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無限の愛情こそが

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第二章

「ワンワン」
「いい子ですね」
 黒く垂れ耳の優しい中型犬を見て話した。
「他の子もですが」
「この施設はです」
 施設のスタッフの一人がジョージアナに話した。
「犬小屋がないですね」
「そうですね」
「それはあえて置かず」
「自由な場所にして」
「それでどの子達も仲良く接する様にして」
「穏やかな環境の中で」
「心を開いてもらって」
 そうしてというのだ。
「人と幸せに過ごせる様にしています」
「そうした方針ですね」
「この子はベティといいます」
 スタッフは犬の名前も紹介した。
「ここに来て二年位になって今度里親に家族に迎えられますが」
「何かあったんですか?」
「ここまで心を開くまでに時間がかかりました」
「二年位って言われましたね」
「他の子は長くて一年かからないんです」
 ジョージアナに少し困った顔になって話した。
「心を開いてくれるまで」
「そうして心ある人に家族に迎えられるんですね」
「そうなんですがこの子は」
 ベティはというのだ。
「ずっとです」
「二年位ですか」
「六百日位でしたね」 
 そこまでというのだ。
「ずっと僕達を見ても他の犬とも打ち解けないで」
「怯えていましたか」
「隅っこで。ご飯やお水を食べても」
 それでもというのだ。
「本当にです」
「怯えた感じだったんですね」
「手渡しで食べようとしませんでした、ですが」
 それがというのだ。
「皆で根気よく優しく接していたら」
「それで、ですか」
「六百日程経ちましたが」
 それでもというのだ。
「僕達の手からおやつを直接食べてくれてここまで」
「打ち解けてくれたんですね」
「ここに来るまでに相当酷い目にあったんでしょう」
 ペティを見つつ悲しい目でこうも言った。
「ですが」
「これからはですね」
「もうそんなことはありません」
 決してと言うのだった。
「優しい人達に家族に迎えられます」
「そうなってですね」
「この子は幸せになります、どんな酷い目にあった子でも優しく真心を以て根気よく接していけば」
「心を開いてくれますね」
「そうですね」
「私もそう考えています」
 ジョージアナは自分の経験、パウラとのことも思い出しつつ答えた。
「まことに」
「ええ、ではこれからもお互いに」
「真心を以て接していきましょう」
 保護して接する生きもの達にとだ、こう話してだった。
 ジョージアナはペディの巣立ちを見送って研修を続けた。そしてルーマニアに帰ってからも活動を続けた。そこに真心と愛情を抱いて。


無限の愛情こそが   完


                 2021・12・26 
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