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借金を返さない奴

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第三章

「うちはお昼に働くけれどね」
「それをですね」
「最初夜の一時に面接してくれって連絡したら言ってきたし」
「一時ですか」
「それでもお昼にと言ってね」
 そうしてというのだ。
「何とか来てもらったら」
「どうでした?」
「職歴は高卒の後殆どなくてね」
「無職でしたか」
「パチプロやってたらしいけれどね」
 それが職業だったというのだ。
「趣味の欄にもそう書いてあったよ」
「そうですか」
「資格もないし趣味は他には競馬、麻雀、酒、煙草、風俗通い」
「何か趣味聞いただけで、ですね」
「駄目だと思ったよ、面接にはジャージで来るし」 
 上司は服装の話もした。
「椅子に足組んで座って敬語も使わない」
「それ中学の時からですよ」
「そこから全くなんだね」
「成長してなかったんですね」
「偉そうな態度でアパート紹介しろとか適当に働きたいとか有給はもっと欲しいとか」
「そんなの言ったんですか」
「それで話が終わったらいぬわ、で帰ったよ」 
 そうだったというのだ。
「あんな酷い面接ははじめてだったよ」
「それで不採用ですね」
「すぐに決めたよ、他の面接に来た人は全員採用したけれどね」
「うち今業績伸びてて規模も拡大してますからね」
「人手は欲しいけれど」
 それでもというのだ。
「問題外だったからね」
「だからですね」
「不採用だよ、君は彼のことを知ってるんだね」
「ええ、実は」
 大西は亀田のことを話した、借金のことを。
 そうしてだ、こう上司に言った。
「あいつあの時から全く変わってないんですね」
「そうみたいだね」
「ええ、最低な屑ですね」
「私も思ったよ、あれはないよ」
「そうですね、そんな面接する様じゃ先が知れてますね」
「そうだね」
 上司は暗い顔で頷いた、そして。
 大西は後日亀田がギャンブルと女遊びばかりしてヤミ金に手を出したうえで親に勘当されて行方不明になったと聞いた、噂ではヤミ金の業者に連れて行かれたというが。
 大西はもうどうでもよかった、むしろその話を聞いて当然だと思った。ただそれだけで自分の仕事と生活に向かった。


借金を返さない奴   完


                   2022・2・19 
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