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無念を乗り越えて

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第三章

「文字通りの」
「そうでしたね」
「三十三対四だとな」
「今も言われますね」
「思い出したくないが忘れられない」
 阪神ファンとしてはだ。
「本当にな」
「酷いことです」
 寿も暗い顔で応えた。
「それでまたでしたね」
「甲子園で胴上げだった」
 それを許してしまったというのだ。
「ロッテにな」
「あの時もそうなりましたね」
「そしてクライマックスに勝ったのが」
 それがというのだ。
「二〇一四年だった」
「あの時は二位でした」
「それで巨人に勝ってシリーズに出たが」
「またやられました」
「そうだった、しかし」
「今年こそはですね」
「阪神は優勝するんだ」
 寿に強い声で話した。
「もっと言えば優勝だけで終わらないんだ」
「日本一ですね」
「そうなるんだ」
 絶対にというのだ。
「そうなる為にも」
「僕達はですね」
「西宮神宮、甲子園のあるこの街の大社でだ」
「阪神のことをお願いすることですね」
「君も日本一を見たいな」
 老人は寿に顔を向けて問うた。
「阪神の」
「この姿見て下さい」 
 寿は右手で自分の胸を叩いて老人に答えた。
「わかりますよね」
「阪神帽、阪神の法被だな」
「メガホンもあります」
 全てあった、黒と黄色の縦縞の姿が何よりの答えだった。冬の服の上に彼もまた愛する存在の象徴で身を包んでいた。
「この通り」
「わしもわかっている、しかしな」
「ご存知のうえで、ですね」
「君に聞いたんだ、その阪神への想いを確認してだ」
 そのうえでというのだ。
「受け取りたいからな」
「だからですね」
「敢えて聞いた、そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「わしも誓う、お賽銭を入れてお願いをしてだ」
「阪神の優勝と日本一を」
「絵馬に書いてお守りも破魔矢も買った」
「完璧ですね」
「後はな」
「西宮大社の神様がやってくれますね」
「ああ、今年こそはだ」
 まさにというのだ。
「半身を優勝させてくれるぞ」
「そして日本一にもね」
「させてくれる、どんなことがあってもな」
「今年は阪神が日本一ですね」
「寅年だけにな」
 こう寿に言った、寿はその老人と話してだった。
 そのうえで朝日を迎えた、彼は初日にも願った。
 兄妹は元旦の夕方には家に帰っていた、寿の方が先に帰って休んでいたが千佳もだった。兄妹は夕食の時におせち料理を食べつつ話した、お雑煮もある。 
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