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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第二幕その七

「執筆もはじめてね」
「作家さんになったんだ」
「そうだったんだ、ただ結核はずっとね」
「あったんだね」
「そうだったんだ、けれどその中でね」
「書いていって」
「昭和十年代からそうでね」
 それでというのです。
「終戦を経ても」
「その間も書いていたんだ」
「作品は大阪を舞台にしていて」
 今度は作風のお話もしました。
「今お話した通りにね」
「大阪の中を彷徨って」
「それで最後に落ち着く」
「そうなるんだね」
「彷徨い方はそれぞれだけれどね」
「お家を転々としたり」
「お仕事をそうしたりね」
 そうしてというのです。
「転々として。その中でお金や女の人と何かあったり」
「ああ、夫婦善哉みたいに」
「そうなんだ、お金を持ち逃げする様なこともね」
「あるんだ」
「夜逃げみたいなこととかね」
「あまり清廉潔白でないんだね」
「根っからの悪人でなくても」
 それでもというのです。
「ついつい悪いことをしてしまう」
「それも人間だよね」
「それで困っている人を助けたりもね」
「あるんだね」
「そうした清濁があって」
 そしてというのです。
「人間臭いね」
「そんな大阪の人達をなんだ」
「書いているんだ」
「そうだよ、猿飛佐助もね」
 この忍者ものもというのです。
「人間臭いよ」
「そう言われると夏目漱石や森鴎外とは違うね」
 王子もここまで聞いて思いました。
「どうも」
「そうだね」
「うん、漱石さんも人の弱さも書くけれど」
「また違うね」
「清濁併せ呑むというか」
「織田作之助の作品は本当に泥臭いんだ」
 そうした作風だというのです。
「ありのままの市井の人でね」
「洗練さはなくて」
「泥臭くてね、弱くて時に悪いこともして」
「彷徨って」
「いいこともしたりして」
「最後は落ち着くんだね」
「そうなんだ」
 こうした人達が書かれているというのです。
「それで言葉もね」
「大阪だからだね」
「そっちだよ」
「随分と親しみが持てる感じだね」
「織田作之助自身その中にいたから」
 大阪の人達のというのです。
「だからね」
「書けたんだね」
「そうだよ」
「それは本当に面白しろそうだね、じゃあ」
「読んでね」
「そうさせてもらうよ」
 こう言ってでした。
 王子は今は鰻丼を食べました、そしてです。
 鰻の後はそこから歩いて法善寺横丁に行ってです、夫婦善哉に入りました。こちらも昔ながらの趣のお店で。
 動物の皆はそのお店の中で注文した善哉を食べながら言いました。 
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