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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百三十七話

 看守棟の看守室の天井には各スクラップ置き場に通ずる無数の穴があり、中央には拘束具の付けられた診察台がある。

 超人(パラミシア)系悪魔の実、ベタベタの実の能力者であるトレーボルが能力でスクラップ置き場に捨てられた人間をベタベタの粘液で捕まえ、診察台まで連れて来た人間を超人(パラミシア)系悪魔の実、ホビホビの実の能力者であるシュガーが触る事でオモチャに変える場所であり、看守棟は別名“オモチャの製造工場”と呼ばれている。


「ねーねー。地上ではディマンテ達が海軍とやり合ってるらしいよぉ!」

「ふぅーん……興味無いわ……パクっ……」


 シュガーは自分にまとわりつくように声を掛けるトレーボルにすら興味なく、籠いっぱいに入ったぶどうに夢中であり、一心不乱にもぐもぐと食べていた。


「トレーボル様、救援に行かなくても大丈夫ザマス?」

「べへへへ……ディマンテなら心配ねぇよ!ヴァイオレットが裏切った以上はこの部屋の様子も筒抜けだ〜!むしろここが一番危ねぇぞ〜!」


 ジョーラの心配をトレーボルは制して警戒を強めるように部下に指示しようと電伝虫を手に取った瞬間、看守棟に息を切らせたドンキホーテファミリーの一人が駆け込んで来た!!


「報告します!“黒檻”のヒナが地下の交易港に現れ、暴れて手が付けられません!!トレーボル様、救援をお願いします!!」

「「「何ぃぃ!!?」」」


 トレーボル達はここへ通ずる王宮、オモチャの家の警備を強化していたが、何処からも侵入者の報告は上がっていなかった。


「一体どうやってここまで……!?」

「分かりません!港に出入りする船にでも潜んでいたのか……突然交易港に現れ……」

「ちょっとそこどいてくれる?」


 トレーボルに報告をあげにきたドンキホーテファミリーの肩が誰かに背後からポンと叩かれたことで、彼は慌てて振り返ってその場にいた燃えるような赤髪と褐色の肌を持つ美女の顔を見て目を見開く。


「えっ……お前は…!?」

「うふふっ!その報告にもう一人追加しとくいいわよ。」


 バカラは唖然としながら部屋の入口に立つドンキホーテファミリーを押し退けると、唖然とする彼を無視して部屋の中に入った。


「「「“豪運”!?」」」


 トレーボル達がバカラの姿を見て直ぐに正体に気付き、シュガーを下げて、トレーボルとジョーラが進み出て警戒体制を取るので、妖艶に微笑む。


「名乗りは要らないようね。トレーボル、シュガー、ジョーラ、あなた達を捕らえにきたわ!大人しく降伏してくれないかしら?」


 バカラはトレーボル達に向けて掌をクイクイッと動かして攻撃を誘う。


「死ねぇ!!」

「私の前でそんな物騒なモノ使うと怪我するわよ。」


 戦いの火蓋が切って落としたのはトレーボルへ報告していたドンキホーテファミリーの青年であり、彼は無防備に自分に背を向けるバカラに向けてマスケット銃を構えて発砲する。

 しかし、“運悪く”その銃が弾詰まりを起こして暴発し、銃を構えた彼自身が倒れてしまった。


「ぐぼべっ……なんで……銃が……」

「ほらね…ラッキー♪」


 さらに彼が倒れた瞬間、引き金に掛けられたままの指が引き金を引き、銃身の半ば折れたマスケット銃から弾が発射されて、それがまたまた“運悪く”ジョーラに胸に命中してしまう。


「うぎゃぁぁぁぁあああ!!」

「「ジョーラ!?」」


 血溜まりに沈むジョーラの悲鳴とトレーボルとシュガーの驚く声が響き渡る中、バカラは楽しそうに微笑んだ。


「あら…またまたラッキー♪」

「“ベトラン……おっと!?なんでこんな所にバナナの皮があるんだ?」


 トレーボルはバカラに向けて、ベタベタの実の能力により作り出したサッカーボール大の粘液の塊“ベトランチャー”を発射しようとした直後、何故か足元に転がっていたバナナの皮に足を滑らせた。


「うふふっ」


 “ベトランチャー”の殺傷能力はさほどでは無いが、当たれば人を吹き飛ばしてトリモチのような粘性が強く非常に粘着力のある液を付着させる事が出来る。


「あれ〜俺の“ベトランチャー”どこに飛んでった!?」


 トレーボルが自分の手にあった“ベトランチャー”が無くなっており、無傷のバカラが目の前にいる事で“運悪く”転倒したことで自分の攻撃が何処に飛んで行ったのか嫌な予感が彼を襲った直後、彼の目に“運悪く”ベトランチャーを顔面で受けるシュガーの姿が目に飛び込んできた。


「シュガーぁぁぁ!?」

「 トレーボ…きゃああぁぁぁ!!」


 自分の護衛であるトレーボルからの攻撃を予測していないシュガーはトレーボルの“ベトランチャー”を顔面で受けた後頭部から地面に叩きつけられて、その意識は一瞬で奪われた。


「あら、ラッキー♪何もしてないのに一番の標的であるシュガーも倒しちゃったわ!!」


 シュガーが気絶したことでドレスローザ王国を支配するホビホビの呪いが解けていく。

 この部屋に来てから一歩も動くことなく、ジョーラ、シュガーが運悪く仲間の攻撃でやられてしまったことでトレーボルはようやくバカラの能力に気付き、彼女を睨み付ける。


「ジョーラ、そして…シュガーまで…!!なんだ!?ねーねー!!“豪運”!お前…何をしたぁぁぁ!!」


 トレーボルはシュガーに近寄りながら、バカラが何かしたのは分かるが、何をしたのかは分からないので彼女を問い質した。


「見ての通り……私はこの部屋に来てから一歩たりとも動いていない。私のラキラキの実の能力は触れた相手の運気を奪い、自分の運気に変えることが出来る。私にはここの来るまでにヒナさんが集めてくれたドンキホーテファミリー100人分の運がある。今の私に“運良く”攻撃を当てることなんて出来ないわよ。」


 バカラはヒナが捕らえたドンキホーテファミリー約100人分の運気を貯めて部屋に乗り込んだ時点で勝負は決まっているのだと笑顔で話すと、トレーボルは涙と鼻水を垂れ流して悔しそうな顔をしながらシュガーを抱きかかえる。


「ちっ……!?シュガー!起きろぉぉぉ!!」


 トレーボルはシュガーの顔全体を覆う粘液を剥がしていくが、頭を強く打って気絶した上、呼吸困難に陥っていた彼女はいくら身体を揺さぶられても、白目を剥いて泡を吹いたまま目を覚まさない。


「ねぇ…?シュガーを倒しちゃったから、もうこの戦いは終わりでいいかしら?」


 バカラはシュガーを介抱するトレーボルに近づくと、彼の肩を叩くと、トレーボルはバカラに触られた事に気付いてシュガーを抱いたまま慌ててその場を離れたが、“運悪く”彼の足元に火が灯ったタバコが落ちていた。

 トレーボルはタバコの火が服に引火した事でそのタバコの存在に気付く。


「なんでこんな所にタバコが…ジョーラのタバコかぁ!?やばい…俺の粘液は火によく燃え…ぴぎゃあああああぁぁぁ!!?」


 そう…そのタバコは凶弾で撃たれたジョーラが倒れる直前まで吸っていたタバコであり、それが“運悪く”シュガーを抱いたまま移動したトレーボルの足元にあり、トレーボルの粘液に引火して火達磨になってしまう。


「ぎゃあああああああああ!!」


 さらに彼に抱かれたままのシュガーの顔に付着した粘液にも引火した衝撃で目を覚まし、断末魔の叫びをあげる少女の姿に同じ女性としてバカラは少し不憫に思う。


「顔を焼かれるなんて……女の子には酷いことしたかもしれないけど、貴女がこれまで多くの人から奪ってきた過去に比べれば安いものよね…。」


 火が消えた頃にはパンツ一丁の姿になり、全身をくまなく焼かれて辛うじて息をする意識のないトレーボルと、顔を中心に焼かれて意識のないシュガーの姿だった。


「覇気使い相手には体に触れる必要があるとはいえ…手がベタベタするわ…気持ち悪い。」


 バカラはトレーボルの肩に触れた時に手に付いた粘液を嫌そうに見るが、強力すぎるラキラキの実の能力にも欠点がある。

 “運良く”何万分の一の確率ともいえる銃の暴発を引き起こして相打ちや自滅を誘う事は出来ても、覇気使いはそれぐらいではダメージを受けないため、体に触れて運気を奪う事で確実に自滅に追い込む必要があるから、戦闘が得意でないバカラも見聞色の覇気と“剃”だけは鍛えていた。


「それにしてもトレーボルは随分スリムになってビックリしたわ。彼の脂肪だと思っていた部分は粘液だったのね。」


 身長4メートルを超えるよく肥えた肥満男であると思われたトレーボルは身長6メートルを超える超猫背のガリガリのおっさんで、肥満に見えた部分はベタベタの実の能力で作り出した粘液だったので全身に粘液を纏っているトレーボルは火に触れただけで全身が燃え上がったのだ。

 こうして看守棟に入ったバカラは一切自ら手を下すことなく、トレーボル達に完勝した。


 ◇


 地下の交易港に来るドンキホーテファミリーの増援部隊もヒナとヴィオラによりエレベーターを降りた直後に迎撃されていた。


「ヴィオラ王女、疲れたら下がっててもいいのよ?“袷羽檻”!!」

「「「ぎゃああああああ!!」」」


 ヒナ両手を檻に変えて身体の目の前でサークルを作り、両腕を閉じることでエレベーターから降りてくる敵を一網打尽にし、ヴィオラは両目から巨大な涙のクジラを作り出している。


「いえ……さっさと彼らを倒してバカラ大佐の援護に行かないと!!“鋼鉄の涙(イエロ・ラグリマ)・目鯨”!!」

「「「ぎゃああああああ!!」」」


 超人(パラミシア)系悪魔の実、ギロギロの実の能力は視力だけでなく涙を結晶化させて戦うこと出来るので、ヴィオラの生み出したクジラはドンキホーテファミリーを踏み潰した。


「“黒檻”のヒナ、それにヴィオラ様が助けに来てくれた。それに俺は見たんだ。看守棟には“豪運”のバカラが向かったんだ。」

「二人とも強すぎるが、バカラ大佐は大丈夫なのか?」

「俺達にも戦う力があれば…」


 その間、オモチャ達は歯痒い気持ちで物陰に避難していたが、彼等の身体にも異変が起きる。


「まさか…バカラ大佐がもうシュガーを倒したの!?」

「言ったはずよ。運を貯めたバカラは無敵なのよ。あの子に援護なんて邪魔でしかないのよ。」

『ヒナさんには援護しないことこそ最大の援護なの。』


 ヴィオラはバカラと同じような事を言うヒナを見て笑った後、地下にいるオモチャの身体が眩く発光しながら、徐々に人間の身体に戻っていく光景に涙を溢れさせる。


「「「人間に戻ったぁぁぁ!!!」」」

「戦える者は武器を持て、ヴィオラ様と“黒檻”に続け!!ドンキホーテファミリーをぶっ殺せぇぇぇぇぇ!!」

「「「うおおおおぉぉぉぉ!!!」」」


 6年間彼等を縛っていたホビホビの呪いが今解かれたのだ。

 ここにいたオモチャの多くは旧ドレスローザ軍の兵士だったようで人間に戻った彼等はヴィオラを守るように武器を構え、エレベーターから降りてくるドンキホーテファミリー達に6年間の鬱憤を晴らすように猛攻を仕掛ける姿を見て、ヒナは適当な所に腰掛けてタバコを吹かす。


「ここはもう問題なさそうね…でも、“SMILE”工場で爆発が起きてるのはどういうことかしら…ヒナ疑問?」


 仕事を終えたヒナが内部から何度も爆発を起こす“SMILE”工場を見上げていると、看守棟から出てきたバカラに声を掛けられる。


「ヒナさん、無事にトレーボル軍の幹部三人を倒しました。」

「バカラ、ドンキホーテファミリーの幹部三人を相手に全く疲れた様子がないわね。」


 バカラがトレーボル達との戦いにおいて動いたのはトレーボルに触った時のみであるから本当に疲れていない。


「えぇ。本当にただ立ってただけだもの♪全てヒナさんのおかげです。後は“SMILE”工場だけですが…何が起きてるんですか?」

「丁度、SMILE工場から出て来る子がいるみたいだから聞いてみましょうか。」

「はい。」


 バカラとヒナが“SMILE”工場に目を向けた直後、爆発を繰り返す“SMILE”工場の方からゆっくりとメイド服を来た若い女がボロボロになった“SMILE”工場の工場長キュイーンを鎖鎌に変えた右腕で拘束したまま引き摺ってきていた。


「あれはピーカ軍のベビー5と…“SMILE”工場の工場長キュイーン!?何故ベビー5がボコボコにされたキュイーンを引き摺っているの!?」


 キュイーンは身長4mを超える身長と大柄な体格を持ち、トンタッタ族の怪力にも負けない怪力を有する女傑で17歳という若さでSMILE工場の最高責任者となった女傑であるが、幼い頃からドンキホーテファミリーとして活躍してきたブキブキの実の能力であるベビー5ことチンクには手も足も出ずに負けてしまった。

 チンクはヒナの足元にキュイーンを投げ捨てる


「ヴァイオレット、こっちはもう終わったわよ!今は働かせされていたトンタッタ族達が工場で暴れているところよ。」


 目にも止まらぬ速さで動き、見た目に削ぐわぬ強靭な力を持つトンタッタ族にとって幹部ですらないSMILE工場でトンタッタ族の監視にあたるドンキホーテファミリー等、赤子の手をひねるようなものである。


「ヴィオラ様ぁぁぁ!!」

「えっ…!?マンシェリー!えっ…何故貴女がベビー5と一緒にいて、“SMILE”工場を襲ってるの?」


 ヴィオラはヘビー5の肩で自分に手を振るマンシェリーの姿に唖然となる。

 ヴァイオレットとしてトレーボルファミリーにいたヴィオラは当然ピーカ軍のベビー5を知っているから、ドフラミンゴを裏切るような真似をしている事が理解出来ない。


「何っ!?ヴァイオレット…じゃなかった。貴女もファミリーを抜けたんだからヴィオラよね♪私も抜けたからチンクって呼びなさい。」

「えっ…貴女、ファミリーを抜けたの?それに名前なんて初めて聞いたわ…」

「えっ…聞きたいの?いいわ!お兄ちゃんとの運命の出会いを教えてあげるわ!!」

「お兄ちゃん??」


 突然の話に全く付いていけないヴィオラに笑顔で近寄っていくチンクを見て、ヒナとバカラは嫌な予感がして顔を見合わせる。


「ねぇ、バカラ…私、あの子が言ってるお兄ちゃんって誰か分かる気がするわ…ヒナ悪寒。」

「奇遇ね。私もよ…はぁ…」


 ヒナとバカラは、それぞれロビンやペローナのことを思い出して、手当り次第に出会った女性全てに優しくするゴジを思い浮かべて肩を落とす中、ドレスローザ王国地下での戦いは静かに終結した。 
 

 
後書き
次の更新は16日、ゴジ対ドフラミンゴが始まります。 
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