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失われた術

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第一章

               失われた術
 中国明代のことである、この国には古来より様々な武器や拳法が存在し多くの流派や書が存在している。
 その中に剣もある、ある将軍が皇帝に直接命じられた。
「剣を軍に再び入れるか」
「剣をですか」
「近頃は武器も多い」 
 皇帝は将軍に言った。
「戟や弓矢に砲も使うな」
「最近は特に砲や銃が多いです」
「しかしそうした武器だけでなくな」
「戦では切り合うこともあるので」
「剣もな」
 こちらもというのだ。
「入れてな」
「軍で使う」
「そうしたい、それで剣の使い方をな」
 これをとうのだ。
「そなたに書としてまとめてもらいたい」
「わかりました」
 将軍は皇帝に礼をして応えた、そうしてだった。
 彼はすぐに剣を手にした、だが。 
 ここで彼は気付いた、それで部下達に言った。
「わしは剣を今はじめて手にした」
「そういえばそうです」
「私も同じです」
「私もです」
「剣ははじめて見ました」
「手にしたことも」
「誰か使い方を知っておるか」 
 部下達に真顔で問うた。
「それで」
「いえ、全く」
「他の武器は知っていますが」
「武挙でも出ませんし」
「弓矢や馬なら出ますし」
「兵法書も出ますが」
「しかしです」
 それでもというのだ。
「剣になりますと」
「武挙でも出ませんし」
「刀なら知っていますが」
「剣になると」
「どうにも」
「そうであるな、書かれている書はないか」
 将軍は真剣に考える顔で述べた。
「そうするか」
「そうしてですか」
「調べますか」
「そしてそのうえで、ですか」
「使い方も知りますか」
「知っておる者も探す」
 こう言ってだった。
 彼はすぐに部下達と共に武に関する書を手当たり次第に調べかつ使い方を知っている者を探した。だが。
「そうした書はありませぬ」
「一冊も」
「他の武器のことは書かれていても」
「剣のことはです」
「書かれていませぬ」
「長い間使われてこなかった」
 将軍は苦い顔で述べた。
「だからな」
「もう書にも書かれず」
「書かれた書は昔のものなのでなくなっている」
「そして伝わっていませんか」
「そうなのですか」
「そしてな」
 彼はさらに話した。
「使える者もな」
「いませんか」
「本朝には一人も」
「長い間使われていなかったので」
「だからですか」
「そうやもな、しかし万歳老のご命令だ」
 皇帝のというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「何としてもですな」
「使い方を調べますか」
「そうして書に残しますか」
「そうする」
 こう言ってだ、将軍はさらに調べ探し続けた。そうしてだった。
 ある日朝鮮から来た者が将軍のところに来て言って来た。
「剣の使い方を調べておられるとか」
「うむ、しかしな」
 それでもとだ、将軍は答えた。 
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