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DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~ 

作者:山神
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楽しい野球

 
前書き
横川さんの筋肉チャンネルボディメイク系はしっかり見て参考にしてます(*_*)ゲームハシラン 

 
真田side

「これが優愛を敬遠した狙いか……」

赤いランプが二つ点灯したことに奥歯を噛む。確かに莉子なら例え満塁であろうとリードはいつも通りどのタイミングで牽制されてもいいように出ていたはず。しかし優愛は如何せん能力があるせいかその辺が横着してしまう時がある。今回の牽制はそれに気付いていながら直してこなかった俺の責任だ。

(2アウトランナー二、三塁になっちまったか。ただここは葉月に託すしかーーー)

アウトが増えただけになったが切り替えていこうと思った矢先、再びキャッチャーが球審に声をかけている。

「まさか……」

球審が両手を広げタイムをかける。そこから左手で一塁を指差した彼を見て、葉月が一塁へと歩き出す。

「やっぱりそういうことか……」

再び満塁にして向かえるは陽香。彼女も十分な力を持っている打者だが、前の二人に比べれば多少なりとも力は落ちてしまう。

(それでも陽香なら十分に打てるはずだ。なんとか頼むぞ)
















第三者side

「うまくいきましたね」

こちらは翼星側ベンチ。ベンチで試合を見ている背番号11の少女が佐々木へと声をかける。その声に対し彼女も笑みを浮かべていた。

「水島だけが不安要素だったけど、ここまでくればこっちの方が有利なはずよ」

莉子にだけはランナーの生還を許さないようにアウトを奪わなければならないという困難な課題を課してマウンドに送られた遠藤。それがどれだけ難しいかは送り出した彼女もよくわかっていたが、それができなければ勝利は遠いものになってしまう。

(この危機的状況で最高の結果を残してくれた。坂本を打ち取れば流れは完全にこちらのものだわ)

まだアウトカウントが一つ残っている。緩みかけた気を引き締め直し彼女は選手たちにサインを送った。
















佐々木からのサインを受けた岡田はヘルメットに手を当てそれを了承する。

(最初からライズか……印象付けて落ちる球を有利にするつもりか)

サインを出し中腰に構えた岡田。遠藤はそれに答えるようにライズボールを投じる。

「ボール」

陽香はこれを見送り1ボール。じっくりと球の軌道を確認した彼女はいつもの真剣な表情から一転、苦笑いをしていた。

(これは確かに見たことがないボールだ。やはりカーブとシュートに標準を絞った方がいいな)

ストレートも想定よりも浮いて感じると莉子から情報を得ていたため、真田の指示通りの球種に狙いを定める。すると続く二球目は待っていたボールが来た。

(カーブ!!)

真ん中から外へ逃げていくこれに食らいつき流し打つ。強い打球が飛んだもののそれはフェアグランドに落ちることはなかった。

(届くことは届く。甘く入ったら持っていく!!)

狙い球に付いていけることがわかり俄然気合いが入る。その気合いの入りようを岡田は見逃さない。

(カーブが狙いならスローカーブはどうなるかな?)

確実性よりもいたずら心が勝ったようであえて似ている球種をチョイスする岡田。それに遠藤は苦笑いを浮かべていたが、彼女を信じ投球に入る。

(さっきよりも内!!打てる!!)

似たような出所で先程よりも真ん中に身体に近い所に来ている。それを失投と捉えた陽香はスイングに入るが、振り始めてから違和感に襲われた。

「遅っ……」

合わせたはずのタイミングが合わない。そこで彼女は思い出した、遠藤のスローカーブの存在を。

ガッ

待ちきれずに緩いそのボールを打ち上げてしまった陽香。打球はショート前方への浅いフライとなり、鈴木がこれを難なく捕球しチェンジとなった。

















「うわっ!!ノーアウト二、三塁を切り抜けちゃったよ!!」

笠井が驚きのあまり大山のユニフォームを引っ張りながらそう言う。スタンドで見ていた東英学園の一同もそれはわかっているため、はしゃいでいた笠井は恥ずかしくなり何事もなかったように正面を向く。

「明宝はやっちゃったかもしれないねぇ」
「下位打線ならともかく、よりによってこの打順で得点をあげれないとは……」

チームで頼れる莉子、優愛、葉月、陽香と続く打順ながら一人としてランナーを返すことができなかったことによる動揺は大きい。ベンチから出てきた少女たちの足取りもどこか重たく見える。

「これで翼星がこの回点を取ったら、そのまま決まることもあるぞ」















落ち込んでいる雰囲気が出ている明宝に対しベンチに戻ってきた翼星は沸きに沸いていた。

「よく守ったよ!!でもまだ満足しないでね?」

大ピンチを凌ぎきった少女たちを拍手で迎え入れる佐々木。盛り上がっている彼女たちに対し佐々木はそう言うと、選手たちが一斉に静かになり、円陣を組む。

「まだ同点だからね。ピンチの後にチャンスあり、この回狙っていくよ!!」
「「「「「はい!!」」」」」

この勢いに乗りたい翼星。その様子を見ていた莉愛は頬を膨らませていた。

(この回は大事に行かないとまずいかも……)

ただでさえここまで僅差の試合がなかった上に流れが相手へ傾きかけているこの状態。実践経験の乏しい彼女が固くなるのも無理はない。

「莉愛!!」

それを見ていた莉子が守備に向かいながら彼女の肩に腕を回す。元々同じポジションだったこともあり、二人はよくコミュニケーションを取っているのを真田もわかっていた。

(ここは任せるか)

声をかけようかと迷っていたところでの彼女の自主的な動きに真田は委ねることにした。元気な返事で莉子の言葉を聞いた莉愛は落ち着きを取り戻したようで、明るい表情で守備へと向かう。

(なんて声をかけたのかしら?でも、それだけで急にうまくはなれないわよ?)

下位からの攻撃ではあるものの、攻め方を間違えなければ十分に得点はあげられる。そう考えている佐々木はサインを送る。

(ストレートに合わせるだけでいいんだもんね。狙うのは……)

2ボール1ストライクからの4球目、左打者の横尾(ヨコオ)は外角へのストレートを逆らわずに流す。

「サード!!」

コースはサード正面へのライナー。しかし、打球は守っている優愛の頭を越えていく。

「ボール二つ!!」

明里が回り込むようにボールを捕球しすぐさま二塁へ送球。横尾は一塁を回ったところで停止しており、進塁は防ぐことができた。

(ストレートだけに狙いを絞ってんだ……迂闊にカウント取りにいっちゃった)

変化球を主体に攻めようとした結果、ボールが先行してしまいカウントを整えにいったボールを打たれる。投手として嫌な形での出塁を許してしまった。

(ミスった。莉愛よりも陽香のガス抜きするべきだった)

そう思っているのはショートを守る少女。明らかに顔に出ていた莉愛を優先してしまったが、先程のチャンスで凡退した陽香の方が精神的に来ていたことに今気付いた。

「陽香ちゃん!!一つずついこう!!」
「こっちのボールは任せてください」

優愛と葉月も陽香が動揺しているのに気が付いており、すぐさま声をかける。彼女もそれに答えるように右手を挙げて応える。

(ここは送ろうかな?真理子ならバントもヒッティングもできる)

次から上位打線に入ることもあり送りバントの指示をする。確実に送るために最初からバントの構えで打席に入っている少女を見て、全員がバント警戒のシフトへと移行する。

(やらせましょう!!外角のストレートで十分です)

もっともバントがやりやすいコースと球種を選択する莉愛。案の定それを行おうとしていた打者はバントを試みるが、ここで予想外の事態が起きる。

「やべっ」

送りバントの打球が死にすぎてしまった。ファーストに取らせるはずの打球がキャッチャーの目の前で止まってしまう。

「莉愛!!二ついける!!」
「はい!!」

すぐに反応して素手でボールを拾った莉愛。彼女はそのまま二塁へ送球する。

「バカッ……」

ベースカバーに入っていた莉子。そんな彼女に投じられたボールは弾道が低い。

(伸びれば届く!!)

ショートバウンドになりそうなボールを捌こうと伸びる莉子。一つのアウトを確実に取ろうとした彼女の判断は完璧だった。ただし、それは慌ててなければの話である。

ガシッ

陽香と莉愛の慌てぶりが伝染したのか、目測を誤りグラブの土手にボールを当てる莉子。当然それでは捕球できるはずもなく、ボールは目の前へと転がりオールセーフを許してしまった。

「タイム!!」

さすがのこれには優愛も怒りモード。怒鳴りながらタイムを要求し内野が全員マウンドへと集まる。

「何やってんだ……」

一つの大チャンスを潰したことがここまで影響するとは思ってなかった真田は澪を呼び寄せ伝令を伝え、送り出した。

「真理子、この回は徹底して攻めることにしましょうか」
「またあのバントですか?」

その問いに頷く佐々木。ただし、今度はより細かい指示を出す。

「三塁方向に弱いバントをしてキャッチャーに捉えましょう。サードが後ろに逸らしたら1点もらえちゃうからね」
「わかりました」

マウンドから選手が散らばるのを確認して打席へ向かう岡田。打席に入った岡田は守備位置を確認し構えに入る。

(ストレートなら殺しやすいけど、そう簡単に来ないかもしれない。なら……)

バントの構えに入る岡田。その足の位置を確認した莉愛は葉月に前へ出るよう指示を出した。

(この子、意外と周りが見えてるんだよね。でもそれが今回は仇になる)

足の位置によってはバスターも考えられるため球種の選択が難しくなる。そのため岡田はあえて足を平行に揃えバントしかできない状態を作り出している。

(バントをさせるなら外角低めへのストレート。でもそれだと1アウト二、三塁になる。ここは簡単には送らせたくないはず……とくれば……)
(この場面でバントを決められるとさすがに厳しい。ならここは……)
((インコース高めのストレート!!))

岡田と莉愛の思考が一致した。フライを上げさせるための投球を選択した莉愛だったが岡田はこれを読んでいた。読んでいればバントを転がすことは難しくない。

(気持ち強めに打球を殺して……)

勢いを殺して三塁側へとバントを転がす。本来なら失敗に見えるバントだが、今回はこれでいい。

「キャッチ!!三つ!!」
「はい!!」
(よし、食い付いた)

一塁に走っている岡田は優愛の指示と莉愛の返事で勝利を確信した。ここでノーアウト満塁を作り出せば得点の可能性がより上がる。

(大丈夫!!自信持って)

ボールを拾い上げ三塁へと視線を向ける。そんな彼女の脳裏には守備に付く前に莉子に言われたことが過っていた。





「怖いか?莉愛」
「少し」

強張った表情をしていた彼女へそんな問いをしている。それに固さを持ったままの答える少女に莉子は笑って答えた。

「私も怖いよ」
「え?」
「そりゃそうだ。負けたらそこでおしまいなんだから」

一発勝負の夏の大会。それは三年生にとって常にプレッシャーとの戦いである。その緊張感の中で力を出しきれたチームが勝ち抜いてこれるのだ。

「私たちは常に最善のプレーを心がける。でも、お前はそうじゃなくていいんだ」
「どういうことですか?」

期待されていないということかと思い眉間にシワが寄った莉愛を制する莉子。彼女はなぜそんなことを言ったのかを伝える。

「お前はうまいよ。そうじゃなければキャッチャーなんて重要な役割を任せることはできない。でも、この大会までの試合ではそんな顔はしたことなかったはずだ」












ボールを握りベースに付いている優愛目掛けて送球する。それは彼女の胸元への完璧な送球となった。

「アウト!!」

優愛はすぐさま一塁へとボールを送る。ファーストの葉月が脚を最大限に広げ最短で捕球してみせる。

「アウト!!」
「何っ!?」

俊足が売りの岡田のダブルプレー。これには彼女も翼星ベンチも驚きを隠せない。

「よーし!!」

その中で一際響き渡る声と共にガッツポーズをしている莉愛。その感情の爆発ぶりに莉子は笑みを浮かべていた。



『楽しそうにプレーしている時のお前が一番理想的だったよ』

先輩たちの最後の大会で負けられないといつの間にか気負っていた莉愛。それを見抜いた莉子の指摘により自分の本来の力を取り戻した彼女がチームのピンチを救った瞬間だった。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
莉愛が選手として一皮剥けたお話でした。
まぁ自分でピンチを作って自分でそれを何とかする自作自演型ですがそんな野暮な突っ込みはやめてくださいww 
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