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耳の中まで清潔に

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第二章

 耳が聞こえにくくなったので病院に行った、そうして診てもらったが。
 耳鼻科の医師にだ、曇った顔で聞かれた。
「耳掃除していま?」
「耳のですか」
「はい、していますか?」
「子供の頃母にしてもらっていました」
 若葉はその頃のことを思い出して答えた。
「そういえば」
「あの、それからは」
「ええと」
 言われて戸惑いつつ答えた。
「そういえば」
「ずっとですか」
「していないです」
「あの、耳垢がです」
 これがというのだ。
「もう十数年分ありました」
「そうですか」
「はい、ずっとお掃除されてなかったんですね」
「母にそうしてもらったのが十歳までだったでしょうか」
 医師に自分の記憶を辿りつつ答えた。
「そういえば」
「そうですか」
「今二十五歳です」 
 大学を卒業して就職して三年目である。
「それまでは」
「そうですか、あの耳もです」
「お掃除しないとですか」
「耳垢が溜まりますので」
「気をつけることですね」
「そうして下さい」
 こう若葉に話した、この時彼女は病院で耳の中を奇麗にしてもらった。そしてその後で職場で早苗にこのことを話すと。
 早苗は意外という顔になって若葉に言った。
「奇麗好きなあんたでも」
「ええ、忘れてたわ」
「耳のことはなのね」
「完全にね」
「それで耳垢がなのね」
「凄いことになっていたのよ」
「成程ね、じゃあこれからは」
 早苗は若葉に言った。
「耳のこともね」
「注意するわ、耳自体は洗っていたけれど」
 入浴の時にというのだ。
「耳の穴はね」
「そうだったから」
「これからはお掃除するわ」
「じゃあそうしてね」
「ええ、そうするわ」
 こう言ってだった。
 若葉は耳掃除もすることにした、それから耳が聞こえにくくなることはなくなった。そしてそちらもいつも奇麗になった。


耳の中まで清潔に   完


                  2021・12・28 
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