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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第26話

 
前書き
精神と時の部屋って悟空達は平然としてるけど普通なら気が狂う環境だよな…寧ろ良く1ヶ月もいられたな… 

 
悟林の発案によって未来悟飯の修行相手として最低限の力を得るために超サイヤ人への変身を会得することに。

悟飯はとにもかくにも超化するために、必死になって気を高めている。

「違うぞ過去の俺、それじゃあただ気を高めているだけだ。超サイヤ人になるための条件は未来の姉さん曰く、高い戦闘力と穏やかな心と怒りだ。俺は過去にクリリンさん達を人造人間に殺された時のことを思い出しながら姉さんに教えてもらった変身のコツで変身出来た。」

悟空も未来悟飯も大切な物を失ったことによる怒りで超化が出来るようになった。

しかし元々の性格が温和な悟飯。

それでなくとも、いきなりキレろと言われても難しい。

「そ…そんなこと言われても…」

「悟飯、背中の…肩甲骨辺りに気を集中してざわついたら集中させた気を爆発させてみて?」

悟林が超化に苦戦している悟飯の肩甲骨に触れながら言うと悟飯は一気に気を集中させる。

「はああああ…!」

悟飯の目付きが鋭い物になり、オーラも金色に変化し始めるものの、途中で気が霧散した。

「おー、中々やるじゃん悟飯」

「む、難しいよお姉ちゃん…」

「大丈夫だよ、初めて試した時の私よりずっといい線行ってたよ。私なんか最初は界王拳で戦闘力を底上げして高めた気を背中に集中させてたんだけど、悟飯は界王拳使えないから、やっぱり怒りでS細胞を刺激させるしかないんだろうね」

「何だそりゃあ?」

聞き慣れない単語に悟空は不思議そうに見てくる。

「神龍から聞いたんだけど、超サイヤ人になるには高い戦闘力と穏やかな心の他にS細胞を強く刺激する怒りが必要らしいの、私達サイヤ人は怒ると肩甲骨辺りに気を集中させる習性があるみたいなんだ。私は界王拳で気を高めて強引に変身したんだけどね。はい、悟飯怒って」

「お、怒ってって言われても…」

「じゃあ、ナッパにピッコロさんが殺された時のことを思い出してみなよ。それかフリーザに私が殺された時のこととかさ」

未来悟飯の表情が複雑そうになる。

フリーザまでは共通した歴史なので、どちらも未来悟飯にとっても嫌な記憶だ。

「あ、あの時の…」

「過去の俺、俺達サイヤ人は超サイヤ人になった時が最も強くなる。超サイヤ人になれなければ守りたいものも守れない。俺達が闘っている相手はそれほどの次元の相手だ。敵は冷酷な殺人鬼だってことを忘れるな!父さんやピッコロさんも姉さんも殺すだろう。君の大切な物は奴にとってゴミ屑でしかない。あの時の怒りを、悔しさを思い出すんだ!」

「は、はい!はああああ…!!」

悟飯が過去の師匠の死や姉の死を思い出しながら怒りを募らせていく。

「そうだ!それでいい!怖がらなくて良い。全てを解き放つんだ!怒りを感じることは悪いことじゃない。手段として利用するんだ。」

悟飯の髪が逆立ち始め、オーラが金色に変化し、髪が黒から金色へと交互に変化する。

「悟飯!もっと気を上げるんだ!」

悟空が言うと悟飯は気を高めてそのまま気を解放した。

「うああああ…!!」

「よーし、早速超サイヤ人になれたじゃない!後はそのままゆっくりと興奮を抑えて!」

「うううう…!はあっ!」

黒髪に戻った悟飯。

悟林は膝をついている悟飯の背を強く叩いた。

「よーし、悟飯!それでいいの!後は未来の悟飯と一緒に入った時に練習しとけばいいから!」

少しだけ超サイヤ人になれたのだからもう今はこれで充分だ。

後は未来悟飯と一緒に頑張ってもらおう。

一方精神と時の部屋ではベジータは既に超サイヤ人の壁を超え、更なる鍛練に励んでいたが、トランクスの方はあまり良くない。

トランクスの戦闘力自体はこの部屋の過酷な環境もあって大幅に上がっている。

今なら未来の人造人間を瞬殺することなど容易に出来る程だが、トランクスはベジータが到達した姿に至れずにいた。

「(超サイヤ人の壁…早く超えなくては…)」

ベジータが先に到達したことにより、焦りが出始めているトランクス。

「(落ち着け…焦るな…)」

未来悟林の教えを思い出し、瞑想をして自分の中にある力を感じ取ろうとする。

父であるベジータと同じようにだ。

ここに来てからずっとベジータの行動を見ていたトランクス。

入る前もそうだったがベジータはただ何かを考えている様な感じだった。

何もせずじっと何かを見つめていた。

そして何かに気付いたような反応をしたかと思えば激しい修行をし始めた。

“馬鹿でもいないよりはマシだったか”

そしてこの部屋に入って2ヶ月後にこの言葉の後に超サイヤ人の壁を超えた姿を見せた。

父親の沈黙と未来悟林の教えを照らし合わせると、トランクスはようやく超サイヤ人の壁を超えるための入り口に立つことが出来るようになったのだが、焦りがそれを邪魔してしまうのだ。

「おい…」

そんな時ふと声をかけられ、トランクスは目をゆっくりと開いて視線を声の方へと向けた。

そこには何か言いたそうにしているベジータが立っていた。

「と…ベジータ…さん…?」

この部屋に入ってからまともな会話などしていなかったのに、まさかベジータの方から話しかけてくるとは思わなかった。

「そんな様では超サイヤ人を超えることなど出来んぞ」

「え?」

トランクスの反応にベジータは溜め息を吐く。

「表面だけ落ち着いていても意味はない。超サイヤ人を超えたければ余計なことなど考えるな。強くなることだけ考えるんだな」

「は、はい…」

「…貴様にはサイヤ人王族の血が流れているんだ。何時までもあんな下級戦士のガキである悟林の下にいるんじゃない」

その言葉にトランクスは目を見開く。

「え…?」

「気付いていないと思っていたのか?もう純粋なサイヤ人は俺かカカロットしかいない。俺達のどちらかのガキでなければ超サイヤ人になれるわけがないだろう!ブルマの血を引いてるんだ、どおりでサイヤ人でありながら黒髪じゃないわけだぜ。」

ベジータはそのまま修行に戻り、残されたトランクスは父親の姿を見つめていた。

「父さんが…俺のことを気付いてくれていた…」

今まで言わずにいた自分の素性だが、ベジータは気付いてくれていた。

たったそれだけだが、トランクスにとっては嬉しかった。

“確かに良い人ってわけじゃないけど、良い所もあるんだ。自他共に厳しいから最初は苦労するかもしれないけど…あの人の誇り高さや純粋な姿勢を私は誰よりも尊敬している…あのブルマさんが伴侶に選んだ人だ。信じろトランクス”

未来悟林から未来悟飯や未来ブルマが言わなかったベジータの過去のことを聞いてショックを受けていた自分に未来悟林が自分の頭を撫でながら言ってくれた言葉を思い出した。

「そうだ…父さんの言う通りだ。ここは外とは時間が違う…俺達の時代や外とは違って余裕があるんだ…」

トランクスは深呼吸をすると瞑想を再開し、意識を自分の奥深くに眠る力を探り始めるのであった。

その表情にはもう焦りなどなかった。

しばらくするとトランクスは目を開け、立ち上がると超化して超サイヤ人となり、更に気を解放した。

「これが…悟林さんが俺達に到達させようとしていた超サイヤ人を超えた姿…」

未来悟林が死んでから数年経ち、ようやく到達出来た。

もっと早くこの姿になることが出来ていればと思うが、今は悔いている場合ではない。

この姿は確かに凄まじいパワーだがどこか腑に落ちないところがある。

ベジータもきっとそう感じており、だから壁を超えた今も厳しい修行をしているのだ。

「…きっと、まだ強くなれるんだ…俺もまだまだ強くなれるはず…時間はまだある。やってやる……悟林さん、俺…もっと強くなります…そして悟林さんの大事な物を守り続けます…だから安心して見ていて下さい」

トランクスは亡き未来悟林に誓うように言うと、更なる強さを求めて2人のサイヤ人は更に過酷な修行に打ち込むのであった。

混血なだけあり、成長速度が凄まじいトランクスは相当な勢いでベジータに迫る戦闘力に成長し、それによりトランクスを認めたのか、少しずつベジータの対応も柔らかい物になっていく。

認めた存在の名前しか呼ばないベジータがトランクスの名前を呼んだり、組み手で気絶したトランクスを乱暴にではあるがベッドにまで運んだりするなど、ベジータからすればかなり優しい対応である。

少しずつだが、ベジータとトランクスは歩み寄れているのかもしれない。

「トランクス、未来で貴様とカカロットの息子を鍛えたのは悟林だったな?」

「はい」

「そうか、貴様は以前、悟林のように強くなりたいと言っていたが、強くなりたいのなら悟林を目標にするのは止めろ。貴様の知っている悟林の力は人造人間に殺される前の物だ。死んだ奴の力などいつか超えられる。そんなことで自分の限界を作るな、貴様の師だった悟林は少し強くなったくらいで満足するような奴だったか」

「…いいえ、常に…常に上を目指していました」

「ならば貴様も上を、ナンバーワンを目指せ。尤も、この俺がいる限り、その座につかせる気はないがな。貴様はサイヤ人王族の血が流れているんだ。せめて下級戦士一族のあいつなど足元にも及ばないくらいに強くなってみせろ」

「父さん…はい!」

そして外では悟林達が時々組み手をして天界でベジータ、トランクスを待ちながら、もう直ぐ丸1日が過ぎようとしていた。

突然膨れ上がった気に休んでいた悟林達が感覚を研ぎ澄ませる。

「この気はピッコロさんだね…闘っている相手の気は感じられないからセルじゃなさそう。恐らく人造人間だと思う」

セルのあの気は一度間近で感じると絶対に間違えたりはしない。

「…そんなっ!ピッコロさん殺されちゃう!」

「駄目だ!」

助けに向かおうとした悟飯を未来悟飯が強引に止める。

「どうして止めるんですか!」

「今の君は超サイヤ人の変身が完璧じゃない!それに君が行ったところでピッコロさんの足を引っ張るだけだ!」

「取り敢えず落ち着け悟飯。今のままじゃレベルが違いすぎる…」

「きっと、もうすぐベジータさんとトランクスさんが出てくるよ。正直言って助けに行っても私達が足手まといになるだけだよ」

悟空達でさえレベルが違うと言えるのだから今の悟飯にどうにか出来る次元ではないのだ。

悔しげに拳を握り締める悟飯に未来悟飯は屈んで目線を合わせた。

「悔しいなら、強くなろう。人造人間やセルにも負けないくらいに。今はピッコロさんを信じよう」

「…分かりました」

悟飯が落ち着いたことに悟空は安堵して扉を見つめる。

「(…まだかベジータ…!やっぱ超サイヤ人を超えるのは無理なのか…!?)」

「(2人共…信じてるよ)」

悟林は今も部屋で修行している2人を黙って待つのであった。

途中でセルの気が動き出し、2人が出てこないままセルの気が大きくに膨れ上がった。

人造人間のどちらかが吸収されたとしか思えない。

ピッコロが既に倒され、天津飯が気功砲を撃つ。

けれど一発撃つごとに、どんどん天津飯の気が落ちていく。

どう考えても並みの減り方ではない。

こんなに急激に減らし続けては命が危ういのに、それでも天津飯は撃ち続け、ついには力尽きて動かなくなった。

悟空が瞬間移動で天津飯を、そして辛うじて生きていたピッコロを助け出した。

ピッコロ達に仙豆を食べさせて悟空からセルのことを聞くと空気が重くなるが、ようやくベジータとトランクスが部屋を出たようで、全員が部屋の前に向かう。

悟林達が部屋から出てきたトランクスとベジータを出迎える。

「どうもすみません。お待たせしました」

出てきたトランクスを見て、悟林は少し驚いた。

明らかに1日前とは髪が長くなり、身長が伸びている。

たった1日…いや、精神と時の部屋にいたから1年経っているのだからその過程で成長したと思われる。

顔つきも部屋に入る前とは全然違う。

「本当に待ったぞ~」

「父は中に入って2ヶ月ほどで既に超サイヤ人の限界を超えたようでしたが…それでも納得がいかないらしくて今まで時間がかかってしまったんです…」

「トランクス!余計な事は言うな!」

ベジータがトランクスの名前を呼んだことから悟林はトランクスとベジータの距離が縮まっていることに気付いた。

悟林はトランクスを手招きすると不思議そうにしながらも彼の方から寄ってきてくれた。

「修行もそうだけど、お父さんと仲良くなれたんだね」

「どうでしょうか…仲良くなれたかは分かりませんが…少しだけ…父さんのことが分かったような気がします……父さんを信じて良かったです」

トランクスがベジータと早く歩み寄れたのはサイヤ人の性質を強く持った未来悟林が最初の師匠だったのもあるし、未来悟林から前以てベジータのことを詳しく聞いていたと言うのも大きかった。

“地球人の常識とサイヤ人の常識を一緒にしちゃ駄目だぞ”

この一言のおかげである意味価値観の違いから自分とベジータはあまり衝突しなかったのだから未来の師匠に感謝である。

「本当に強くなったねトランクスさん。背や戦闘力だけじゃなくてたくさんたくさん大きくなった」

「ありがとうございます、悟林さん。悟林さんにそう言ってもらえると自信がつきますよ」

微笑むトランクスに悟林も満面の笑みを返した。

「上手く行ったんだなベジータ」

「分かるよベジータさん。レベルの桁が違うことにさ、期待して良いんだよね?」

「さあな…だが、貴様らがこれから中に入って特訓しても無駄になる…この俺が全てを片付けてしまうからだ。セルも人造人間共も…」

「な、何ですって?」

未来悟飯がベジータの言葉に驚く。

「オラはさっき17号って奴を吸収して進化したセルをチラッとだけ見てきたが…とんでもねえ化け物だったぞ」

悟空がそう言ってもベジータの余裕の笑みは変わらない。

それだけ超サイヤ人を超えた自分の力に自信があるのだろう。

「ちょっとー!みんなここにいるー!?」

「ブルマさんの声だ!」

ブルマの声に全員が外に出ると、ブルマがカプセルのケースを持って待っていた。

「いたいた!」

「ブルマ!何でここに?」

「クリリン君に聞いてきたのよ。みんなここだって…ハッ!?」

悟空の後ろにいるトランクスの姿を見るとブルマは驚く。

ブルマからすれば最後に会ってから数日しか経っていないのに大きく成長した未来の息子に驚く。

「ねえねえちょっと!あんたトランクスじゃないの!?そうでしょ!?」

「え…ええ」

「何で髪型が変わってんの!?鬘!?あらー!?背も伸びてない!?」

鬘はないだろうと悟林は思ったが、何も知らないブルマからすれば仕方ないのだろう。

「あ…こ、ここには不思議な部屋があってそこでの1年は外のたったの1日なんです…その部屋で俺と父さんは修行して…」

「へえ…!ねえ、でもそのわりにベジータは髪の毛伸びてないじゃん」

そう言えばそうだ。

悟林もベジータを見るが、全然伸びている気配がない。

ああいう髪型だから伸びれば直ぐに分かりそうなものだが、そもそも悟空といいベジータといい、伸びたら大変そうな髪形だ。

尋ねられたベジータはどうでも良さそうに質問に答える。

「純粋なサイヤ人は頭髪が生後から不気味に変化したりはしない…」

「へ~」

「生まれた頃からその髪型なんだ。私も生まれた時からこの髪型なんだよねー。私はどうやらサイヤ人の血が濃いみたい」

「なるほど、どおりでオラも全然変わらねえわけだな」

「そんなどうでもいいようなことを喋っている時ではないはずだ!一体何しに来たのだブルマ!!」

ベジータの苛立ちにブルマはあっけらかんとした顔をしながらケースを開けて1つのカプセルを取り出した。

「そうそう。ほら、ベジータに頼まれて作ったその戦闘服さ、凄い防御力高いじゃない。だからみんなの分も作らせてさ、持って来たってわけよ」

カプセルを投げると大型のケースが出た。

ブルマが持ってきた戦闘服を悟林達は早速着る。

悟林のみブルマに引き摺られて別の場所で着替えさせられたが。

「久しぶりだね、この服。気のせいかナメック星の戦闘服より着心地がいいよ」

これは悟林達が着ることを前提に作られた戦闘服だ。

大勢が着ることを考えているフリーザ軍の物とはフィット感がまるで違う。

因みに悟空とトランクスは初めて袖を通す戦闘服の軽さ、動きやすさに驚いた。

「さっきも言ったが…貴様らがその服を着ても無駄だ…。活躍の場がない」

戦闘服を着終えたベジータが悟空と悟林に向かって言う。

「おめえがセルを倒しちまうからだろ?そんならそれが一番いいさ」

「もしセルや人造人間が倒されても超える相手は確実にいるからね」

2人の言葉にベジータは何も言わずに笑うだけだった。

「さあ行くか」

「オラの瞬間移動で連れてってやる」

「ふざけるな、貴様の力なんぞ借りはしない」

帰ってきたのはベジータらしい返事。

悟空もそれが分かっており、ベジータは1人神殿から飛び出すと下界へと降りていく。

「気をつけてねベジータさーん!トランクス君とブルマさんのためにもねー!」

「もーこの子ったらやあねー」

「ブルマさん、顔が緩んでるよ凄く」

「…では俺も行きます」

トランクスもベジータの後を追うべく悟空に告げる。

「あ、ちょっと待った」

行こうとするトランクスを止めると脱いだ服から皮袋を取り出してそこから仙豆を取り出した。

「ベジータとおめえの分の仙豆だ。持ってけ」

「どうもすいません」

「頑張れ。だが、無理はすんなよ。やばくなったら逃げろ。いいな」

「トランクスさん、超サイヤ人を超えたパワーでセルと人造人間なんかぶっ飛ばしちゃいなよ!」

「はい。色々ありがとうございます。悟空さんと悟林さんも修行頑張ってください!」

受け取った仙豆をしまいながら2人からの言葉にトランクスは笑みを返す。

「絶対に死んじゃ駄目よ2人共、分かったわね!」

トランクスはブルマの言葉に頷き、ベジータを追って飛んだ。

「よし、悟林!今度はオラ達親子の修行の番だ!」

「おーっ!!」

やる気満々な娘の声に悟空は満足そうに精神と時の部屋に向かう。

部屋の中に入ると熱気が襲ってきた上に酸素が少ないのか、何だか息苦しくもある。

視界はほとんどが白で占められており、はっきり言って体にも目にも良くはないが、精神的な修行の意味合いもあるのだろう。

入口の扉の上に大きな時計があり、外とは違う進みをしているのだろう。

入る時に見た時刻とは全く違うので、そもそも時間を示しているのではなく、月を示しているのかも知れない。

「部屋の扉を閉めてしまえば、完全に外界の情報は届かなくなる。セルの気も、ベジータの気も感じねえだろ?」

「そうだね」

言われてみれば、確かに自分と悟空以外の外部情報が全くなくなっている。

「左っかわが風呂とトイレ。あっちが食料庫だ」

確かにポポが言っていた通り、とりあえず生きていけるだけの備えはあるみたいだ。

「食べ物ってどんな物なの?」

こんな凄い環境では保存食も意味はないだろう。

「食い物は粉だ。そのまま食うのもいいけど、食いにくいと思ったら水で固めて食うんだ」

「ご飯まで厳しくしなくても良いのにね。」

「はは、悟林。表出てみろ、オラがガキの頃気が狂いそうで1ヶ月もいられなかったって意味が分かるぞ」

「どれどれ…わあ…どうなってんのこれ?」

建物内も白いと感じたが、表に出たらそれがより顕著で建物と、その脇に大きな砂時計が2つ。

それ以外は全く何もない白い世界が、ただ見る者に何の感慨も与えず広がっている。

「ねえ、ここどれくらい広いのかな?」

「地球と同じ広さらしいぞ。気を付けろ、遠くに行きすぎるとここを探せずに迷って死んでしまうかもしれない。気温は50度からマイナス40度まで変化するんだ。空気は地上の4分の1ぐらい、重力は10倍の真っ白な世界…」

「へえー、砂漠の暑さや極寒の寒さ、空気の薄さに重力の高さ…地上の辛そうなのを一纏めにしたような修行場じゃない!よーし!早速修行しようよ!ベジータさんが2ヶ月で超えたなら私はそれよりも早く超えてやるんだから!!」

「はは、おめえは本当に負けず嫌いだな。オラの理想としてはオラも超サイヤ人を超える力を手に入れて、そしておめえはそのオラを更に超えてもらうつもりだ。チチとの約束もあるしな」

「お母さんが?お母さんがそんなこと言うなんて…お母さん、熱でもあるんじゃないの?」

認めてくれていてもどんどん強くなっていく自分に苦い表情をしていた母親がそんなことを言うとはどういう考えなのだろう。

「母さんも未来のおめえが人造人間に殺されたってことに色々思うとこがあったんだろ。無理して死なれるくらいならとんでもなく強くなってでもおめえに生きていて欲しいんだろ」

「そっかあ…平和になったらお母さん孝行しないとね」

「そうだな。よし、悟林。修行を始めるぞ!まずは基本的な特訓と組み手をしながら瞑想に力を入れていこう。まずは組み手だ!掛かってこい悟林!!」

「はーい!」

2人は超化して超サイヤ人となると、早速組み手を開始したのであった。

「だあっ!」

悟林の回し蹴りが悟空に繰り出されるが、その蹴りを腕で受け止める悟空。

「ぐっ…!」

その蹴りの重さに悟空の表情は歪む。

自分が寝ている間も悟林は修行していたのだから実力差はもうほとんどないようだ。

悟空の焦りが見える表情に笑みを浮かべると、悟林は次は拳を繰り出す。

それを悟空は掴み止める。

「どうしたのお父さん?余裕がないよ?」

「へへ、俺は嬉しいぜ悟林。おめえが修行を続けててくれていたおかげで良い修行になりそうだ!」

互いに膝蹴りを繰り出し、何度も激突させる。

埒が明かないと判断した悟林は気を爆発させて悟空を吹き飛ばすと腹に向かってラッシュを叩き込む。

「でやあっ!」

「っ!」

大振りの拳が叩き込まれる直前に悟空は瞬間移動で回避し、背後を取るのと同時に強烈な蹴りを悟林に叩き込んで吹き飛ばし、床に転がした。

悟林は何事も無かったように起き上がったが、その表情には笑みが浮かんでおり、悟空もまた笑みを返したのであった。 
 

 
後書き
未来悟飯と悟飯は歳の離れた兄弟感を出していきたいです 
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