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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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アイングラッド編
追想編
  狂気の戦い、死神は怒り、終焉をもたらす

 
前書き
VSラフコフ 

出来ちゃたので、あげちゃいます。 

 





―《ラフィン・コフィン討伐作戦》、それはアインクラッドの中で行われた最も悲惨な戦い。

プレイヤー達を助けるためにこの地に降り立った彼が、初めてそれを忘れ、自らの正義のために血を被った戦いでもあった。

これはその記録である―――




______________________________________






56層 聖竜連合本部



「――諸君、まずはご足労感謝する」

今回の作戦を指揮する聖竜連合の幹部が集まったプレイヤー達を労う。

総勢50人ものプレイヤー達。そのどれもが厳しい顔つきだ。

無理もない、これから立ち向かうのは強力なモンスターではなく同じプレイヤーのもと、それも殺し合いに行くのだから……。


「知っての通り、これから向かうのはただの犯罪者ギルドではなく、最悪の殺人ギルドのもとだ―――ヒットポイントを全損をさせるのも、やむおえなくなるかもしれない……」


その言葉にほぼ全員のプレイヤーが俯く。


「だが、我々はやらなければならぬのだ。我々が攻略を急ぐのはなんのためか?全プレイヤーの現実への帰還、それが悲願だろう。中層や下層に残っているプレイヤー達は我々に期待をしている。ならば、その者達の危険は取り除くべきだ。……例えそれが殺人であろうと」


聖竜連合のメンバーにしちゃ立派なご高説だ。ボス戦でもその精神を発揮してはくれぬか。


「……覚悟が揺らいだ者は帰ってくれて構わない。この戦いでも死ぬ可能性は大いにある」


だが、誰一人帰ろうとするものはいない。


「やれやれ……」


「どうしたんでぇ?『紅き死神』ともあろうやつが」


「ここにいる全員、馬鹿ばっかだと思っただけさ」


「そうゆうおめえも、その一員だろうが」


「……俺も含めて馬鹿ばっかだ」


かかか、と笑うバンダナ侍に肘を一撃入れて黙らせると、今度は全身真っ黒な剣士が話し掛けてきた。


「なあ、あれアスナじゃないか?」


「うん?……あ、ホントだ」


「……………」


「なんだ、心配なのか?」


「いや、心配もそうなんだけどさ……」


慌ててそっぽを向き、否定するキリトをひとしきり笑ってから会話を続ける。


「で、どうなんだ?最近は」


「い……いや、取り合えず普通に世間話とかする間柄かな」


「ほお、お前らが世間話か。随分と仲良くなったな」


「なんか……最近、妙に態度が丸くなったような気がするんだよな……」


ちなみに、原因はコイツだったりする。あんな美人に好かれてんだ、もっと自信もてよ。

ついでに、俺もアスナからのメッセージが多くなった。

以前は攻略会議に遅れるな、サボるなetcの詰問メールだったのだが、最近はそれに加え、恋愛相談(?)絡みのメールが増えてきた。

相手のことは巧みに隠しているが、態度でまるわかりだ。

クラインも交えて馬鹿話で緊張を紛らわす。


「では、諸君。――出陣!!」


号令した割りにはガシャガシャと点々バラバラに出ていくが、今は別に気にすることではない。先が思いやられはするが……。


「……おい、キリト」


俺はキリトにしか聞こえないぐらいの小さな声で話し掛ける。


「なんだ?」


「ちょっと、アスナんとこ行ってやれ。あいつ誰とも話して無かったぞ。ガチガチなままじゃ、ヤバいかも」


「……俺だけで?」


「もち……そうだなぁ、生き残ったら2人を特別ディナーへご招待しよう。知り合いに掛け合ってやる」


「……わかった」


キリトが人混みの間を掻き分けて目的の人物のところにたどり着くのを見届けると、俺は視線を前に戻した。

討伐隊の面々は各々別の会話をしているが、集団の空気とは拭えないもの、不安という空気が重くのし掛かっていた。

その不安のせいもあってか、俺達は予想していなかった事態に陥ってしまった。




______________________________________







情報の漏洩。考えうる最悪の展開だ。ラフコフのアジトは密告者による発見だった。それと同じようにこちらにも密告者が出てしまったらしい。

ばれている可能性を考えて無かったこちらにも落ち度があるとはいえ、状況は悪かった。

一番の原因は殺人への忌避感の差だ。

ネットゲーマーでしかない彼らにそこまで求めるのは酷だと思い、いざというときは俺が殲滅するしかないと覚悟していたが―――


「………っ!たく、そろそろしつこいぜお嬢さん!」


「フフ、『お嬢さん』って……お世辞が上手いのね?」


「じゃ、若造りのおばさん」


「……アリガト、ね!!」


ヒュンッと長槍が俺の首が在ったところを薙ぐ。


「あっぶな。もしかして墓穴だったり?」


「女に『おばさん』は失礼よ。いくつでも」


「……覚えとくよ」


キィン、と槍を上に弾き大きな隙を作らせる。


「きゃ!?」


「って、悲鳴は若いな!?」


腰から麻痺毒の短剣を引き抜き、軽く切りつける。女のレッドプレイヤーはその場に崩れ落ちた。

次にストレージから鎖を取り出すと、壁際に女を持っていって他の拘束したやつらと一緒に放置する。


「さて……」


枝道で奇襲を受けた攻略組は大分盛り返し、奥の広くなっている安全地帯まで押し返していた。
だが、ラフコフの反撃は厳しい。

さっきのように拘束して何も出来ないようにしなければ、死ぬまで攻撃してくる。


(………殺るしか、ない、か……)


1人でも多くの人々を助けるためにここにいる人間を殺す。その矛盾した行動について、俺はまだ短い人生の中で納得のいく答えを出せていない。故に、忌避感は完全に拭い去ることは出来ていない。

近くで討伐隊のプレイヤー1人がが3人に囲まれている。



――闇に紅蓮の閃光が走った。



首のクリティカルポイントに攻撃が当たり、消滅するラフコフのメンバー。


「あ………」


死を免れたプレイヤーは俯いた俺を申し訳なさそうに見ている。


「……HPを回復させて、そこで拘束されている奴らを見張っててくれないか?」


「……分かった。すまない」


名前も知らない血盟騎士団のプレイヤーを見送ると、俺はこの戦いを終わらせるために戦場へ飛び込んでいった。






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Side アスナ


敵の繰り出す両手剣の連続技を掻い潜り、間合いを詰めると歯を食いしばり強烈な突きを返す。
相手のHPはそれで危険域に達しているが、武器を構え直すと突進してくる。


「…………っ!」


横にステップし、その単発攻撃をかわすと、止めをさそうとするが、どうしても腕が動かない。

相手もそれを知っているので、執拗に襲いかかってくる。

しかし、こちらが迂闊に手が出せないにも関わらず、回避だけ続けるという行動はアスナにとっても楽ではなかった。

ついに何度目かの攻防で、細剣を頭上高くに弾かれてしまう。


「オラァ!!死ねヤァァァ!!」


赤黒いライトエフェクトを纏った両手剣を横からの強烈な攻撃が弾いた。


「おあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


アスナを助けたのは全身真っ黒な装備に身を包んだよく知っている人物だ。


「キリト、君……」


「アスナ、大丈夫か!?」


彼の顔は必死そうで、急いで駆けてきてくれたのがありありと分かった。

こんな状況なのに、体がかぁと熱くなる……って、本当にそんな場合じゃないわよ!!


「大丈夫。来るよ!!」


しかし、先程の両手剣使いは奥に引っ込んで、新たなプレイヤーに入れ替わる。が、


「……出やがったな、PoH」


「おいおい、ご挨拶だな黒の剣士。数ヶ月ぶりの再開だろ?cool過ぎやしねえか?」


「誰がお前と再開して喜ぶか。そんな変人は1人しか知らん」


「……つれねぇな、相変わらず。Wow……俺も同じ奴のことを考えてたぜ。そういえば奴は何処だ?」


「ここだ、Facking野郎」


PoHが左右に気を散らした刹那、後ろから致死の斬撃を放ったのはレイだった。


「……ひゅう、中々dangerousな登場だな紅き死神」


「ははは、悪かったな。ひと思いにバッサリ出来なくて。……2人とも、向こうに幹部がいる。そっち頼むわ」


「ええ……気をつけて」


「分かった」


戦闘力的にPohと1対1(サシ)で戦えるのはレイとキリト位だ。彼に任せるのが妥当だろう。


「急ごう」


「ええ」


対峙する2体の死神に背を向けると、苦戦する本隊と合流した。





____________________________________________






Side レイ


「ククク、やはり怖いか?自分の中の修羅を見られるのが」


「まあな……」


お互いに苦笑しあうと、直後にガラリと雰囲気が変わる。


「さてと、楽しい楽しいIt´s show timeといきますか」


「……征くぞ」


周りの喧騒が消え、互いの周囲に殺気が充満し始める。

PoHのダガーがピクリと動いた瞬間、レイの大太刀は彼の首に向かって振られていた。


「チッ……」


PoHは攻撃から素早く防御に切り替えるが、威力は完全に無効化出来るわけではない。

次の垂直振り下ろしを防いだ時にはHPバーが七割に食い込んでいた。

ソードスキルを使わない無制限の連続攻撃による力押し。

反撃するのも覚束ず、後退を強いられる。


「く、この野郎……」


「そろそろ終るぞ」


ここでソードスキルを発動、刀を振り下ろした体勢からかくんっ、と刀が振り上がり、PoHのダガーを弾く。


そのまま腰の麻痺毒の短剣で斬りつけようとするが、PoHはニヤリと笑うと頭上のダガーをライトエフェクト付きで振り下ろした。


「残念だったなぁ?」


それは短剣ばかりではなく、俺の左腕の肘から下を切り落とした。不快な痺れに顔をしかめるが、奴には1つだけ誤算が在った。


「確かに、残念だが―――」


体勢を低くし、回転蹴りでPoHの両足を払う。


「ぐっ!?」


バランスを崩したPoHを片腕のみで畳み込み、押さえ付ける。


「――腕を切り落とされたぐらいじゃ俺は動揺しない」


チャキ、と大太刀の刃をPoHの首筋に突き立て、そのまま押し込もうとするが、瞬時に身を翻すと翔んできたピックを弾く。


「……決着はまた今度にお預けだ。まぁ、今回はテメェの勝ちってことにしとくか」


「………ッ、待て!!」


だが、5人のプレイヤーに行く手を阻まれ、PoHは易々とその場を離脱した。


「クソッ!」


邪魔をした5人を一瞬で無力化し、被害状況を確認する。

広めの安全地帯での戦闘は主に入口付近で起こっている。

俺を含めた何人かは奥まで入り込み、遊撃をしていたが、後は討伐隊の本隊と交戦している集団だけのようだ。

状況は芳しくない。討伐隊は今だに殺人をする事への忌避感を感じている。

そんな中、ついに目の前で討伐隊のプレイヤーが1人、消滅した。




――何かが切れた。





___________________________________






Side アスナ

2時間に及ぶ長い戦闘を終え、アスナは思わず、床に座り込んで自分を抱き締めた。


――生きてた。


今いち実感が湧かないのはボス戦とは違った、異質な戦いだったからだろうか。

周りのプレイヤー達もひどく疲れた様子で座り込んでいる。

壁際には捕縛されたレッドやただ震えているレッド達。

縛られているならともかく、何故そうでない者達まで動かないのか?

アスナが顔を挙げると、討伐隊の先頭に佇む1つの人影が見えた。

ただ、1人だけポツンと立って動かない。やがて、大きな刀を背に戻すと無言で出口の方へ歩き出す。アスナとその近くに座り込んでいるキリトの側を通りすぎる時も全く速度を緩めなかった。

そして、表情は―――

彼の進路にいるプレイヤーは怯えたように道を譲る。

それだけのものをさっき、見せつけられたのだ。

彼の本隊への参戦は一瞬にして戦況をひっくり返した。

鬼神のような表情で刀を振るって暴れる恐怖の権化にラフコフのプレイヤーは次々と戦意を喪失していった。

同時に討伐隊は悟った。

――これは、俺達が触れてはいけないものだ、と。

この戦闘により以降にこのような討伐作戦が提案されることはなかった。

ただ、謎の集団による犯罪者の捕縛、俗に言う《レッド狩り》の件数が増えたのはここからだ。

その1人は確実にレイであり、彼がレッドを殺し回っているという間違った噂が流れ始めたのもこの日からだった。





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SAO事件収束の一週間後、




「ぐぬ………」


どさりと座り込んで、荒ぶる心臓の心拍数を整える。

現在は筋力を取り戻すためのトレーニング中だ。


「失礼します、隊長」


「ああ……、どうした藍原。顔色悪いぞ」


入ってきた自分の副官は冷静沈着、ついでに冷酷無悲のクールな女性だ。


「統合幕僚長閣下、及び総帥閣下より召喚命令です。恐らく、政府からの指示かと……」


「……あの税金泥棒どもめ。わざと俺の苦手なやつ差し向けやがったな……」


副官に下がるよう指示すると、よろよろと立ち上って出かける支度を始める。

《ラフィン・コフィン討伐作戦》に代表される俺の犯した殺人罪は合計12件。死刑もいいところの大罪だ。

それを俺は馬鹿正直に報告したので、その件についての何らかの処罰が下るのだろう。




だが、俺は後にもこのことを後悔したことはなかった。

そしておれは新たな戦場(ゲーム)へ旅立つ。



 
 

 
後書き
さて、いかかがでしたか?

最後のはALOに続く間話ですが、メインはラフコフでお送りしました。

次回からフェアリー・ダンスが始まります。近所の野良犬さん、お待たせしました!セインの出番がやっとです。(去年の10月に投稿を頂きました)

基本的なスタンスではレイ視点で、パートナーはセインです。

キリト視点は……ちょっとあります。あと、キリトの方にもオリキャラを1人配置します。

オリキャラ(ALO,GGO)まだ間に合うよ!賑やかな方が楽しいからどんどん下さい。
感想もくれると嬉しいナ……。

では、 
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