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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百三十話

 リク王はヴィオラに命を救われて以降、数人の兵士達と町外れのスラム街に隠れ住んでいた。


「リク王様お逃げ下さい!ドフラミンゴの手の者に襲われております!!」

「何っ!?」


 リク王がドフラミンゴの部下に襲われたと思われる傷だらけの兵士の姿を見て顔を青ざめる中、報告に来た兵士が背中から斬られて倒れ伏す。


「ぐはっ……!?どうか……お逃げ……くだ……さ……」

「リク王……ヴァイオレット……いやヴィオラ王女が若様を裏切った。お前を生かしておく理由がなくなった。若様のところまで来てもら……ぐはっ!?」


 兵士を斬り捨てたドフラミンゴの部下がリク王に刃を向けていると、生き残った兵士がリク王の元へ駆け付け、その男を斬り捨てた。


「はぁ……はぁ……リク王……お逃げ下さい!」


 既に多くの死線を乗り越えてリク王の元まで辿り着いたこの兵士も傷だらけであるが、リク王を背に庇いながら剣を構える。


「もういい。私ならば何処へでも連れて行くがいい!!兵士達に手を出すな!!」


 リク王は王座を奪われて6年もの間尽くしてくれた忠臣たちの身を案じて助命を乞う。


「リク王様……!?」


 リク王はヴィオラの助命嘆願により自分が今まで生かされていた事は知っており、彼女の為にもこれまで生き長らえてきたが、彼女がドフラミンゴを裏切って自由を求めたならばリク王に思い残すことはない。


「へへっ……俺達はお前を若さまの元へ連れて行けばいい。無駄な抵抗をしないなら……えっ……!?」


 生き残った兵士達が剣を下ろしたのを確認したドフラミンゴの部下達がリク王を拿捕しようとした時、彼等の間を二陣の風が駆け抜ける。
 

「斬時雨!!」

「指銃・斑!!」

「「「ぐぎゃああああ!!?」」」


 リク王達の目に正義を背負った海兵達が現れると同時に多くのドフラミンゴの部下達が突如血を吹き出して倒れ伏した。

 彼等の目に飛び込んで来たのは優雅に刀を振るう黒髪の女剣士と、両手の人差し指を鮮血に染めたブロンドの女武人という純白の海軍コートを靡かせ、その背に正義を刻む二人の女海兵達だった。


「たしぎはそのままリク王の護衛。残りは私が蹴散らすわ!!」

「はい!ステューシーさん、こちらは任せて下さい!!彼らにはもう指一本触れさせません!!」


 リク王達は彼女達に会ったことはないが、有名すぎる彼女達を知っている。


「“刀狩り”たしぎ少尉に“歓楽街の女王”ステューシー准将!?何故ジェガートの海兵がこの国に……!?」

「私達はヴィオラ王女からこの国の悪夢を聞き、貴方を保護しにきました!!」

「間一髪だったけどね。“剃”!」


 たしぎはリク王と傷付いた兵士を庇いながら襲ってくる敵を斬り捨て、ステューシーはこの場に集まった敵の真っ只中に突撃すると両手の“指銃”で的確に急所を穿ち、全て蹴散らしていく。

 彼女達がここへ来て数分後にはリク王の拿捕に来た数十名に及ぶドフラミンゴの部下達を全てを倒してしまった。


「どうやらドンキホーテファミリーは来ていませんでしたね。」


 たしぎが刀を鞘に納めながら、ステューシーに声を掛けると、ステューシーは頷く。


「えぇ。今のうちにリク王様達を連れて船に行くわよ!リク王様、まもなくここにも更なる追っ手が来ます。我々がここへ来た理由は道中でお話するので、ご同行お願いします。」


 ステューシーが優雅に頭を下げながらリク王に頭を下げて同行を促すとリク王も頷く。


「うむ。一つだけ教えて欲しい。ヴィオラは無事なのか?」

「ご安心を……ヴィオラ王女はこの国で一番安全な所にいます。」


 リク王の質問に対してステューシーが自信満々に答えるとたしぎが思わず吹き出してしまった。


「うふふっ……確かにゴジさんの隣ほど安全な所はないかもしれませんね。」

「そうか……“黒麒麟”が来てくれたのか!?」


 リク王達はヴィオラの安全が分かった上、ゴジが来ていることが分かり、喜色を顕にする。


「負傷者の救護をしてロビン達と合流しましょう。」

「はい!!」


 ステューシーとたしぎは傷付いた兵士達の応急処置を始めた。


 ◇


 ドフラミンゴの元へリク王の拿捕を命じた部下から連絡が入る。


『プルルル……ガチャ、俺だ。』

『わ……若さま……申し訳ありません!?“歓楽街の女王”、“刀狩り”に襲われて……ぐぎゃあああ!!』

『おい!応答しろ……チッ!?先手を打たれたか……ガチャ!』


 ドフラミンゴは乱暴に受話器を置き、考えを巡らせていく。


「フフフ……“歓楽街の女王”まで来ているとはな……やはり“鳥かご”を使うしかない。」


 ドフラミンゴは王宮の窓から外に出て雲に糸を掛けながら天高く昇っていくと“鳥かご”を発動する。

 島を覆う岸壁からドフラミンゴのいる天まで伸びた無数の糸でドレスローザの島全体を鳥かごのように覆い、脱出不可能な檻を作り出した。


「誰もこの島から逃がしはしない……フッフッフフハハハハ!!」


 このピアノ線のような細い糸はドフラミンゴの覇気を纏い、触れるだけで指は斬り飛ばされ、鋼鉄でも容易く斬り裂く強度を持つ。


 ◇


 リク王軍の兵士達の応急処置がひと段落した頃、たしぎが空を見上げて慌て始める。


「ステューシーさん……空が……!?」

「恐らく島を覆う高い岸壁から上空に延びた糸の牢獄。これで私達は鳥かごに閉じ込められた鳥と同じね。ロビン達は既に船に戻っている頃よ。急いで合流しましょう。」

「はい!!」


 ステューシー班が無事にリク王を保護し、生き残った数人の兵士を連れて、ロビン班と合流する為に戦艦が停泊している場所への道を急いだ。

 一方レベッカの保護に向かったロビン班は無事にレベッカを保護し、彼女と共にいたオモチャの兵隊と共に戦艦の前まで戻っていたが、島と船を遮る鳥かごの檻を突破出来ないでいた。


「ちっ!この糸はヤバすぎるぜ。これがドフラミンゴの力かよ。」


 ボニーが武装色の覇気を纏った拳で糸を殴り付けるが、強度だけでなく糸特有の柔らかい性質により殴ったところで衝撃を受け流されて効果はなかった。


「困ったわね。ここでステューシー達を待つしかないわ。」

「キャハハハ!でも、そう悠長には言ってられなそうよ。ここに敵が向かってきてるわ!!」

「なんだと!?」

「えぇ……どうしよう!?」


 高い木の上から見張りをしていたミキータの言葉にレベッカとオモチャの兵隊は慌てるが、ロビンとボニーには慌てた様子はない。

 ドンキホーテファミリーは元ギャングで暗殺を生業としていた事は知っており、尾行に長けているのは分かっていたからである。


「ロビンはレベッカ王女を守りなさい!!ボニーは私と来なさい。敵を迎え撃つわ!!」

「あたしの見聞色でも分かるぜ。二人くらい強ぇのが近付いてくる。」

「えぇ……こちらは任せて。二人とも気を付けて!!」


 ロビンにレベッカの護衛を任せ、ミキータとボニーは敵のいる方向に向かって駆けて行った。


「凄い……私と同じくらいの女の子なのに……!?」

「レベッカ、彼女達は皆、多くの海賊と戦ってきた海の勇者達だ。」


 レベッカとオモチャの兵隊はロビンと共に自分達に危害を加えまいと敵を迎え撃つ覚悟を決めた2人の無事を祈っていた。


 ◇


 ピンク色のボンネットを被り、幼児服にヨダレ掛けを付けた下っ腹の出た中年男と赤いプロレスラーのような衣装を着た巨大な男が率いる数十名からなる一団が迫ってきた。


「小娘共覚えときな。いい女の残り香ってのは男を誘うんもんだ。」

「「「あぁぁぁん……⸝⸝⸝セニョールぅぅぅ妬いちゃうわ……⸝⸝⸝!」」」

「小娘共まとわりつくんじゃねぇ。若ぇ男と遊んで来やがれ!!」

「「「あぁぁぁん…⸝⸝⸝そんな事言わないでぇぇ……⸝⸝⸝!」」」


 セニョールと呼ばれた幼児服の中年男の正体はドンキホーテファミリーのセニョールピンクであり、彼の大人の色気に惹かれる年若い水着美女4人が興奮して抱き着く中で、ハードボイルドに生きる彼はロビン達の残り香を辿ってきたと断言する。


「相変わらずピンクの理屈はよく分かんねぇけど、どうやら当たりみたイーン!!」

稲妻(エクレール)!!」


 プロレスラーの大男は空から巨体に似合わぬ俊敏さでその場から離れるが、セニョールピンクは空を見上げながら両手を頭につけてネコの耳を作る。

 ミキータは鳥かごギリギリの空まで駆け上がると、体重を1万キロに変えて武装色の覇気を纏ったピンヒールの尖った踵に全体重を乗せて、敵陣の中心を目掛けて落ちてきたのだ。


「小娘共、邪魔だ!!“ネコ耳パンチ”!!」


 ミキータの攻撃に対してセニョールピンクは自分にまとわりつく美女達を後ろに投げ捨てると、地面を蹴ってミキータの技に武装色の覇気を纏った頭突きで応じる。


「キャハハハハ!!潰してあげるわ!!!」

「「「「セニョール!!?」」」」


 1万キロの体重と重力により加速された威力をピンヒールの踵の一点に凝縮された攻撃に対して頭突きで勝てるはずもなく、取り巻きの美女達の悲鳴と共にミキータの攻撃に蹴り飛ばされて地面に大穴を開ける。


「ぐおおおぉぉぉ……ぐはっ!?」


 しかし、結果として追っ手を一掃するはずだったミキータの“稲妻(エクレール)”の威力は完全に殺されてしまった。


「セニョール!?ピンヒールの踵に頭突きで挑むなんて無茶よ!!」

「貴方の能力なら避けられたはずよ!!」


 取り巻きの美女達の悲鳴を受けながら、大穴の中心からピンヒールの踵が額に突き刺さって血を流し続けるセニョールピンクが両手を組んだまま立ち上がる。


「チュパッ……勘違いすんじゃねぇぞ。壁も地面も自在に泳ぐ俺のスイスイの実の能力は敵から逃げる為にあるんじゃねぇよ。俺はな、泳ぎて時に泳ぐのよ!!」

「「「「自由ぅぅぅ!!」」」」


 超人(パラミシア)系悪魔の実スイスイの実の能力者であるセニョールピンクは地面でも壁でも自由自在に泳ぐことが出来るが、彼の自由さ加減に彼の部下達が驚く中、ミキータを追いかけて姿を現したボニーは彼の行動の理由が分かり、楽しそうな笑顔で語り掛けた。


「いや、違うな。その変態のおっさんが避けてたら後ろの姉ちゃん達や、雑魚共はミキータの攻撃で一掃されてたはずだ。だから身を呈してミキータの攻撃を受けて威力を殺した。そうだろう?おっさん!!」


 稲妻(エクレール)の衝撃はまさに天から降り注ぐ稲妻の如く大地を穿つ一撃であり、ミキータは開戦と同時にこの技で数々の船の竜骨を砕いて船を沈めてきた“船殺し”と呼ばれる所以である。


「「「えっ……!?」」」

「チュパ……そんな昔の話は忘れたよ…お前達下がってろ。“船殺し”に“大食らい”コイツらはお前達じゃ相手にならねぇ。」

「「「ハードボイルドぉぉぉぉ!!」」」


 そのボニーの言葉にドフラミンゴの部下たちが騒然となる中、一番重傷なはずのセニョールピンクは部下達の心配をして彼等を下がらせる。


「ちっ……ミキータは既にプロレスラーのおっさんとやり合ってやがるから、ハードボイルドなおっさんの相手はあたしだな。後ろの姉ちゃんや雑魚共には手を出さねぇから安心しな!!」


 そんな男気溢れるセニョールピンクを気に入ったボニーは彼の呼び方が“変態のおっさん”から“ハードボイルドなおっさん”にランクアップし、さらに彼が気兼ねなく戦える状況を提案する。


「尻の青い嬢ちゃんかと思えば中々いい女のようだ。いいだろう。受けて立ってやる……チュパッ!」

「吠え面かくなよ!!」


 ボニーがチラリと横を見ると、セニョールピンクをやられた事に激昂したマッハ・バイスがミキータに襲い掛かり、激しい戦いを始めている最中だった。 
 

 
後書き
次の更新は2日。

ミキータ、ボニーの活躍をご期待ください。 
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