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白と黒

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第一章

   白と黒
 大坂夏の陣でのことである、八尾それに若江での戦はかなり激しい戦であった。その為敵味方が乱れ入りどちらが敵かどちらが味方かわからぬ様になった。
「どちらが敵か」
「旗がなければわからぬぞ」
「具足や着物の色も同じ」
「これではわからぬ」
「井伊家の赤備えでもなければな」
「これはわからぬぞ」
 徳川方の兵達は大いに戸惑った、だが。
 徳川方の将の一人安部正次は兵達に強い声で言った。
「安心せよ!」
「敵と入り乱れていても」
「それでもですか」
「敵がわかりますか」
「味方も」
「我等はそれぞれの領地は長旅を進んでおる」 
 このことを言うのだった。
「その為顔は日焼けしておるな」
「はい、言われてみますと」
「今は夏ですから余計に」
「皆顔が焼けてです」
「真っ黒な位です」
「具足や服も同じ」
 こちらもというのだ。
「長旅で汚れておるな」
「そうなっていますな」
「それで味方がわかる」
「どの者もそうなっているので」
「そしてじゃ」
 阿部はさらに言った。
「敵は大坂から出ておるな」
「すぐそこです」
「そこから出ております」
「そしてこれまで城におった」 
 このことも言うのだった。
「ならば日に焼けておらず具足や服もであろう」
「汚れていませぬ」
「左様ですな」
「それではですな」
「そこでも見分けがつきますな」
「我等は黒く敵は白い」 
 阿部は今度は一言で言った。
「皆の者このことを目印にして敵を討ち取るがよい」
「わかり申した」
「ではその様にしていきまする」
「そして敵と戦い」
「討ち取っていきまする」
「その様にせよ」
 こう言ってであった、阿部も自ら戦い。 
 徳川方の者達はそうしていった、その中に話に出た井伊家の軍勢がいたが流石に彼等は誰も間違えなかった。
「あれだけ赤いとのう」
「井伊家は見間違えぬ」
「あれこそ天下の赤備え」
 その赤い軍勢を見て誰もが言った。
 
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