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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第25話

 
前書き
未来悟林は自分の師匠であるピッコロや父親の悟空がある程度自分の考えを察知してくれるからその感覚で未来悟飯とトランクスを鍛えていたので、それが裏目に出た感じですね。 

 
カメハウスを飛び立ってどれくらい経つだろう…トランクスが新たな気を感じる。

それは想像もつかない位大きな気だった。

「ま、また新たに凄まじい気が…!もう1人何者かが現れた…!それも知らない奴が…」

「これ、ピッコロさんじゃないかな?」

「え!?し、しかしこの気は…」

ピッコロとは既に出会ってるがその時の気とは全く別物であり、なのに何故悟林はこの気をピッコロと言うのかトランクスは理解出来なかった。

「多分、クリリンさんが言っていたように神様と融合したんだ。」

未来悟飯がピッコロの不思議なパワーアップについて推測する。

「え…!融合…って、例の神様とですか…!?元々1人から別れたって言う…」

「ああ…やっぱり凄いな…ピッコロさんは…」

未来悟飯が尊敬している師匠のパワーアップに表情を輝かせた。

「(す…素晴らしい…!…ここまでパワーアップ出来るものなのか…)」

神との同化により手に入れた力はトランクスの想像を遥かに超えたものだった。

「もしかしたら今のピッコロさんなら人造人間を倒せるんじゃないかな?」

悟林はピッコロの気にそう感じた。

その時大きな衝撃波が悟林達の所まで届いてくる。

「いっ、今の衝撃波は…!?」

「何て強さだ…ピッコロさん…!」

遥か遠くの光を確認すると未来悟飯は拳を握った。

「姉さん!トランクス!急ごう!!」

「うん!」

「はい!」

自分達が力になるか分からないが、この目で脱け殻から出た化け物を確認しなければならないと未来悟飯は感じた。

そして自分のいた時代で自分が弱かったせいで死なせてしまったピッコロの助けになりたい。

「あれ…ピッコロさんの気が…急に減った…」

「…あの怪物が何かしたのかも知れませんね…」

悟林とトランクスがピッコロ気が減ったことに気付く。

未来悟飯も当然気付いており、2つの気の様子を伺いながら闘いの起こっている場所に近付き、そしてその正体を確認した。

「やっぱりピッコロさんだ!本当に神様と合体したんだよ!!…そしてあっちの奴は…もしかして」

「多分あいつでしょう…!!例の脱け殻から出た…!!」

悟林の言葉に対して初めて見るその姿にトランクスはそうとしか思えなかった。

怪物はトランクスと未来悟飯の存在に気付いて2人を見つめていた。

ピッコロの近くに降りると怪物の姿を見る。

悟空やフリーザ達の気を持つ怪物の姿はあまりにも醜い姿でこの世の物とは思えない。

「うわあ、化け物だね…こいつ…」

「孫悟林か…」

「うわっ!喋った…何で私の名前を知ってるの?」

「知っているとも…私の中の孫悟空の細胞が私に教えてくれているからな…お前の生体エネルギーはかなり魅力的だが…」

「悟林には指一本触れさせんぞ…尾に気を付けろ、この町の人間達はそいつで消されたんだ…」

怪物を睨み付けるピッコロの気の圧力が更に増した。

凄まじい殺気を怪物に向けている。

「ピッコロさん、何故こいつから父さん達の気を感じるんですか?」

「未来の悟飯、その理由は後で話す。こいつを片付けるのが先だ…」

「片付けるだと?そう上手く行くと思うのか?」

怪物の言葉にピッコロは冷徹に言い返す。

「この状況ではお前にとても勝ち目があるとは思えんがな」

「確かにこの場は退散するしかないだろうな」

「逃がしはせん…もうさっき程度のかめはめ波ではどうしようもない」

ピッコロの言葉に悟林が反応した。

「かめはめ波!?こいつはお父さんの気を感じるだけじゃなくてかめはめ波まで!?」

「かめはめ波だけではないぞ孫悟林。その気になれば元気玉やお前が孫悟空から伝授された界王拳も多分出来るだろう」

「元気玉や界王拳まで知ってるなんて…お父さんが聞いたら驚くかもね…」

悟林の言葉に怪物が反応する。

「ほう…お前の父親は生きているのか?」

「勝手に殺さないでよ」

悟林の言葉に怪物は笑みを浮かべた。

「そうか、まだ生きていたか…やはり私の知っている歴史とは些か違ってきているようだな…17号・18号は必ず手に入れてみせる!お前達には私が完全体になるのを邪魔しようとしてもどうにもなるまい!17号達と少しはマシに戦えるのがピッコロ1人ではな!」

「完全体…?」

悟林が呟いた直後に怪物は技の印を結び、それにすぐ気付いたが遅かった。

「太陽拳!!」

発する言葉と共に怪物から眩い光が放たれた。

それを回避する事が出来ずにその光を受けてしまい、それによって目は眩み視界が遮られてしまった。

「く…そ…」

激しい光で目の眩みはなかなか取れず眩んだ状態でトランクスや未来悟飯達は辺りを見回す。

「しまった…逃げられた!!」

「逃げるな卑怯者ーっ!!」

未来悟飯と悟林が怪物が逃げたことにそれぞれ叫ぶ。

「畜生!た…太陽拳は天津飯の技じゃなかったのか!」

「ピッコロさん、太陽拳はそれほど難しい技じゃありません。悟飯さんや未来の悟林さん、俺も使えるんです…」

太陽拳は気の力で全身を発光させる技。

気のコントロールさえ出来れば簡単に出来る技なのだ。

トランクスの説明にピッコロは舞空術で飛び上がった。

「気も感じない…あいつ…気も消せるんだ…」

あいつは危険だと、悟林の本能が訴えていた。

しばらくすると上空で探していたピッコロが悟林達の前に降りてくるのと同時に怒りで気を解放した。

「くそ~~~っ、油断した…!!あっさり倒しておくべきだったんだ…!!己…!完全体には絶対させんぞ…!」

そう叫ぶピッコロの気は悟林達の想像を遥かに超えたレベルであり、その気の大きさに声も出なかった。

「………うん?」

ある人物の気を感じて空を見上げるとベジータがいた。

ベジータも気の異変を感じたのだろう。

様子からして、超化して全速力で飛んできたのが手に取るように分かり、そして超化を解き地上に降りた。

「は…話せ…今ここで何があったのか…」

尋ねるベジータの表情は優れない。

それはそうだろうと悟林は思う。

少し前までベジータは超サイヤ人に変身出来るようになったことでプライドを取り戻したのだ。

それなのに人造人間に敗北し、その上ピッコロにまで上を行かれてしまったベジータの心境は複雑だろう。

「天津飯もこっちに向かっているようだ…奴が着いたら纏めて話す…」

「…ではその前に、これだけは聞いておきたい…貴様は本当にピッコロなのか…!な、何故急にそれほどの戦闘力をつけたんだ…!」

「神様と再び合体したんだそうです…」

ベジータの疑問に対してトランクスが代わりに答えた。

「な…何だと…合体…?そ…それだけで…(あ…あの時感じた戦闘力はこ…この超サイヤ人の俺を確かにこ…超えていた…ば…馬鹿な…あいつはたかがナメック星人だぞ…)」

「あ、天津飯さん来たよ!」

悟林が天津飯の姿を認識して叫ぶ。

「(…どうするか…17号と18号、更に16号までいては確かにいくら俺がスーパーパワーを得たとしても手には負えんだろう…やはりセルそのものを倒すしか…)」

「おーい、神コロ様…あ、ネイルさんってナメック星人さんとも合体しているから神コロイルさん?天津飯さん来たよ?」

「名前まで合体させるんじゃない。基本はピッコロだ、今まで通りピッコロと呼べ…よし、悟飯達には後で話すとして…全てを話そう。ベジータと天津飯は見ていないが、さっきの化け物はドクター・ゲロのコンピュータが独自に造り出した人造人間だ…」

「な…何っ…!?」

「ドクター・ゲロのコンピュータですって?またドクター・ゲロか…!!」

「…あれも人造人間なんだ…」

「化け物の名はセル…奴は俺達の細胞を集めて合成させた人造人間だ」

ピッコロの言葉に全員が息を飲んだ。

「お…俺達の細胞を…!?」

「そうだ…だからセルは様々な気を持っていたんだ…」

「でもどうしてセルが未来から?」

悟林の問いに対してピッコロは少しの間を置いてから答えた。

「…セルの狙いは17号と18号だ。あの2人を吸収することで完全体になるらしい。奴のいた未来の世界にはその2人は存在してなかったそうだ…トランクスと未来の悟飯が何らかの方法で倒した事によってな…」

「俺達が…倒した…?俺達の世界より3年後には人造人間は倒せているというのですか?」

「恐らくな…それで倒した報告をすべくタイムマシンを出したのだろう…その時セルにタイムマシンの存在を知られ、お前達を殺してタイムマシンでこの時代に来た…この時代の人造人間を吸収して完全体になる為にな…」

トランクスの問いにピッコロが答えると、タイムマシンの状態を思い出した3人。

あのへこみと血の痕はセルと闘った更に未来のトランクスと未来悟飯との闘いによる物だったのだろう。

「セルね…あいつよくも私の弟と未来の弟子を…!見つけ出して粉々にしてやりたいよ…!」

「お前の気持ちは分かるが落ち着け…セルが完全体になるのを阻止するには…奴を何とか探して殺すか、17号、18号をやはり探して殺すか…そのどちらかだ…俺としてはまだそれほどでもないパワーの内にセルを倒すしかないと思うが…」

ピッコロはそういうがその場にいた者は浮かない顔だ。

セルの強さは今のところピッコロとベジータ、悟林、そして今も眠っている悟空でないと敵わないと分かっていたからだ。

ベジータに関しては悔しさの表情も浮かんでいた。

「(ふ…ふざけやがって、どいつもこいつも…!宇宙一の超サイヤ人をあっさり出し抜きやがって…!頭に来るぜ…!なあ、カカロット…)」

今この時…ベジータは悟空を仲間と認めたのだ。

同じように超サイヤ人になれる純粋なサイヤ人である悟空を。

セルの正体。

壊れたタイムマシン。

セルに殺された更に未来のトランクスと未来悟飯。

完全体のための素材である17号と18号との合体阻止。

様々なことが起こりすぎて混乱しそうになる。

「…何とかセルと言う怪物を見つけて倒さないと…」

「探せるでしょうか…あいつもピッコロさんの予想以上の強さを知って上手く気配を殺しながら人々を襲うんじゃないでしょうか…」

「な…何としてもセルと17号・18号との合体を避けないと…とんでもないことに…」

「地球だけではない…宇宙の星々も大変なことになるはずだ…奴にはフリーザ親子の血も流れていることを忘れるな…」

未来悟飯やトランクス、天津飯とピッコロが険しい表情を浮かべる。

「お父さんの血や…」

「俺の血もな…せこい作戦ばかり立てやがって…合体したいならさせてやれば良いだろう!倒す相手が減って手間が省けるってもんだ…俺は敵がどうなろうと構わん…ぶっ殺すだけだ。」

悟林の言葉を遮るように言うベジータ。

「甘く見るなベジータ、あの全く手に負えなかった17号達をセルは遥かに超えると言うのだぞ」

険悪な空気になったピッコロとベジータの間に悟林が割り込む。

「まあまあ、喧嘩しないでよ……ピッコロさんが強くなってセルみたいな化け物やトランクスさん達の未来よりも強い人造人間…やばい状況なのにワクワクしてきたよ。よーし、決めた!私はしばらく修行するよ!超サイヤ人よりももっと強い力を手に入れて来る!」

「超サイヤ人を超えるだと…?そんなことが可能なのか?」

「何となくだけど…出来ると思うんだ。みんなが強くなるなら私だって負けてられないよ!」

ピッコロの問いに悟林は曖昧な答えを返す。

何しろ超サイヤ人自体伝説と言われている状態なのだ。

それを超えると言うのは並大抵のことではない。

ドラゴンボールもないのだから何もかもが手探りの状態となるだろう。

「…貴様だけじゃない…俺も超えてやる…必ず超えてやるぞ…!超サイヤ人を更に…!カカロットもそうなろうとするはずだ…必ずな…」

「うん、お父さんもきっと超えようとするよ。超サイヤ人を…ねえベジータさん、私と一緒に修行しようよ。お父さんが起きるまで相手がいないしさ」

「ふざけるな、貴様は臆病者の弟のお守りでもしてるんだな」

そのまま飛び去っていくベジータに悟林は頬を膨らませた。

「ちぇっ!ケチッ!」

「「………」」

そんな2人を見ていたトランクスと未来悟飯。

超サイヤ人を超える…もしそんなことが出来るのなら…。

「うーん、まあいいか…ねえ、トランクスさんとでっかい悟飯。この時代のセルを破壊しに行こうと思うんだけど…一緒に来る?」

「そうですね…少なくともこの次元の未来ではもうセルは誕生出来なくなります」

「お前達3人で研究所に行ってくれ。俺と天津飯はもう少しこの付近を探ってみる…」

「はーい、セルが見つからなかったらカメハウスで合流しようよ。お父さんのこともあるしさ」

3人はドクターゲロの研究所に向かう。

「(超サイヤ人を…超える…俺は…考えたことさえなかった…)」

今ある力でどうにかしようとした自分と更なる力を追求した姉。

未来悟飯は自分と姉の違いを改めて理解した気がする。

北の寒さに悟林はあまりの寒さに身震いした。

「うわあ…寒いなあ…」

身震いする悟林を見て、未来の悟林も寒さに弱かったことを思い出して笑うトランクスと悟林。

「ここのどこかに地下に通じる場所があるはずなんだ」

「見つからないね、周囲の瓦礫を吹き飛ばそうか」

「あ、悟飯さん。悟林さん、ありましたよ」

トランクスが地下室への入り口を発見し、3人はゆっくり降りていくと、そこには大きなコンピュータと大型のカプセルの培養液に浸かった小さな生物がいた。

「何て機械だ…」

機械に関しては専門外だが、未来悟飯にはこれが凄まじい技術であることは理解出来た。

同時にこれだけの技術を持ちながら私欲のために使い続けたドクター・ゲロに怒りを覚える。

「もしかしてこのカプセルの小さいのがセルなのかな?」

「恐らく」

悟林とトランクスがまだ手のひらにも満たないその生物を見つめる。

この小さな生物がいずれ大きくなり混沌の世界へと導くのだろう。

危険な芽であるセルの幼体を今の内に摘んでおかなければと、そう思い破壊の決意をする。

その時ふと机にあった設計図が目に入った。

「よーし、壊しちゃおうか」

「ああ!」

「待って下さい2人共」

トランクスは悟林と未来悟飯を止めるとその設計図に目を通し、機械に関して勉強していたがその設計図の凄さにトランクスは驚いた。

正直自分では理解出来ない位だったのだ。

「何、その設計図?セルの奴?」

悟林がトランクスに尋ねていたがトランクスはしばらく答えずに設計図に目を通していた。

「…いえ…ここに17号って書いてありますよ。俺には理解出来ませんが、これを母さんに見てもらえばもしかして17号達の弱点が掴めるかも知れませんよ!!」

「本当?」

「はい…母さんならきっとこの設計図を解読出来ます」

「そう、取り敢えずここを破壊しようか。」

「「はい!」」

トランクスは設計図をクルクルと丸めると小脇に抱えた。

「「「魔閃光ーーーっ!!」」」

3人が周囲に気功波を放つ。

これでこの時代のセルは誕生出来ない。

トランクスと未来悟飯は気功波一発一発に願いを込めて放った。

もう人々を苦しめる人造人間を造り出さないようにと願いを込めて。

研究室の内部を粉々に破壊すると勢いよく地上に飛び出した。

「これで終わりだーーーっ!!」

未来悟飯は自分の時代の仲間達の無念を込めた渾身の気弾を叩き込んだ。

そして大きな爆発を背に3人は飛び去った。

「思いがけない収穫があったな!!」

「はい!!」

「じゃあ、早速ブルマさんの所へ行こう!!」

そういう未来悟飯の言葉にトランクスはしばらく黙り込む。

「それじゃあ、私は修行に向かうけど…でっかい悟飯とトランクスさんはどうする?一緒に修行する?」

「良いのか姉さん…?俺、姉さんの修行の邪魔になるんじゃ…」

「私も可愛い弟に死んでほしいわけじゃないしね」

「ありがとう姉さん…」

「トランクスさんは?」

「…………俺…父さんと一緒に修行をしてみようと思うんです…もし超サイヤ人を超えられるなら俺も…」

悟林との…過去とは言え師匠との修行もしたかった。

しかし、脳裏にベジータの姿が過ぎった。

「そっか」

「トランクス、ベジータさんが一緒に付き合ってくれるとは限らないんだぞお!?」

未来悟飯の脇腹を殴って強引に黙らせると悟林はトランクスを促した。

「行ってらっしゃいトランクスさん、応援してるよ。じゃあ、この設計図は私が持っていくから」

「はい、ありがとうございます」

トランクスはベジータの気を探してその方向へ向かう。

そしてトランクスがいなくなったところで痛みに悶えている未来悟飯を睨む。

「…馬鹿!馬鹿悟飯!泣き虫悟飯!弱虫悟飯!お父さんより老け顔!中身ラディッツ伯父さん!他にはえーとえーと…と、とにかく!お父さんだってそんなこと言わないよ!本っ当にデリカシーないんだから!」

「痛っ!?痛いよ姉さん!!」

「手加減してるんだから我慢しなさい!」

未来悟飯の頭をポカポカと叩く悟林。

因みにこれを普通の地球人が受けたら木っ端微塵になる。

「だ、だってベジータさんが修行を受けてくれるなんて思えないし…」

「だからって…ベジータさんはトランクスさんのお父さんでしょうが!!あんたがどう思おうが口にして良いことじゃないでしょ!!」

「痛てててて!姉さん!止めて!姉さん!!」

耳を引っ張り、次は腕を捻り上げると未来悟飯は悲鳴を上げる。

その姿は夫婦喧嘩中の2人の両親にそっくりであった。

「よーし!図体だけの悟飯!私がみっちり鍛えてやる!目標は最低でも未来の人造人間なんてデコピンで倒せるくらいにね!!」

「お、お願いします姉さん…(俺、死ぬかも…)」

未来悟飯は悟林に首根っこを掴まれて引っ張られていく。

「(トランクスさん、頑張れ)」

悟林は何となく自分ではなくベジータの元に行った理由が分かる。

トランクス自身は気づいていないかもしれないが、トランクスは少しでも良いから父親との思い出が欲しかったのだろう。

だからこそ付き合ってくれるか分からなくともベジータの元に向かったのだ。

トランクスはベジータの姿を見つけると近くに降りた。

「…何の用だ」

振り返ることもせずにベジータは一点を見つめたまま。

「ベジータさん…俺と一緒に修行をしましょう…」

「失せろ…邪魔だ…」

「しかし…一緒にした方が伸びが…」

「…俺は誰とも組むつもりはない。修行なら貴様の師に頼め」

「……悟林さんは、悟飯さんの指導を…」

「ふん、あんな臆病者の世話など同情するぜ」

それだけ言うと無言になって一点を見つめる。

「ベジータさん!お願いします!俺は強くなりたいんです!俺の師匠の悟林さんのように!あなただって超サイヤ人を超えて強くなりたいなら…!」

「貴様の超サイヤ人を超えた姿とは何だ?」

「え?」

トランクスの言葉に振り返りながら問うベジータ。

その言葉の意味が分からないトランクス。

「超サイヤ人を超えるにはただ闇雲に修行したところでなれはせん。貴様の師の教えとやらをもう一度全て思い出してみるんだな。ガキのあいつが超サイヤ人を超えると考えついたなら未来のあいつが考えついていないなどあり得ん」

ベジータは再び一定の方向を見つめたまま立ち尽くす。

父親からのアドバイス…なのだろうか?

トランクスは戸惑いながらもベジータの近くに座り、未来の師匠との修行を一から思い返すことから始めるのであった。

そして超サイヤ人達がそれぞれの行動をしてから3日。

岩ばかりが広がる荒野。

ここは孫姉弟がピッコロと対サイヤ人のための修行をした場所であり、2人にとって大事な場所である。

そこで未来悟飯と悟林は超化して超サイヤ人となると、戦闘と勘違いするほどの組み手を行っていた。

「姉さん!」

「何!?」

悟林からの拳を腕で受け止めながら未来悟飯は問う。

「どうやって超サイヤ人を超えるんだ?」

「イメージは何となく出来てるんだ。でも今の私じゃそれになれる自信がない…多分基本的な力が足りないんだと思うから…まずは修行して戦闘力を上げる!まず自信を持てるまで強くならないと超えることも出来ない!」

つまり超サイヤ人を超えるには相応の実力が必要なのだろう。

自分より強い姉でさえなれなかったのだから、今の自分の実力ではなれないのも当然だ。

「姉さん!もっと、もっと本気で来てくれ!俺はもっと強くならないといけないんだ。俺の奥さんと娘のためにも!」

「奥さん!?娘!?…お付き合いどころか結婚したの?」

「え、えーっと、出会ったのは姉さんが死んでからなんだけど…人造人間に殺されそうになってたのを助けたことが縁になって……あ、でも結婚は出来なくて…式場とか、人造人間に壊されたし…」

「じゃあ、何で連れてこなかったの…ここで結婚式とか…あ、悟飯がいるしね……」

こっちの悟飯には関係ないとは言え、もし未来悟飯の嫁と会ってしまえば悟飯の人生に支障が出るのではないだろうか?

「か、彼女は気にしてないんだけど…」

「そっか…悟飯もお父さんか…だったら尚更強くならないとね。悟飯、もっともっと本気で行くよ!死なないでよね!」

「ああ!」

気を解放してフルパワーとなった悟林に対して未来悟飯もまた必死に食らい付くのであった。

因みに久しぶりに恐竜の尻尾ステーキを堪能することになり、サイヤ人2人分と言うことで結構な量を食われてしまった。

数年かけて治って伸びてきた尻尾がまた数年前の状態に戻されて号泣した恐竜は御愁傷様としか言えない。

一方カメハウスでは悟空が起き、風に当たっていた。

「あれ?悟空さ!気が付いたのけ!」

「チチ…心配かけて悪かったな…すっかり病気は治ったさ」

顔色も良いし、その言葉に嘘はなさそうだと判断したチチは安堵した。

「良かっただ~」

悟空は道着を手に取るとすぐに着始めた。

「なっ、何してんだ!?も、もう服なんか着ちまって…!」

「ご、悟空!治ったのか!?お、おいおい何を…!」

様子を見に来た亀仙人も道着を着ている悟空に戸惑う。

「もっと寝てねえと駄目だって!」

「夢の中でみんなの話を聞いていた…大体のことは分かってる…またえれえことになっちまったみてえだな。」

「ご…悟空…」

「もう闘う気なんか!?死んじまうだよ!」

心配するチチに悟空は微笑む。

「心配すんな…まだ闘わねえ…今のベジータや悟林に勝てねえならオラにも勝てねえから…オラも上を目指そうと思うんだ…超サイヤ人の上をな…!」

悟空の言葉に亀仙人は驚愕する。

今の超サイヤ人でさえ亀仙人にとっては別次元の物なのにそれ以上となるとまるで想像がつかない。

「ス、超サイヤ人の更に上を目指すじゃと!?そ、そんなことが可能なのか…!?」

「分からねえ…だが今度のはそれぐれえじゃねえととても勝てる相手じゃなさそうだ…1年ほど修行して駄目だったら諦める」

「1年!?…そ…そんなにかかっては…」

「大丈夫、1年だけど1日で済む所があるんだ」

「へ?」

悟空の言葉にポカンとなる亀仙人。

「チチ…悟林と未来の悟飯…こっちの悟飯も連れてってやりてえんだが、良いか?」

「じょ、冗談じゃねえ…と言いてえとこだが止めたって無駄だべ。しょうがねえな…」

「チチ!」

「ただし条件があるだ…うんと強くしてやってけれ!特に悟林ちゃんをな!どうせやるなら悟空さより強くしてやるだ!」

意外な条件を聞いた悟空と亀仙人が驚く。

いくら認めても娘が強くなっていく姿を複雑そうに見ていたのは悟空や仲間達も周知のことだ。

「悟林をか?」

「未来のトランクスから聞いただよ…未来の悟林ちゃんが死んだのは23かそこらだって…いくら何だって早すぎるべ…まだ若えし、人生これからだってのによ…どうせあの子はこれからも厄介事が起きれば自分から飛び込んで行くべ?なら何があっても生きて帰ってこれるくれえ強くしてやって欲しいだよ…オラはお淑やかな子になって欲しいのに…あの子は武道にのめり込んで…あの無駄に頑固なとこは誰に似たんだべ?」

「そりゃあ、おめえだ」

即答するとチチに頭を叩かれた。

本当のことを言ったまでなのに理不尽である。

「とにかく!未来の悟飯ちゃんに関しては仕方ねえけんど…オラ達の悟飯ちゃんは別だ!これが終わったら今度こそ悟空さにも悟林ちゃんにも邪魔はさせねえだぞ。悟空さと悟林ちゃんは畑に専念してもらう!」

娘の性格上、必要以上の勉強は嫌がるだろうからいっそのこと農作業を任せることにしたようだ。

「…ああ、サンキュー!じゃあ行ってくる」

瞬間移動でまずは近くの悟林と未来悟飯を連れていくことにする。

「はっ!だあっ!」

「よーし、大分パワーが上がってきたね!少し休憩しよう!」

未来悟飯の拳を捌きながら悟林は休憩を言い渡すと悟空がいきなり姿を現した。

「よっ!」

「と、父さん!?」

「あー、お父さん!?瞬間移動で来たの?」

「ああ、おめえが未来の悟飯か…でっかくなったな悟飯。良く生き延びたな!オラは嬉しいぞ!」

久しぶりの父親の声と顔に未来悟飯は泣きそうになり、表情を歪めた。

「ね、姉さんのおかげです…すみません父さん…俺が弱いばかりに…!姉さんやみんなを死なせて…!」

「情けねえ面をすんな悟飯。泣くのは今じゃねえ、人造人間を倒してからだ…おめえ達。超サイヤ人を超えるために修行してんだろ?良い所に連れてってやる。」

「「?」」

悟林と未来悟飯は不思議そうに父親を見つめるのであった。

次は悟飯がいる飛行艇だ。

「お父さん!お姉ちゃんに未来の僕も!」

「やっほー」

「よっ!」

飛行艇内に突然現れた悟空達にクリリン達は驚く。

「もうすっかり良いのか?」

「まあ腹は減ってっけどな。神コロ様」

「親子揃って名前まで合体させるんじゃない…!基本はほとんどピッコロなんだ…ピッコロと呼べば良い」

悟林と同じく名前まで合体させる悟空にピッコロは呆れる。

「オラ今のままじゃ人造人間にもセルって奴にもとても勝てやしねえ。みんなで修行に行ってくる。たった1日で1年間の修行が出来る所へ…」

それを聞いたピッコロは神の知識から答えを導き出す。

「そうか!“精神と時の部屋”へ行く気だな!なるほど…しかし、あの部屋で1年間過ごし通せた者は誰もいない。昔のお前も精々1ヶ月がやっとだったな…」

「え?お父さんが1ヶ月しか保たなかったの?」

悟林が意外そうに悟空を見上げ、娘からの視線に悟空は笑みを浮かべる。

「部屋に入れば全て分かるさ…ベジータとトランクスも連れていく。あいつ達ならきっと耐えられる」

「早く行くんだ。セルは人間を殺し、どんどん力を付けてきている…」

「ああ!」

「悟飯、私の手を掴んで」

「あ、うん…」

悟林と悟飯が手を繋いだのを確認した悟空はベジータとトランクスの元に瞬間移動しようとした時、クリリンが声をかけた。

「悟空、聞かせてくれ。フリーザよりもとんでもねえ敵が現れて怖いか?それとも嬉しいか?」

「…両方だ」

それだけ答えると悟空達は瞬間移動をしてベジータとトランクスの元に向かう。

瞬間移動で移動した先にはベジータとトランクスがいた。

「やっほー、トランクスさん」

「悟空さん!それに悟林さん達も…」

「どうだ?特訓の成果は」

「ベジータさんに修行付けてもらえた?」

「どう…でしょうか…一応アドバイスはしてくれたんですが…」

悟林の問いにトランクスは困ったように言うと、未来悟飯が首を傾げた。

「ベジータさんがアドバイス?」

「あ、はい…悟林さんの教えを一から思い出してみろと…」

「こっちの悟林が考え付いたことを未来の悟林が考え付かねえわけねえもんな…ベジータも流石だ…ぼんやりと超サイヤ人の更に先が見えてきているらしい…」

悟空がベジータの近くまで移動するとベジータが振り返ることなく口を開いた。

「邪魔だカカロット…失せろ…」

「そう言うな、修行に良い場所を知ってんだ。たった1日で1年分の修行が出来る部屋が神様んちの神殿にあるんだ」

その言葉にベジータが振り返る。

「本当か…」

「ああ、ついて来いよ。別にオラや悟林と一緒に修行しようってんじゃねえから。だけど部屋の定員は2人までだ。時間がねえからおめえはトランクスと一緒に入ってもらうぞ」

その言葉にベジータは少しの沈黙の後に口を開いた。

「…良いだろう、ただし俺達が先に入る。良いな…」

「ああ」

悟空とベジータが悟林達の元に向かう時には既に悟林がトランクスに説明を終えていたようですぐに瞬間移動で神殿に移動出来た。

そしてポポに悟空が説明するとポポは了承した。

「…分かった。ついて来い。風呂とトイレと食料とベッドだけはある。頑張って修行しろ」

ポポについていく最中、ベジータが口を開く。

「カカロット…何故俺にも修行を勧める…俺の最終目標は貴様ら親子なんだぞ…」

「今度の敵は多分1人だけじゃ倒せる相手じゃない…そいつはおめえも感付いてるはずだ」

「…後悔することになるかもしれんぞ…」

悟空の言葉にベジータは不敵な笑みを浮かべ、部屋の前に来るとポポが確認する。

「ここだ。誰から使うか?」

「ベジータとトランクスが先に入る」

「次は私とお父さんだからね!」

「…お先にすみません、悟空さん、悟林さん。」

ベジータは仏頂面で部屋に入り、それを聞いたトランクスが次に入る2人に一言断った。

「頑張れ!仲良くしろ!」

「トランクスさん、メキメキ強くなってベジータさん驚かしちゃいなよ!」

2人の言葉にトランクスは頭を下げて部屋に入った。

「よーし、それじゃあ私達はやれるだけのことをやろうよ。まずは悟飯を超サイヤ人にしないと。」

「え!?僕が!?」

悟林の言葉に驚く悟飯。

娘の考えを察した悟空が頷いた。

「そうだな、おめえは未来の悟飯と入ってもらう。おめえの足りねえ部分を未来のおめえに叩き込んでもらえ。未来の悟飯とまともに修行するにはおめえも超サイヤ人になれるようにならねえとな」

「そうですね…俺も君が超サイヤ人に変身出来れば色々助かる」

「ぼ、僕が超サイヤ人に…なれるかなあ?」

「なれるに決まってるでしょ。でっかい悟飯がなれてるんだから」

自信無さそうな悟飯に呆れながら悟林は超サイヤ人なっても問題ないように外に出るのであった。 
 

 
後書き
未来悟飯の妻子は当然あの2人。

しかし、結婚時期と誕生時期が遅いです。

因みにトランクスのベジータ知識は未来悟林がブルマ達が黙っていたことも全て話しているのである程度ベジータへの接し方を理解しています。 
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