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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百三十一話

 セニョールピンクをやられたことで激高したマッハ・バイスに襲われているミキータは怒涛の攻撃をいなしていく。


「よくもピンクを……死ねぇ!!“10tヴァイス”!!」

「キャハハハハ!あんたは超人(パラミシア)系悪魔の実トントンの実の能力者よね?そんな攻撃当たらないわ!!」


 マッハ・バイスは空中に飛び上がると10tの重さでミキータを押し潰そうとするが、奇しくも同じような技を使う彼女にはその軌道を見切るのは容易く苦もなく躱す。


「ぶはー腹痛てイーン!!お前すばしっこイーンだな?」

「あんたの攻撃はあたしの能力に似てるから分かり易いのよ。あたしは超人(パラミシア)系悪魔の実、キロキロの実の能力者。」


 マッハ・バイスの食べた超人(パラミシア)系悪魔の実、トントンの実の能力は自分の体重を1トンから10000トンまで自由に変化させる能力である。


「キロキロの実……ニヒヒヒヒ!腹いたイーン!!」


 対してキロキロの実の能力は自分の体重を1キロから10000キロまで自由に変化させる能力であり、すなわちトントンの実はキロキロの実の上位互換といえるため、それに気づいたマッハ・バイスは笑いを堪えきれずに腹を抱えて笑い始めた。


「キャハハハ!もちろん……あんたの食べたトントンの実が私の能力の上位互換だって知ってるわよ。“10000キロプレス”!!」


 ミキータは体重を1キロに変えて高く飛び上がり、下にいるマッハ・バイスに向けて10000キロに変えた体重で落下すると、彼は背中に背負った自分の身体程の大きさのある巨大な金色の盾を頭上に出す。


「ニヒヒヒヒ!軽イーン!!」


 落下による重力加速度と10トンに及ぶミキータの体重を盾で防ぎきると、ミキータを弾き飛ばした。


「キャハ♪あたしの攻撃を受け止めたのゴジ君以来よ!!」

「くらえっ!“シールドヴァイス”!!」


 マッハ・バイスはミキータを弾き飛ばした盾で、地面に着地したミキータに向けて殴り付けた。


「鉄塊!!」


 ミキータは全身に武装色の覇気を纏って鉄のように体を固くすると彼女の顔面に当たった盾は凹むが、マッハ・バイスはこれを好機と見て、彼女の頭上に向けて天高く跳躍する。


「ヴェルゴも使う“鉄塊”。その弱点は動けなくなること。キロキロの実の能力の最大重量は確か10000キロ、すなわち10トンだイ〜ン!!お前の最大重量よりも重い“100トンヴァイス”!」


 そのまま真下にいるミキータ目掛けて体重を操作して大の字になって落下する。

 体を鋼のように硬くした所で100トンの体重で押し潰してしまえば意味は無いというマッハ・バイスの読みは正しい。


「残念。あたしは弱点を克服してるの。“鉄塊拳法 10000キロパンチ”!!」


 ミキータは天から100トンの重さで降ってくるマッハ・バイスを“鉄塊”をキープしたままで躱しながら、地面に落下した横っ面を10000キロの体重を乗せた拳で殴り飛ばした。

 通常武装色の覇気に加えて筋肉を硬直させることで鉄のように体を硬くする“鉄塊”の状態では基本的に動く事は出来ないが、ミキータはこの状態のまま自由に動けるように訓練していた。


「くべっ!?」


 重さだけならばトントンの実はキロキロの実の上位互換といえるが、トントンの実の能力者は最低でも1トンの体重であり、僅か1キロまで体重を軽く出来るミキータの素早さに対抗出来るはずもない。


「キャハハハ!あんたの弱点も教えてあげるわ。あんたは重すぎるのよ。あたしは移動中の体重はたった1キロしかないから地面を少し蹴るだけでこの通りよ。」


 通常の“剃”は地面を十回以上蹴る必要があるが、ミキータは体重を1キロに変えて地面を蹴るだけで“剃”並の速度で動く事が出来る。

 キロキロの実は重さではトントンの実に劣るが、軽さでは上回っているのだ。


「速イーン!?」

「“鉄塊拳法 10000キロキック”!!」


 その為、筋肉を固くさせる“鉄塊”の状態を保ったままでも超高速で動き回れるので、ミキータがマッハ・バイスとの間合いを一瞬で詰めると、再度体重を10000キロに変えて体重を乗せた左足でマッハ・バイスの腹を蹴り上げた。


「ぐはっ!?」


 10000万トンに及ぶ蹴りの威力でマッハ・バイスはそのまま上空に打ち上げられた。

 “鉄塊”を常に保ったまま移動の時は体重を軽くして素早さを上げ、防御と攻撃の時だけ10000キロに変えて攻撃を受け止め、技に重さをも乗せる。

 これこそがミキータの“鉄塊拳法”である。


「細かい事を考えるのが苦手な私に“鉄塊”を常に保った戦う鉄塊拳法を教えくれたゴジ君の為にも能力だけがすべてじゃないってことを証明してあげるわ。」


 空中に打ち上げられたマッハ・バイスは口なら流れる血を乱暴に拭うと背中に背負った盾を取り出す。


「ぐっ……この俺を蹴り飛ばすとは……いくど〜“地獄の万トンヴァイス”!!」

「キャハハハ!!馬鹿の一つ覚えね。“剃刀”!」


 天高く打ち上げられたマッハ・バイスはそのまま盾の上で大の字になったままミキータ目掛けて10000トンの体重になり、落下してくる。


「私達の能力は基本的に上から押しつぶす事で最大限の威力を発揮するのよね?」


 ミキータは“月歩”と“剃”を合わせた空を神速で駆ける“剃刀”を使って彼の背中に移動していた。


「なっ……!?なんでおまえが俺の上にいるんだイ〜ン!!」


 マッハ・バイスは下にいるはずのミキータが自分の背中に乗っている事に驚きを隠せない。


「そんな事より、あたしの今の体重は10トン、貴方は10000トンよね?このまま落下すればどうなるかしら?」

「ニーン!そんなの俺の方が早く落ちるに決まってる!先に地面に落ちてからすぐに避ければお前の攻撃はあたらなイ〜ン!!」


 マッハ・バイスは鼻で笑いながら、体重の重い自分の方が速く落ちると断言すると、ミキータは嬉しそうに笑う。


「キャハハハ!そうよね……うんうん。そう思うわよね!“10000キロ二ープレス”!」


 二人はそのまま全く同じ速度で地面まで落下して10000トンのマッハ・バイスが降ってきたことで穴が空くと同時に地面の砕ける轟音が辺りに響く。


「グベッ……な……なんで……」


 二人同時に地面に落ちたことで背骨に10トンとなったミキータのピンヒールの踵が突き刺さってマッハ・バイスは悲鳴を上げて、意識を失った。


「キャハハハ!私もゴジ君に教えて貰ったんだけど、落下する時間は重い物も軽い物も同じなんだって……まぁもう聞いてないわね。」


 これは、かつてガリレオ・ガリレイが大きさの違う2つの鉄球をピサの斜塔から同時に落とし、同時に地面に落下したことで見つけたとされる落体の法則と呼ばれる現象である。

 ゴジはミキータがキロキロの能力を使う上で大切になるであろうこの法則を伝えていた。


「キャハハハ!さてボニーはどうなってるかしらね!」


 ミキータがボニーを心配すると既に戦いの終えたボニーが地面に胡座をかいて座りながら、自分の方を恨めしそうに見ていた。


「あぁん!セニョール可愛いわ!」

「ハードボイルドな貴方も素敵だけど、可愛い貴方はもっと素敵ぃ!」

「母性が溢れて止まらない!!」

「次は私よ!!」


 セニョール・ピンクの取り巻きの女性達が衣装だけでなく、本当の赤ん坊になったセニョール・ピンクを奪い合うように抱きかかえていた。


「なんなんだよぉ!あの変態野郎、ほんとにくそつまんなかった。」

「ミキータ、勝ったみたいだけど……なんでそんなに荒れてんのよ?」


 ボニーは赤ん坊になったセニョールピンクを指差しながら、戦いを思い返して苛立ちを隠すことも無く捲し立てた。


 ◇


 ボニーとセニョールピンクの戦いが始まった直後、既に頭から大量に出血して重傷であるセニョールピンクはその場に仰向けになった。


『なんのつもりだよ?』

『男の手ってのは女を抱き締める為にあるもんだ。俺はこの戦いで手を出す気はない。気の済むまで好きにしろ。』


 ボニーはセニョールピンクの罠だと思い、能力を両手に発動しつつ、見聞色の覇気で警戒しながら一気に飛びかかったところ、宣言通りセニョールピンクは微動だにしなかった。

 ハードボイルドに生きるセニョール・ピンクの辞書に女と戦うという文字は存在しない。

 たとえ敗れることになっても自分の主義は曲げない。

 彼はそういう男である。


『てめぇ、ホントに避けねぇのかよ!クソッタレが!!これでてめぇは赤ん坊になる。』


 セニョールピンクは徐々に縮んでいく自分の体を見ながら、涙を流して歓喜していた。


『そうか……俺が赤ん坊に……ルシアン、今なら君はもっと笑ってくれ……ばぶばぁぁあああ!!』

『ルシアン?』


 ボニーがイライラしている最大の理由は負けた上に赤ん坊にされるという屈辱を味わったはずのセニョールピンクの笑顔が頭から焼き付いて離れないことである。


 ◇


 彼がこんな赤ん坊の格好をしているのは理由がある。

 セニョールピンクが十数年前にドンキホーテファミリーに入った当時は常に煙草を咥え、高級なスーツに身を包んだ彼の性格通りのハードボイルドを絵に書いたような男だった。

 しかし、12年前に海賊である事を隠して結婚したルシアンとの間に生まれた息子ギムレットがセニョールピンクが出張中に急死してしまう。

 さらに不幸は重なり、海賊である事を隠していた事がルシアンにバレて喧嘩別れしたが不慮の事故に遭い、植物人間となってしまった。


『もう一度笑ってほしい。』


 セニョールピンクは植物人間となった彼女のために季節が変わっても何度も何度もも病院に通って語り掛けたが、彼女の意識が戻ることはなかったある日、息子が付けていた幼児用の頭巾ボンネットを被ってみた。


『ルシアン。ほら、ギムレットと同じボンネットを見つけたんだ。どうだ?似てないか?あいつは俺似だったから……』


 その時、ルシアンがわずかに笑顔を見せたことがきっかけで、誰から笑われようとも、変人や狂人扱いされようとも、決して意に介す事なく赤ん坊の恰好をするようになる。


『ルシアン、俺にとっちゃこの服はどんな高級なスーツより値打ちがあるんだよ。この服を着てる間だけ君が微笑んでくれるから……。』


 ギムレットの真似をして赤ん坊の頭巾を被った時だけ植物人間であるはずの妻が笑ってくれるから彼は誇りを持ってこの格好を続けていたのだ。


 ◇


 セニョールピンクはボニーの能力で身体まで赤ん坊になった今ならばルシアンの本当の笑顔を取り戻せるのではないかと歓喜して泣き叫びながら、自分を奪い合う取り巻きの美女達から必死で逃げようとしていた。


「ばぶばあぁぁぁぁぁ(ルシアァァァン)!!」

「あぁ……セニョール落ちちゃうと危ないから暴れないでね…⸝⸝⸝」

「ばぶばあぁぁぁぁぁ(ルシアァァァン)!!」

「ふふっ…セニョールったら元気いっぱいね♪」


 しかし、今のセニョールピンクはただの赤ん坊であり、彼の必死な思いは彼女達には伝わることないが、彼とボニーだけは彼がルシアンと呼んでいるのだと分かった。

 ハードボイルドを愛する彼が恥も外聞も無く女の名前を叫び続けている姿にボニーの体が動く。

「ちっ……おらぁ!姉ちゃん達どきな!!」


 見かねたボニーは赤ん坊となったセニョールピンクを抱えている女性達に近付くと、強引に彼を奪い取った。


「あぁ……セニョール!?」

「このケダモノ!セニョールをどうする気なのよ!」


 愛しのセニョールピンクを奪われた女性達は講義の声をあげる。


「あ”〜ん?なんか文句あんのかい!!あんたら全員ババアにでも変えてやろうか?」

「「「ひぃぃいいい!」」」


 ボニーが女性達を睨み付けながら殺気をとばして脅すと彼女達は一目散に逃げていった。


「ばぶばぶ!!ばぶば〜!」


 セニョールピンクはおしゃぶりを咥えながら、ボニーにある事を訴え続ける。


「分かってるよ。ルシアンって女の所に連れてけばいいんだろ?さっさと案内しろよ。ミキータ、すまねぇな。少し寄り道してくる。」

「ばぶ〜!!」


 ミキータを見ながら、申し訳なさそうに軽く頭を下げるボニーは胸に抱くセニョールピンクの指差す方向へ向けて歩を進める。


「はぁ〜ほんとあたしは何やってんだか……」


 本当なら戦いが終われば直ぐにロビンの元へ合流しなければならないが、敵である男の願いを叶えようとするのが間違っているとボニー自身がよく分かっているが、身体が動いてしまったのだ。


「キャハハハハ!まぁ、ロビンなら大丈夫よ。ボニー待ちなさい。あたしも行くわ!!」


 ミキータはそんな後輩の後を笑顔でついて行く。


 ◇


 ドレスローザ王国でも指折りの病院の一室に案内役を買ってでた看護師と共に辿り着いたボニー達はそのベットに虚ろな目で一点を見つめたまま座る女性の膝元に赤ん坊となったセニョールピンクを置いた。


「ジュエリー・ボニー大尉?その赤ん坊は一体?」

「この女の大切な人だよ。」

「ばぶ〜!」


 セニョールピンクが眠っている女性に手を伸ばしながら声をかけると、その女性は虚ろな目を潤ませてその赤ん坊の手を取った。


「ギ……ギム……レット?」


 12年振りに聞いたルシアンの声にセニョールピンクは興奮して泣き喚く。


「ばぶ〜ばぶばぶ!!」

「ギムレットなのね……あ……あぁ……長い間……ずっとあなたを失った夢を見ていたわ。」


 12年にも及ぶ植物状態から突如目覚めたルシアンは身体が思うように動かないが、それでも何とか体を少しずつ動かして、親子故か生き写しとしか思えないくらいギムレットにそっくりなセニョールピンクを息子のギムレットだと信じて抱きかかえる。


「き……奇跡!先生ぇぇぇ!!ルシアンさんの意識が回復しましたぁぁぁ!!」

「ばぶばあぁぁぁぁぁ(ルシアァァァン)!!」


 ルシアンの意識が戻った事に看護師は目が出る程に驚き、担当医を呼びに走り去った姿を見送ったミキータとボニーはそのまま静かに部屋を出た。


「ボニー、優しいとこあるじゃない?」

「う”う”……うるぜぇよ……う”う”……」


 ミキータは涙を流して感動しているボニーの涙が止まるまで彼女の頭を撫で続けた。 
 

 
後書き
4年後の原作時点ではルシアンは既に故人のようですが、この当時はルシアンはまだ生きており、ドレスローザの病院に転院させている設定です。

次の更新は4日です。 
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