長は味見をした。美味と思った。
「アタシも今度この『ぷりん』を作ってみたいね。この世界に来て食べた事はあるけど、貰いものだからね」
「そうだったな、いつの日か西洋出身の者から教わってみてはいいと思いますな」
 綱五郎は案じた。その一方、かよ子はプリンの甘さを噛みしめながら攻撃に屈したくないと思う。
(レーニン・・・)
 かよ子はふとある事が思い出される。
(杉山君・・・、今どうしてるの?もしかして、本当に、あいつらの方に寝返ったんじゃ・・・!?)
 かよ子は杉山の近況もいち早く知りたかった。そう思いながら日が暮れた。

 紂王の屋敷。少年は己の部屋の寝台に入る。その時、ドアがノックされた。
「茂様!」
「あ、はい!」
 元気そうな遊女が入ってきた。
「明日の『すけーと』、楽しみですね!私も、他の者も皆楽しみにしてますよ!それじゃ、お休みなさーい!愛してまーす♡」
「うん、お休み」
 遊女は戸を閉めた。
(スケート、か・・・。久々に滑ってジャンプやスピンを皆に見せてみるか!)
 少年は自分がスケートしてジャンプやスピンを披露する姿を想像した。
(もしあれが・・・)
 少年は「学校」にいた好きな女子に「凄い」と言われる所を妄想する。
(いや、いや、もう忘れたんだ!!)
 少年は気を取り直す。そして夏休みに会った「少女」に見せる所を思い出した。
(そうだ、あの時・・・!!)
 少年は夏休みに会った「少女」にスケートができるとアピールした事があった。だが、季節が違うという事で反応が微妙に終わってしまった。
(見せたいな・・・、僕のスケート姿を・・・!!)
 少年はそう願いながらも明日を楽しみにしながら眠るのだった。

 かよ子達もまた眠りにつく。
「お休み・・・」
「ああ、お休み」
 羽根の結界が働いてくれたとはいえ、あの怪獣は結界ごとこの羽根を追い払ってしまった恐ろしい怪獣である。玄奘によって強化された羽根であるというのにとても無力に思った。
(負けたくない、杖を盗られたくない・・・!!)
 かよ子は以前、異世界の人間に一度、杖を騙し盗られた事があった。それ以来、杖の所有者としての自覚も強くしたいと思っていた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「同体化した少年」
 本来の目的地に向かうべくかよ子達藤木救出班は東の方角を目指し、混沌の山脈を脱出しようとする。だがそこには赤軍の人間が現れる。そこには更に戦争主義の世界の長・レーニンも現れる。そしてそのレーニンの声が変わるが、その声は・・・!? 
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