ジェルマ王国の末っ子は海軍大将
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第二章 青年期
第百三十六話
一方でゴジと別れて地下の“SMILE”工場に向かったヴィオラ達は、千里眼を要するヴィオラのおかげで一人の敵ともすれ違うことなく、地下の交易港に到着して積み荷の影に隠れていた。
「ギロギロの実って本当に凄い能力よね。ここまで一人の敵とも会わなかったわ!」
「当然よ。常に360度全四方を見る事の出来る私の能力を前に死角は存在しないもの。」
「ドフラミンゴが欲しがるわけね…ヒナ納得!!」
しかし、問題はここからであり、地下には大きく分けて3つの設備がある。
1つ目はトンタッタ族が働かされている“SMILE”工場。
2つ目はオモチャが働かされている武器や“SMILE”を裏ルートから輸出する秘密の交易港。
3つ目はその二つを監視するトレーボル軍の幹部がいる看守棟。
「ねぇ…ヴィオラ王女。トレーボル、シュガー、ジョーラの三人は間違いなく看守棟にいるの?」
「えぇ。三人ともいるわ!」
バカラの疑問に“千里眼”で看守棟で寛ぐ三人を見つけたヴィオラは頷く。
「今、この交易港にいるドンキホーテファミリーの数は?」
「約100人。」
「バカラ、トレーボル達を倒すのに100人で足りるかしら?」
ヒナはヴィオラの千里眼で見た情報を元にバカラに尋ねると、彼女は強く頷く。
「余裕です。100人分あれば、ゴジ君とでも数分は戦えるはずです。」
「そう……では、私が5分でここを制圧するまで貴女達はここで待機してなさい。いいわね?」
ヒナはバカラの言葉に頷いた後、手袋の袖口をキュッと嵌めて、タバコを咥えて火を付けながら、隠れていた物陰から立ち上がってドンキホーテファミリーの監視の元でオモチャ達が働かされている地下の交易港にゆっくりと歩き出した。
「ちょ……ヒナ准将!バカラ大佐、私じゃなくてヒナ准将を止めないと!?」
「ヴィオラ王女、ヒナさんを信じて見てれば分かるわ…」
ヴィオラはヒナを止めようとするが、逆にバカラに止められてしまう。
「ドンキホーテファミリー!私は海軍本部准将のヒナよ。ここは海軍が制圧するわ。大人しくしなさい!!」
ヒナは交易港に姿を現して堂々と歩いていくと、凛々しく胸を張って高らかに名乗りを上げた。
「「「黒檻のヒナぁぁぁ!!?」」」
「なっ……この島に来たのは“黒麒麟”だけじゃねぇのか!?上のオモチャの家から侵入者の報告は入ってねぇぞ!!」
「誰か……トレーボル様に知らせて来い!!」
ドンキホーテファミリー達はヒナの出現に慌てながらも腐っても王下七武海配下の海賊として名のある海賊や将校達の戦いを乗り越えてきた猛者であり、次々に武器を構えてヒナを取り囲んでいく。
一方で働かされていたオモチャ達は騒ぎに乗じ、慌てて物陰に隠れていくを見てヒナはほくそ笑む。
「トレーボル様が来る前にぶち殺してやる。」
「おいおい……見ろよ……あの体。殺す前に俺たちで楽しもうぜ!!」
ピッタリと身体にフィットする赤いスーツにより身体のスタイルが強調され、大人の魅力の合わさったヒナを下卑た笑みで見つめるドンキホーテファミリー達が一斉に彼女に飛び掛っていく。
「ふふっ……オモチャ達もちゃんと逃げたわね……それよりもこの私を舐めてかかるなんていい度胸ね……ヒナ屈辱!!」
ヒナは自分を取り囲む海賊達が明らかに女である自分を舐めている事に苛立ちながら、両腕を檻に変えて十メートル近く伸ばす。
さらにその腕から地面に向けて蝙蝠の羽根のように檻の格子が生えると、ヒナの両腕は檻の格子で出来た蝙蝠の翼となり、その鋼鉄の翼を羽ばたかせて空へと飛び上がる。
「「「飛んだぁぁぁ!!?」」」
「ただ飛ぶだけじゃないわよ!“蝙蝠羽檻”!!」
ヒナが飛び上がったことで驚き、慌てふためく直下のドンキホーテファミリーに向けて、急降下して鋼鉄の翼を叩き付ける。
「「「ぐべっ!?」」」
翼を叩きつけられたファミリー達は全員が殴り飛ばされてた上、その体は鉄檻で拘束されている。
打撃を与えながら同時に拘束するのがオリオリの実の真骨頂であるが、技の性質上檻に触れたもの全てを拘束してしまう為、仲間との乱戦では彼女の真価は発揮出来ないが、周り全てが敵となれば、彼女に敵はいない。
「撃ち殺せ!!」
「「「おう!!」」」
ドンキホーテファミリーによる銃撃の雨がヒナに向けられるが、放たれた銃弾は鋼鉄の強度を持つヒナの体に当たるとカンカンッという音を立てて足元に転がる。
「私の体は鋼鉄。銃弾なんて効くはずもない……“禁縛の鉄錠”!!」
「「「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」」」
ヒナは翼だった腕を元に戻すと次は両拳のみを鋼鉄に変え、さらに武装色の覇気を纏って硬化させることで黒鉄色に輝く両手で銃弾を放ったドンキホーテファミリーに襲い掛かると殴り飛ばしていく。
「「「に……逃げろぉぉぉ!!」」」
ドンキホーテファミリーはヒナと自分達との間にある圧倒的な実力差に気付き、地上へ登るエレベーターやトレーボルのいる看守棟を目掛けて逃亡を始めるが、ヒナは両手を地面に当てる。
「逃がす訳ないでしょう?覚醒した悪魔の実は周りにも影響を及ぼす。“黒檻の陣”!!」
覚醒したオリオリの実の能力で地面から無数の黒い鉄柱が伸びて逃走するドンキホーテファミリーの逃げ場を封じる。
「えっ……逃げ場が……ない!?」
「巨大な檻に閉じ込められたぁぁ!?」
この場にいるドンキホーテファミリー全員を一網打尽にする四方を天井まで伸びる黒い鉄柱が完全に覆われたことで絶望する彼等の悪夢はまだ終わらない。
「まだ終わりじゃないわよ…」
「「「えっ」」」
天井まで伸びた黒い柱が一斉に真ん中に倒れてガァンという音が地下に響くとファミリーを囲う黒檻はピラミッドのような四角錐の形となる。
「窮屈羽檻!!」
ヒナは黒檻のピラミッドに向けて伸ばした右掌を握り締めると、その四角錐の底辺となる四角形が急速に真ん中へ収束していく。
「「「ぶべしっ!!」」」
ピラミッドの中にいるドンキホーテファミリーは中心で押し潰されて気を失いその体に黒光りする鉄檻が嵌められている。
ヒナは腕時計を確認してから口に咥えていたタバコを吹かす。
「ふぅ……丁度5分ね。」
こうして戦い始めて僅か5分という短時間で地下の交易港でオモチャの監視を務めるドンキホーテファミリーはヒナのオリオリの実の能力で鉄檻を嵌められて拘束されて全滅した。
「凄い……!!」
「これが“黒檻”のヒナよ。ヒナさんが最も得意とするのは一対多数。彼女の攻撃を受けた者は全て黒檻で拘束されてしまうから、彼女の戦いにおいては援護しない事こそ最大の援護なの。」
バカラはヒナが拘束したドンキホーテファミリー達の体に触れながら、誇らしげにヴィオラにヒナの強さを語る。
触れたもの全てを緊縛してしまう強力すぎるヒナの黒檻は範囲内にいる味方をも巻き込んでしまうので、援護はむしろ邪魔にしかならない。
「バカラ!オモチャの家を繋ぐ各エレベーターが降りてきてる。すぐに援軍が来るわ。さっさと運気を貯めて早く看守棟に行きなさい。ヒナ命令!!」
「はい!ヴィオラ王女はヒナさんの傍にいてください。一番安全です。」
バカラは中央に集められて身体を鉄檻で拘束された上で気を失う約100人のドンキホーテファミリー全員の体に触れてから、看守棟に入って行った。
「えっ……バカラさん!一人なんて無茶よ!もう……二人とも勝手すぎるわ!!」
「ちょっと!ヒナ准将、どういうつもりなの!?」
ヴィオラは看守棟にバカラ一人を行かせたヒナに食ってかかる。
「どういう意味?」
「トレーボル達は強力よ…私たち三人で力を合わせて戦いましょう!!」
トレーボルはドフラミンゴの右腕と呼ばれる程に強く、シュガーやジョーラの能力は厄介な事を誰よりも知っているヴィオラはバカラ一人に戦いを委ねるのは無茶である。
トレーボル軍も能力者三人に対して、こちらも能力者三人であるから協力するべきだと訴えている。
「ヴィオラ王女、ジェガートで最強は誰だと思う?」
「そんなの……ゴジ中将でしょう?」
考えるまでもないヒナの質問に対して、ヒナを前にして申し訳ないとは思いながらもヴィオラはゴジだと即答するが、ヒナは薄く笑う。
「えぇ。この海で住む者の当然の常識よね。否定はしないわ…もし看守棟に向かったのがゴジ君だったら、たった一人でピーカ軍に挑み、マンシェリーを助けに行ったゴジ君と同じように貴女は何も言わずに見送った。違うかしら?」
ゴジが一人でマンシェリーを助けると言った時、ヒナ達は慌てたが、ヴィオラはゴジであればピーカ達を倒してたマンシェリーは大丈夫だと、盲目的にただ安心した。
「っ……!?ごめんなさい…私…」
ヴィオラは決してヒナやバカラを軽んじている訳ではないが、この地下の制圧組からゴジが抜けた事で彼女には言い知れぬ不安が襲っていたのだ。
だからヒナ達の作戦に一々文句を付けたのだと気付いてヒナの言葉にヴィオラは否定すら出来ずに衝撃を受ける。
ゴジがいるというだけで助けられる者に安堵を抱かせるという彼の目指すべきヒーローの在り方であり、ゴジと共に戦い、傍で成長を見守ってきたヒナはヴィオラの抱く感情を否定しない。
「怒ってるわけじゃないの。それこそがゴジ君がこれまで頑張ってきた証だもの。私とバカラも強がってはいるけど、やはり彼がいないと心細いわ……。」
「ヒナ准将……」
ヒナはゴジがいなくなって不安に襲われるヴィオラを勇気づける為に取っておきの秘密を教える。
「そんな貴女にいい事を教えてあげるわ。うちにはある条件を満たせばゴジ君ですら敵わない最強の海兵がいるのよ。」
「えっ……!?まさかバカラ大佐が……」
ヴィオラは驚いた顔を浮かべて、ヒナの言いたいことを察してバカラの入ったトレーボル達の待つ看守棟を見つめた。
「そう。“豪運”の名は伊達ではないの。今のバカラは無敵よ。ヴィオラ王女、間もなくエレベーターが到着する。私はドフラミンゴの王下七武海称号剥奪の証拠となるこの場を何がなんでも守らなけばならない。私を手伝う気があると見ていいのね…ヒナ期待♪」
「もちろんです。ギロギロの実のもう一つの力を見せてあげるわ。」
ヒナとヴィオラは町の各地に設置されたオモチャの家に通ずるエレベーターから地下に向かって敵が降りてきているのを見上げながら、気合いを入れ直した。
後書き
次の更新は14日です。
次回は100人分の運気を貯めたバカラが無双予定です。
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