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私はいじわる 小悪魔が住みついた

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3-⑵

 運動会の最後のプログラムの組対抗の混合リレーを迎えていた。一番目は6年生の女子で、5年生の女子、男子、アンカーは6年生の男子の順で走ることになっていた。私達の青組は鈴花ちゃんと昂君だ。

「昂君 きっと鈴花ちゃんはトップで走って来るから、がんばってね」と、私は声を掛けたけど

「ああ 派手に転んだらいいんだろう」

「昂君 ごめんね やっぱり恰好よく走っているとこみたい」と、私は素直に反省して謝っていたつもりだった。

「バカ そんな顔するなよ ちゃんと走ってやるよ そのかわり、見せろよ その・・・なんだ・・」

「なによー 見せろって そんなのー」と、顔が紅かったかもしれない。

「なに考えているんだよー お前の笑顔」と、集合場所に向かって行った。

「クソー 又 やられた」

 そして、6年の女子がスタートして、第二走者で最初にバトンを受けたのは、蘭ちゃんだった。その次に鈴花ちゃん。でも、私はきっと追い抜いてくれると確信していた。だから、みんなで「りんか りんか」と声を合わせて大声援を送っていた。

 最後のコーナーの所で、鈴花ちやんは追いついていた。そして、直線コースに入って、蘭ちゃんを抜こうと並んだ時、手がぶつかって、鈴花ちゃんはバトンを落としてしまったのだ。そして、それを拾おうとして、後から走ってきた黄色組の走者とぶつかって・・転んでしまった。

 その後、昂君はバトンをなんとか受け取って、アンカーに渡すまで走ったけど、間は縮まったものの我が青組はビリに終わった。

 私には、鈴花ちゃんが並んで追い抜こうとした時、蘭ちゃんのバトンを持つ手が横に広がったよう見えていた。鈴花ちゃんは、最後の直線で利き手の左にバトンを持ち変えていたのだ。だから、その手が蘭ちゃんの右手のバトンで・・。

 終わって、鈴花ちゃんに駆け寄った時

「ごめんね 真珠 失敗しちゃった」

「あのね あの時、わざと・・」

「ううん それ言っちゃぁアカンよ ウチ ぼーっとしていたから それより、昂に謝らなきゃ」と、昂の側に言って謝っていたけど・・

「別に お前が悪いわけじゃぁ無いし 謝られてもな― それより、その膝 血が出てる 消毒しに行きなよ」なんとも思っていないみたいだった。

「それと・・ お前が俺の代わりに転んでくれて 真珠が喜んでいるんじゃぁ無いかなー」

「あのねー 他人のこと悪魔みたいに言わないでよー それと、鈴花ちゃんにも お前 お前って言うな!」と、言い返した時には、昂君はもう、最後の応援合戦に参加しに行っていた。

「あいつって思ったより 恰好良いよね」と、鈴花ちゃんが言ってきたから

「うん 根は優しいんだけどな―」

「真珠 好きなんだー」

「なんでー やめてよー あんな奴」

「紅くなった そうかー そうなんだー」

「違うって ただ 昔から知っているだけ」

「あっそう じゃあ ウチが好きになっちぉうかなー」

「いいよ ・・・うー やっぱり、ダメ! ウチなんか、鈴花ちゃんに勝てないもの・・」

「からかっただけよ 安心して 真珠は親友だと思っているから」

「もぉう 早く膝の手当しておいでよ」

 帰り道、やっぱり後ろから昂君が来ていたので

「昂 あの時 蘭ちゃんの手見てたでしょ?」

「あぁ あんなこともあるよなー」

「許せるの―?」

「許すもなにも 偶然かもしれんし 鈴花ちゃんのほうが悔しいんだろうし・・真珠 あんまり、余計なこと言うなよ! 別に 駆けっこだけの話だし」

「そうかー わかった でも、昂がビリッカスってわかっているのに一生懸命、走っているのって恰好良かったよ 転んだとこ見れなかったけどね」

「うん 俺も お前の喜んだ顔 見たかったけどな」

「・・・お前って・・ 言うな」 って、小さくつぶやいた。 


 
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