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タイトル案は第一話に記載しています。

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セルコー討伐戦③

ーセルコー雪原 遺跡 中央ー

「全て出し切れ!!ここで確実に倒す!!!」

地に落ち、暴れる白竜に人類が最後の攻勢を仕掛ける。

「残った爆弾を全て投下する!!!ぶち飛ばせ!!!」

竜に数十個の爆弾が投げ込まれ、それを炎魔法で一斉に点火した。

「いっけぇぇぇぇ!!!!!!」

遺跡の中央で、空間を抉るほどの大爆発が起きる。

「やった.......」


煙が晴れ、そこには沈黙した竜の姿があった。


「勝ったッ!!!!!!!!」

黒焦げになった白竜を見つめ、人類が安堵した。

そのとき、竜の体が光った。

「まだだ!!!油断するな、まだ死んでない!!!」

竜は、最後の力で、人類の攻撃をその翼で振り切った。

「くっ!!こいつ、まだこんな力を!!」

全身に闇魔法のエネルギーを蓄えた竜は、そのまま爆発しながら突進を始めた。


「まずい!!!逃げろ!!!」

最後の力を振り絞って出された攻撃は、周囲すべてを破壊しながら真っすぐ突き進んでいく。

それに対し、人類は退避を余儀なくされた。

「ここまで、なのか...!!」

「いいや、人類は、まだ終わらない」

吹雪の中、それを掻き分けるように現れる。

「大佐!!ここは危険です!!」

「案ずることはない。アレは、私が倒す」

そう言って、全てを破壊しながら前進する竜の前に立ち塞がった。

「大佐!!自分も戦います!!」

「いや、お前は後方支援だ」

「し、しかし...!!」

「お前は私の周りで氷魔法を発動してくれ。それだけでいい」

「わかりました。死なないでください、大佐!!」

希望を託すように言った。

「ああ!私は負けない!!!」

男は、力強く微笑んで、前を向いた。


ーおいおい、俺は人類最強の男だぜ?

そう、冗談めかして言った男を思い出す。

俺がこいつを倒して、俺を助けたお前を最強にしてやるよ、レック。



拳を引いて構える。

全ての力を使って、辺り一面から風を集めた。

そして、氷魔法を吸収して、拳が氷で包まれる。


拳は回さない。
真っすぐ、正面を向け、思い切り後ろへ引く。


ーじゃあね。人類を頼んだよ、バルタザール


イメージするのはただ一つ。
目の前の敵を、一欠片も残さず消し飛ばす、それだけだ。


寸分違わず、力を出し切って拳を突き出した。


爆発を繰り返す災害と、大気を暴走させた人類最強の魔法が正面から衝突した。


周囲の視界は、爆発の衝撃で飛び散る雪のせいで白く染まった。

そして、白い靄が明けたとき...


そこはただ、真っ白い雪景色が広がっていた。

そこにいたのは、しっかりと地面に立つ男と、粉々に砕け散った竜の残骸。


ー勝ったぞ。

辺りの、雪が降り積もった景色を見つめる。

取り戻したぞ、お前の故郷と、心を。


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ーセルコー雪原 魔王城側ー

桜嵐(サクラアラシ)ッ!!』


「『拘束崩壊(バーサーク・レストレイント)』」


僕の目の前で、漆黒と炎が交錯する。

なんだ、あいつは...?

上位個体に匹敵する、いや、それ以上の魔族だ。

あんなもの、‘‘前回‘‘見たことがない。

「ぐっ!!!」

中佐が黒の瘴気を喰らい、負傷する。

何だ?何が起こっている??

そして、一つ、思い当たる記憶に辿り着く。

ーローゼマリー中佐、セルコー討伐戦にて、新型の魔族と相打ちになり死亡。


そうか、道理で見たことがないわけだ。


歩行型と斬り合って時間を浪費しながら、その戦いをただ凝視していた。


ーここで、中佐が死ねば、人類にとって大きな損失になる。

それは、使命を果たす上で有利になる。


ーローゼマリー中佐、前回‘‘死亡‘‘

僕が処刑されるときには、既に死んでいた人間だ。

いや、それがどうした。

正義を阻む者は悪で、この腐った世界から魂を救済しなければならない。
神より賜った僕の使命は、魔族。そして人類の殲滅だ。


「なかなかやるね。でも、アリシデェタ様の命により、貴方たちを殺す」

そして、敵が中佐へと近づいた。

「お前なんかに、殺させはしないッ!!」


ーだからさ、そんな寂しそうな顔するなよ

ーじゃ、頑張れよ。応援してるぜ


そして、敵が中佐へと攻撃を仕掛けた。

その周囲には、僕と、数人の兵がいる。


「中佐を、助けないと...!!」

「やめろ!!邪魔になるだけだ!!」

「くそっ、何も、できねぇのかよ!!」

周囲の兵は、その状況を、ただ眺めるしかなかった。


ー何で、誰も助けてくれないんだ?

浮かび上がったのは、処刑されたときに見た情景。

ー僕は、人類のために、たった一人で貢献してきたじゃないか。


「じゃあね、これで、終わり」

黒い少女は、素早く動いて中佐に奇襲を仕掛けた。



「な、何っ!!?」

黒い少女は、奇襲を跳ね返されてたじろいだ。

「私の攻撃が、弾かれた!!?」


「お前...ルード、か?」

ローゼマリー中佐は、自分を助けた少年に振り返った。


何だ?僕は、何をしているんだ?
こんな行動は、正しくない。許されない。


「ありがとう、本当に、助けられた。あなたに、感謝を」


僕が、神の教えに反したのか??
ただ一つ、信じていたものを、自らの手で裏切った。
絶望し、狼狽し、悲嘆に暮れる。


(これは、光?闇魔法を弾いた。少し当たった個所の皮膚が爛《ただ》れている。まさか、魔族と闇魔法に効果を発揮する魔法?アリシデェタ様に報告しないと)


どうして、こんなことをしたんだ。
聖典に示された正義じゃない。
自分の、つまらない、身勝手な意思で、神に背いた。
愚かで、醜悪極まりない。

「二対一じゃ分が悪いか。ここは退散しよっと」

黒い少女は、魔王城へと帰っていく。


気が動転する。
胸の中が潰れそうだ。
視界が歪んで前さえ見れない。
どうしようのないほど顔を曇らせて、ただ俯く。


「四天王、シュニィドラゴン、討伐完了!!!!」

向こうで、人類が四天王を討伐した。

「や、やったぞぉぉ!!!!!!!!」

人類は、強敵を打倒した喜びに酔いしれた。
手を挙げ、叫び、飛び跳ね、戦友と顔を見合わせる。



剣を持つ手が、震えて止まらない。
足がすくんで、立っているのさえもう耐えられない。
鼓動の音さえ聞こえず、目は真っ黒になったように何も見えない。
このまま、一歩だって動けなかった。


「総員、帰還する!!!!!」

戦いを終えた人類は、雪原を後にした。



ごめんなさい、神様。
僕は、間違いを犯しました。
 
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