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戸籍謄本の秘密

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第一章

               戸籍謄本の秘密
 平田日雅は市役所に行く前日に夫の耕に言った、まだ幼い感じの大きな目が目立つ明るくそれでいてアイドルとしても匹敵しそうな顔立ちで黒々とした髪の毛を肩の長さにして右を髷にしている。背は一五〇位で均整の取れたスタイルだ。サラリーマンの夫とは別にショッピングモールで従姉が経営している喫茶店でパートをしている。
「戸籍謄本出してもらうけれどね」
「あれ滅多に出してくれないだろ」
 夫はこう返した、一七一位の背で収まりの悪い黒髪をショートにしている。面長で細い目で如何にも若いサラリーマンといった風だ。
「抄本なら出してくれるけれどな」
「そうなのよね、抄本でいいですかってね」
「絶対に言われるよな」
「けれど今回はね」 
 日雅はどうしてもという口調で言った。
「パートの合間だけれど」
「市役所に行ってな」
「それでないとね」 
 戸籍謄本でなければというのだ。
「駄目だから」
「どうしてもだからな」
「それで見せてもらうけれど」
「それだけでも大変なんだよな」
「絶対に出したくないってね」
 そのことがとだ、日雅は困った顔で述べた。
「もうね」
「わかるよな、市役所の方も」
「本人が行ってもそうだから」
「明日は苦労しそうだな」
「従姉のお姉ちゃんも言ってるわ」
 雇ってくれている彼女もというのだ。
「明日は時間がかかってもね」
「仕方ないってか」
「そうね」 
 その様にというのだ。
「戸籍謄本だからね」
「そうだな、頑張って来いよ」
「そうしてくるわ」
 夫にこう応えてだった。
 日朝は次の日の昼市役所に行って自分の戸籍謄本を見せてもらいに行った、そして予想通りにどうしても出そうとしない市役所と粘り強く交渉してだった。
 それを出してもらった、そして借りて見せてもらって一時的に使わせてもらって市役所の人に返してだった。
 パートに戻って家に帰ってだ、夕食を作って家に帰ってきた夫と一緒に食べつつこんなことを言った。
「苦労したわ」
「やっぱり中々出してくれなかったんだな」
「抄本でいいですかって言われてね」 
 おかずのハンバーグでご飯を食べつつ答えた。
「それでね」
「意地でも出そうとしなかったんだな」
「それで訳を詳しく話して」
 何故戸籍謄本が必要かということをというのだ。 
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