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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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招かれし者(西村早苗)
  西村早苗の冒険③

にとりの家を出てまもなく、(西)は空から何かが回転しながらこちらに向かって来るのに気づいた。
それは漢字の「厄」のような模様が入った赤茶けたワンピースを着て、頭に大きなリボンを結んだ少女だった。


?「そこの貴女、“ヤク”はありませんか?」


(西)はある言葉を思い出した。それは「薬物乱用ダメ、ゼッタイ。」


(西)「薬物はいけませんよ?」


・・・。


雛「違う違う、そっちじゃなくて厄《わざわい》のほうよ。私は厄神の鍵山雛《かぎやま‐ひな》。人や物についた厄を溜め込む役割をしているの」


会話中も雛はクルクル回っている。よくもまあ目を回さないものだ。


(西)「私は外界人の西村早苗です。よろしくお願いします」

雛「よろしく。ところで厄はないかしら?貴女自体には付いてなさそうだけど」

(西)「そうしましたら…これはどげんですか?」


(西)が取り出したのは厄除の御守だった。御守は受領後一年で効果が切れると言われている。その御守はとうに効果が切れていた。


雛「おお、これはかなり厄いですねえ…何年ものの厄かしら?」

(西)「たしか効果が切れてから5年は経っていたと思います」


雛「危ないじゃないの!ただでさえ厄除の御守には厄が集まりやすいんだから…」

(西)「そうなんですか?」

雛「当然です!厄除の御守は私と同様に御守の内部に厄を溜め込みます。貴女の御守はその容量が限界を越えて厄が少し溢れ出していたのよ」

(西)「『溢れる』って…。なんか汲み取り式のトイレみたいやね」(←小声)


・・・。


雛「何か言った?」

(西)「あ、いや…。どうりで最近、物を無くしたり小さな怪我をすることが多かったわけたい!」

雛「ええ。これがもっと酷くなると最悪の場合、死に至る可能性だって出てくるのよ?十分気をつけてね」

(西)「気をつけます。ところで雛さん、これをどうぞ」


(西)が雛に何かを手渡した。


雛「何ですか、この“ヤクルト”というものは?一見、厄は付いていないようにも見えますが…」

(西)「まあまあ、とりあえず飲んでみて下さい」


雛が回転を停止した。
よく見ると雛はその緑色の髪の毛を顎の下まで伸ばしており、頭に付けているものと同じリボンで束ねて留めている。


雛「ゴクゴク…ふう、甘いわね。これを飲むと体に良いのだって?」

(西)「はい。ヤクルトには“L・カゼイ・シロタ株”という腸内環境を良くする乳酸菌が1本につき200億個も含まれていて、それが生きたまま腸に届くんです。毎日続けて飲んでいるとお腹の調子が改善されますよ」

雛「要は乳酸菌の踊り食いならぬ“踊り飲み”ってわけね…まあいいわ。それなら毎日飲むことにしましょう」

西(なにその気持ち悪い表現…。)

雛「どこで入手できるの?……あっ!そういえばたしか、人里にヤクルトの選手兼任監督がどうのと言っていた人がいたわね。古田敦也《ふるた-あつや》さんだったかしら?彼に聞いてみましょう」

(西)「その“スワローズ(ヤクルト)”とは違う気が…。でもまあ、古田さん自身もヤクルトのCMに出てあったので何かしらご存じだとは思いますけど」

雛「良いことを聞いたわ!ありがとう。また会ったときはよろしくね」

(西)「いえ、こちらこそありがとうございました」


雛は空になったヤクルトの容器を持って回転しながらどこかへ行ってしまった。




ーーーその後、古田氏からヤクルトの詳細を聞いた雛は副業としてヤクルトレディを始めたということである。
    
     
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