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アスカ 短編集

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雨の日の日曜日は

 
前書き
サードインパクト後の世界で、アスカとシンジがどう生きたのかを描いた作品の一つです。
個人的には、割とお気に入りだった非公開作品です。 

 
(2006年12月17日 執筆)

















『ねぇ、シンジ?』





僕の腕枕でまどろみながら、彼女はそうつぶやいた


『ん・・・なに?』


夢から覚めやらぬのか、君は僕の頬におでこをそっとくっつける


そして


まるで子猫がじゃれついているみたいに


すりすりして甘えている




彼女の前髪が、こそばしい


君の匂いが、ふわりと僕の鼻先を掠める




『・・雨・・・ばっかりだね・・・』


『・・・うん・・・』




僕と君との間を分け隔てているものは何もない


君は・・・少し小ぶりだが形のよい双丘を僕の腕にぎゅっと押し付ける


もうかれこれ小一時間も抱きまくら状態の僕




今の君は、いつになくご機嫌だね







窓の外は、雨







そっか・・・・全然気付かなかった


外の景色に目をやりながら呆けていると、ふいに君の唇が重なる


『・・・んっ・・・』


先程までの甘い“行為”の余韻が僕の中でうずく


その年不相応な君のなまめかしさに、思わず反応してしまう


僕自身が高まっていくのを見て、君はくすりと笑う


そしてふたたび耳元で囁く



『何かこう雨ばかりだと嫌になっちゃう・・・・滅入るってゆうかさぁ』



暗に同意を求めているのがわかる


意味なんて、別にない


ただ、僕と共感したいだけ


こういう時は


『うん、そうだね』


って言えば、君はきっと満足げな表情を浮かべてまったりするに違いない


お姫様のご機嫌を損ねないよう、いつもならここで相槌を打つところなんだけど


『・・・・・・・・』


何故か、この幸せなひと時に一石を投じてみたい衝動に駆られる


いや、”何故か”なんていうのは嘘




・・・理由はわかっていた・・・・




たわむれに・・・


『・・・そう?・・僕は別に・・・』


そういい終わらないうちに君が不機嫌になっていくのがわかる


『アンタって、絶対変っ!・・・晴れてる方が、ずっといいじゃない!』


もう慣れたけど


そういう言い方はいつもの君だった


いつものリアクション


それが・・・嬉しかった・・・


だけど君にとっては、おそらく寝耳に水


まるで猫の目のように、君の気分はくるくる回る


なぜそんな意地悪をするのと言わんばかり


烈火の如く、僕にまくし立てる


まったく・・・笑ったと思えば泣いたり怒ったり(僕が悪かったんだけどね)






ただ、そんな君がいつもと違っていたのは


君は天使の姿で僕の上にのしかかり


鼻先を突きつけながら


そして吐息が触れ合わんくらいに近くだったって事


こんな経験は、昨日までは知らなかった


僕の胸はどきどきして今にも張裂けそう


ある意味、キスよりもときめいた


その原因である君は、今は僕のそばにこうして寄り添っている


そんな君が・・・いつにもまして愛しくてたまらなかった




そう思ったら、知らぬ間ににやけていた・・・みたい


僕があまり動じていないのを見ると、君はムキになってまくし立てる




『ちょっとお! シンジってば聞いてるっ?』




でも


今の君は、明らかにいつもの迫力がない


ちっとも怖くないし、むしろ拗ねている君がかわいいとさえ思う


叱られているはずの僕の口元が緩んでいる事に気付いたのか、アスカは悔しいような、恥ずかしいような複雑な表情を浮かべ・・・


『・・・・もうっ!・・・まったく・・・』


聡明な君は、客観的に自分がどのような状況に置かれているかに気付き


見る見る頬を赤らめてゆく


“結ばれた”事はわかっているはずなのに


“素”に戻ると、裸で抱き合っていることが“あり得ない”事のように思えて途端に恥ずかしくなる


そんな君が慌てふためきすぐに顔を赤くしてしまうのを眺めるのは楽しかった







僕は、アスカに気付かれないように


“あの時”もらった十字架のペンダントを


手が赤くなるほど強く







固く握り締める






掌に・・・鮮やかな痛みが鮮明にはしる






うん、確かにこれは“夢”じゃない







そう確信すると・・・僕は少しだけ安堵のため息をついた

















          雨の日の日曜日は



















僕らがこうなってしまったのは、ついさっきの事


きっかけは、ほんの小さな出来事だった


はじめは


いつものように僕らは居間でテレビを見ていた


君はカーペットにお気に入りのクッションを敷いてごろごろ


ファッション雑誌か何かをめくっては


退屈そうに眺めていたっけ


僕はというと、ブラウン管から流れてくるありがちなトレンディー・ドラマとやらを見ていた


まあ、見ていたというよりも、瞳に映っていただけという方が正しいかも知れないけど


さすがに3回も同じストーリーを見れば、そりゃあ飽きるし真剣になんて見ない


第一、こういうのは中学生の僕にはまだピンとこないしね



それに



多分・・・・僕には色恋沙汰なんて一生縁がないだろうと思えたから




特に、僕の目の前にうつ伏せながら、その長く伸びた両足をもてあますようにぶらぶらさせているこの娘とは・・・・




そもそも、僕は見たいテレビがあってここにいるわけじゃなかったし




そう思った時、ふとアスカの方を見る




彼女も僕の視線に気付き、お互いの目が合う





『・・・・・なによ?』


『いや、別に・・・』


そんな歯切れの悪い僕の返答に失望したらしく、君のご機嫌は大きく斜めになり



『ああ~ん、もおっ!アンタといると退屈っ!つまんない!!』


『あは、ごめん』


そういいながら、僕は内心ムッとする


《そんなに退屈だったら部屋に戻ればいいのに》


僕だって、本当は自室に篭って好きな音楽を聴いていた方がよっぽどいいに決まってる




なのに




そういいながらも、何故か僕らは居間を出ようとはしない


僕が居間から出ない理由・・・・・


・・・本当は・・・


・・・・・少しでも長く、アスカと同じ時間を過ごしていたかったから






でも、”君”はどうしてここにいるんだろう?


つまらなそうにしながらも、僕の目の前からいなくならないのは何故?


自惚れでなければ


ひょっとして、僕と同じ理由かな?


いやいや、それはないよな


前にも、アスカが僕に気がある素振りを見せたことがあった


その気になった僕は、多分人生最大の勇気を奮ってアスカに『好きだ』って告白したんだけど・・・


あえなく撃沈


しかも・・・


よりによってトウジたちの前でそれを思いっきりコケ下ろされた事があったっけ・・・・


あれは恥ずかしかった


トウジやケンスケ、委員長たちの、同情とも哀れみともつかない表情が忘れられない


結局・・・あの時の僕はアスカにからかわれていただけだった



『・・・・・・・・』



思い出すだけでも、顔から火が出そうだ



だとすると


う~ん


ひょっとして・・・・


いや、多分そうだ


アスカは、僕の気持ちを知っている


だから


君に好意を寄せながらも何もできない僕の不甲斐なさを哀れんでいるのだろうか?


それはありうる


ああ見えてアスカは人の気持ちに敏感だし


普段は僕をからかうのに容赦ないくせに


僕が本当に悩んだり苦しんでいたりしていると、不思議とアスカはそばにいてくれた


そ知らぬふりをして




《仕方ないから、もう少しだけ側にいてあげるわよ》




なんてね




『・・・・・・・・・・・・』




なんだかなあ・・・


そう思ったら・・・・情けなくて、なんかとても凹んだ








でも、本当の理由は・・・・・わかっているつもり・・・・






・・・・多分・・・・寂しいからだと思う






だって・・・彼女には選択の余地が残されていないから・・・・







どんなに寂しくても







・・・僕で・・・我慢するしかないんだ・・・






それは






同情されるよりもずっと哀しい



だから僕は、それに気付かないふりをして、自分を誤魔化していた







くだらない・・・・僕の妄想の理由






















『シンジってばあっ!!』




ふと、我に帰ると、目の前でアスカが腕組をしながら僕を睨みつけていた


『・・・あ・・・と・・・・あ、あれ?』


『・・・・ようやくお目覚めのようね?』


『えっ?・・えっ???』


『・・・よくもまあ、アタシを前にして妄想モードに入れるわよねっ!』


『あっ・・・ごっ、ごめ・・・』




言い終わらないうちにアスカはすっと半身を引く




僕は内心『しまった!』と舌打ちをする


僕の拙い経験によると



この展開はまずい


非常にまずい(汗)



アスカは、人に無視されるのをとても嫌う


もちろんそんなつもりはなかったのだけれど


そんな言い訳などアスカには通用しない


”自分”に関心がない素振りを見せられるのが許せないのだ


次の瞬間には、間違いなく“蹴り”が僕の顔面に炸裂するだろう


戦自隊員をも一撃でのしてしまうという、あの伝説の“アスカ・ハイキック”だ


どうせやられちゃうんだ


なるべくなら、一撃で倒して欲しい


でないと、頼みもしない花柄の“特典映像”を拝まされた後


問答無用のダブルパンチでタコ殴りにされてしまう


僕は覚悟を決めて目をギュッと瞑る















『・・・・・・・・・・・?』



なかなか攻撃が来ないので僕は恐る恐る薄目を開く



『・・・・・・・・なに目え瞑ってんのよ、バカッ!』


『えっ?・・??』


『紅茶容れてってさっきから言ってるじゃない!』


『・・・あ?・・・そうだっけ?』


何だかまだ事態が飲み込めない


『キスでもしてくれると思ったワケぇ?・・・バッカみたい!』


『あ・・いや・・・その・・・違うよっ!』


『ん~~、もういいからあっ! ほらっ!、さっさと容れるっ!!』


『あ・・・う、うん!』



とにかく、最悪の事態は回避出来たらしい


僕はアスカの気が変わらないうちに慌ててキッチンへ逃げるように向かう


そして、水を入れた鍋をガスにかける


紅茶を容れるのは、何だか久しぶりだった


でもアスカの事だから、きっと突然そう言い出すだろうと思っていた


だから


紅茶以外にも、アスカを喜ばせるために密かに用意しているものがあった


食器棚からティーポットとカップを出し、お湯を注いで温める


冷蔵庫から、昨日手に入れておいた紅玉のスライスの乾物を出し、それをぐつぐつと煮る


温めておいたティーポットにセイロンを入れ、鍋で沸かしたお湯を注ぐ


蓋をしてティーコゼーを被せて蒸らす


一連の作業を淀みなくこなす


それは


もう何度となく繰り返されてきた僕だけのお役目


まるで


時の流れを感じさせなかった










『アスカ、お待たせ』


『お~そ~い~っ!』


待ちかねたように君が口を尖らせる


でも、そんな口調とは裏腹に


居間を紅茶の香りが漂うと


君の瞳は


驚きと期待で色めきたっている



『・・・え・・・・・シンジ・・・・これって・・・!?』


『うん  何だか、久しぶりでしょ?』


『・・・いい香り・・・♪』




それは・・・アスカの大好きなアップルティーだった




『よく見つけたわねえ』


『うん・・・まぁ、ちょっと大変だったけどね』


『へぇ・・・ちょっとだけ・・・・感心しちゃう♪』


『はは・・・まさか君に褒められるとは思わなかったよ』


『ううん、アンタにしちゃ上出来だわっ』


『・・・何か引っ掛かるなあ、その言い方』


『なに言ってんの! このアタシが褒めてあげてんの! 素直に感謝しなさいよ!』


『はいはい・・・君にはかなわないよ、まったく』


『ふふっ♪』




何の変哲もないただのアップルティーを、幸せそうにすする君


僕の方をちらと見て、嬉しそうに微笑む


それで、十分だった


それだけで、僕にとっての退屈な日常は華やかに彩られてゆくような気がした







でも、それで終わりにしてくれないのがアスカだった







『さすがにケーキとかはないわよねえ』


リンゴのフレーバーを楽しみながら、アスカは夢を見る


『うん・・・・生クリームとか、卵が手に入らないからね』


『何かつまらない世の中ねえ・・・・ザッハトルテが食べたいなあ・・・』


『う~ん・・・・それはちょっと無理かも』


『ううんシンジ、アンタなら出来るっ! 何とかしなさい!』


『いや、だから無理だって!』


『こおらっ!シンジッ!! アタシに逆らうなんてナマイキッ!!』


そういうとアスカは僕の胸に飛び込む


『わっ! や、やめてよっ!』


『やめないっ♪』


アスカは僕の腰に腕を回し



『むぎゅ☆』



マシュマロみたいな胸を押し付けながらのしかかる


『わっ!?(ドキ☆)』


そのままクッションの上に倒れこむ


そして君は僕の下腹部にまたがり、勝ち誇ったように見下ろしている


『くっく・・・相変わらず弱いわねぇ♪』


突然の展開に僕の思考がメリーゴーランドのようにぐるぐると回る


ていうか、女の子が・・・・アスカが僕に・・・・その・・・・こんな・・・・


『・・・・なに呆けてんのよ?』


不思議そうに、アスカは僕の顔を覗き込んでいる


『いや・・・だって・・・その・・・・何でもないよ・・・』


僕は自分のよこしまな思考を悟られまいと目をそらす


《ていうか、アスカってば早く降りてくれよっ!・・・でないと僕・・・》






・・・・というか・・・・ ちょっと・・・・・遅かったみたい(涙)






『ん?』


アスカが“何か”の感触に気付き、後ろを振り返り自分のおしりの辺りを見ている


《あ・・・やばい・・・(汗)》


『?・・・・・ひっ・・!?』


悲鳴と共に、アスカの顔色がサッと変わる


『ごっ、ごめんよアスカっ!・・・つまりこれはその・・・』


謝りながらも、頭の中で言い訳の台詞が渦巻く


でっ、でも・・・これは不可抗力だし・・・第一僕が悪いんじゃない


アスカがこんな事をするから・・・・


そうだよっ! アスカが悪いんだ!


どうしてくれるんだよっ!


どうやって責任とってくれるんだよっ!


おかげで僕は・・・・










・・・・・・殴られるんだろうな・・・やっぱ・・・(涙)




もう、どうにでもしてくれと思いつつ、そ~っとアスカの方を見る






後ろを振り返るアスカの横顔


りんごみたいにほっぺが真っ赤に染まってる


《・・・何か・・・かわいいなあ・・・》


と、思うのも束の間


次の瞬間には、その華奢な肩がわなわなと打ち震えていた


『・・・・シンジ・・・・』


声が上擦っている


『・・は・・・・・はひっ!』


声が裏返っちゃった(汗)






『・・・感じちゃってるんだ・・・・アタシに・・・』






『へ?』






『“へ?”じゃないわよっ!! このどスケベッ☆』



やっぱ怒ってる(汗)


怖くて顔が見れないよ(涙)


『・・・ご、こめん・・・あ・・いやでも・・・・・・ごめん・・・』


『男の子でしょっ!!目をそらさないでっ!!!』


『は、はいい~~っ!!』


悪びれる様子も無く、アスカは・・・僕の瞳をまっすぐに見つめていた


頬を・・・ほんのりと赤く染めながら・・・


僕もアスカの瞳を見つめ返す


恥ずかしかったけど





『・・・・ねぇ・・・』





『・・・な、なに?・・』


















『・・・アタシの事・・・・好き?』





『・・・え・・・・?』



















《えええええええ~~~~~~~~~っ!?》






何で?



何でそんな事を聞くの?



・・・アスカ・・・



ひょっとしてこれって・・・・





・・・・期待・・・・して・・・いいのかな?






いつぞやしっかりフラれた事も忘れ、ついふらふらとその気になる






僕って気が弱いくせに、懲りないというか・・・






アスカに真顔で問い詰められると






僕は・・・嘘がつけなくなる













『・・・うん・・・好き・・・だよ・・・』



『・・・・そう・・・』



『・・・あの・・・・アスカ・・・これってまさか・・・』



『・・・・・・・・・』



『・・僕のコト、・・・好・・』



『だっ、誰がアンタの事を好きだって言ったのよっ!! 勘違いしないでっ!!』



『・・・あ・・・・そう・・・・・そうだよね・・・・・・・・ごめん・・・・』



僕の、心の奥にたったひとかけ残っていた淡い恋心が溶けてゆく・・・


やっぱり・・・からかわれたんだよね・・・・



僕って・・・バカだ・・・






でも



それなら、どうして・・・



どうしてそんなに哀しそうな瞳をしているの?




そんな僕の様子を見て




アスカは・・・



『はあ~っ』とひとつ大きなため息をつくと、一言呟いた





『・・・・やっぱ、駄目ね・・・・』


『・・・えっ・・?』


『ああん、もうっ!』


そう言って頭をかきむしる


『シンジってばいつもそう!なんでそこで諦めちゃうワケぇ!?』


『・・・え・・・だって、その・・・』


『・・アタシはシンジの事・・・・・・だなんてひとことも言ってない・・・じゃない・・・』



語尾は聞き取れなかった


あとで思ったんだけど、アレがアスカにとって精一杯の譲歩だったんだと思う


でも、この時の僕は頭の中が混乱してて、その言葉の意味する所まで気付く事ができなかった







『・・・しょうがないわねえ・・・・』



『・・・?』



『今日は機嫌がいいから、特別にチャンスをあげる☆』



『・・・え?・・・チャ、チャンスって?・・??』


『このアタシからマウントポジションを取れたら・・・・』


『・・・と、とれたら?』


《・・・てか、何でマウントポジションなんだ?(汗)》




























『アタシのコト・・・・シンジの好きにしていいよ・・・』




























『・・・え・・・』








あれ?



あれ?



なんだこの展開は?



アスカのコト・・・・好きにしていいって・・・・



どうしてそんなコトを・・・



どうして?



どうして?



なんで?



ていうか、もしそうなったら僕・・・







どうしよう?



・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



・・・ん?・・・・まてよ?



よく考えてみたら、これって僕に勝ち目はないんじゃないか?



・・・・・・・・・・・




一応、確認してみよう










『・・・ね、ねえアスカ・・』


『はいは~い♪ 何かご質問ですかァ?シンジ様っ☆』


『これってさ、僕がアスカにマウント取られたまんま始めるの?』


『聞くだけ野暮! アタシ女の子なのよっ♪』


《・・・やっぱり・・・》


『あ、あの・・・それで僕が負けた場合は・・・・・・』


『バッカねぇ、そんなの決まってんじゃないっ!!』


そういうとアスカは握り拳に『はああ~っ☆』と息を吹きかける


《・・ああ、やっぱりそうなるんだ(涙)》




無駄な抵抗はやめよう・・・どうせかないっこないに決まってる




『・・もういいよ、アスカ・・・いっそ一思いに殺してよ!』


『ダ~メッ! そうはいかないわよっ!!』


『どうして? 結果なんか、端からわかりきってるじゃないか!意味無いよこんなの!!』


『アンタになくても、アタシにはあるのっ!!』


『どんな意味だよ?』













『無抵抗のシンジをタコ殴りにしたって、面白くないじゃない♪』












《へ~へ~、どうせそんなこったろうと思ったよ・・・(涙)》




『シンジが負けたら、アタシのコトは“ご主人様”って呼びなさいっ♪』


『やっ、やだよそんなのっ!』


『だったらアタシに勝つことねっ☆ 悪い条件じゃないと思うんだけどなァ♪』


もう既に勝ちを確信したかのように、アスカはにやにやしながら僕を見下ろしていた


『なにしろこのアタシを好きに出来るんだからねっ!』


《・・・よくいうよ・・・》





どうしてアスカはこういつもいつもろくでもない事ばかり思いつくんだろう?


いつも僕をおもちゃにして・・・・


『・・・・・・・・』


何だか・・・だんだん腹が立ってきた


勝てないまでも、出来るだけアスカを困らせてやるっ!


いつまでもアスカのいいなりじゃないぞっ!!





『・・・いいよ、やろう!!』


僕はいつになく強気でそう言い切った


それに対し、アスカは






『あ・・・・そう・・・・うん・・・』


と、小さくうなづくだけだった


『・・・?』


罵声を浴びせられるとばかり思っていたのに、アスカの態度はあまりにも意外で


何だか拍子抜けした






《・・・なんかの作戦かな?》




多分そうだ


アスカの事だ


僕がいつもと違うアスカの様子に気をとられている隙に、一発いいのをお見舞いする作戦に違いない


だったら僕は、腰を跳ね上げて軌道を逸らしてやる


あとはなりゆきにまかせよう








『・・・いくよ・・・』


『・・・・うん・・・・』


アスカは僕と僅かに目線を逸らす


誘いだとわかっていたが


すかさず僕は下からアスカに掴みかかろうとする


その瞬間、アスカの瞳がキラリと光るのを僕は見逃さなかった


『チャ~ンス♪』(と言ったかはわからないが)


ノーモーションからいきなり僕の顔面めがけてパンチが打ち下ろされた


《やっぱり!》


予想していた攻撃


その瞬間だけを待っていた僕は、とっさに腰を跳ね上げる


『あっ!?』


バランスを崩したアスカの拳の軌道がそれ、僕の右耳をかすめる



と、次の瞬間



『ふわっ☆』



『・・・え・・?』





僕の視界が・・・一枚の大きな黄色い花びらに覆われる



その真ん中には、いちごのぱんつ☆



まるでパラシュートを広げたみたいに



アスカの体が・・・ふわりと宙に浮かんでいた





『きゃっ☆』



空中であわててスカートを押さえるアスカ



《わっ☆》



無意識に僕は両手が塞がり隙だらけになったアスカの腰を掴む



《えっ!?》



まるで自分の太ももを掴むような錯覚



『うあっ・・・・細いっ☆』



僕のイメージからすると、それは信じられない位に華奢な腰だった



そして



《・・・か・・・軽い・・・!?・・》



アスカは、僕の腕力でさえ重さをあまり感じない



《・・アスカってこんなに軽かったんだ・・・・》



まるで羽を掴んでいるみたい



『やっ、やだっ☆ ちょっと、離してよっ!!』


アスカは、まるで『高い高い♪』をされた子供みたいに、差し上げられた僕の掌の中でじたばたしていた


一瞬にして形勢は逆転


『ちょっとお、降ろしてよこのバカシンジッ!』


その声を聴いた瞬間


僕の中で“何か”がプッツリと音を立てて切れたような気がした



『・・・あれえ? そんな事言ってもいいのかな♪』


アスカのお腹に触れている僕の指がピクリと動く


『あ♪(ビクッ☆)・・・・・や・・・ちょっと・・・・まさか・・・(汗)』


僕の次の“手”を悟ったのか、アスカの顔色が変わる


そう・・・


万全を期すため、僕は更なる攻撃を加えるコトにした


『覚悟はいい? アスカ♪』


かつてない優越感に浸り、僕は少々調子に乗っていた


多分、こんなチャンスはもう二度と巡って来ないだろう


やれるときにやり返しておこう


どうせあとでまた殴られるんだし(涙)



『・・や・・やめて・・・』


悲壮感漂うアスカの懇願も空しく・・・


僕はにやりと笑う


『やめないっ♪』


次の瞬間、アスカのお腹に触れている僕の指がうごめきはじめる


『きゃっ、やはっ、ちょっ・・・あはっ、だっ・・・だめえっ☆』


悶絶するアスカを抱えたまま、僕はそのまま体を捻り、入れ替える


『やあっ・・・こ、・・・あん・・・ず・・・ずるい・・・ひっ☆・・ひいい~っ☆』


それから、アスカには一分ほど“天国”を堪能させて・・・


『は―っ☆ は―っ☆・・・・も・・・もうらめぇ☆・・・赦してぇ・・(涙)』


笑い疲れてぐったりするアスカの両腕を押さえつけ


そして僕はゆうゆうとアスカの上にのしかかる










終わってみれば、実にあっけない














『・・・・アンタの勝ちね・・・・』


涙目になりながら悔しそうに君がぽつりと呟く


『・・・・え?・・・・あれ?・・・・』


ちょっとズルしちゃったけど


まさか本当に勝っちゃうなんて思わなかった


でも、僕に負かされて落ち込んでいるアスカを見るのは、なんだかとても嫌だった


やっぱり・・・いつものように負けていればよかった・・・


そう思ったら、ついいつもの口癖がこぼれる



『・・・ごめん・・・』











『・・・・ばか・・・』


僕がこの結果に戸惑っていると、アスカは呆れたように言った


『あのねえ・・・普通に考えてアタシがシンジにかなうわけないじゃない☆』


『え?・・・そ、そうかな?』


『そうよっ! 体格だって・・・ウェイトだって全然違うんだからっ!』


『でっ、でもっ、アスカは組み手で戦自隊員をのしちゃったって・・・』


『それは拳法の組み手での話・・・それもたまたまいいのが入っちゃったってだけよ・・・・捕まれちゃったら、何も出来ないもん・・・』


『アスカ・・・ひょっとして、僕に負けるってわかってたの?』


『・・・まあ・・・ね・・・』


『どうして負けるってわかっててこんなコトを・・・』


『・・・・どうでもいいけどさ、シンジ重い~っ☆ いつまで乗っかってんのよ、バカッ!!』


『あ、ご、ごめん』


僕はアスカに身を重ねていることを思い出し、思わず赤面する


そのままごろりと身をよじり、アスカの横に並ぶように仰向けに寝転がった


『アンタがあんまり情けないからさ・・・・それだけよ・・・!』


『・・本当に?・・・それだけ?』


『あ☆ あと退屈だから♪』


『・・・・・(汗)』


そういうとアスカは起き上がり、自室へと向かう


『何かちょっと疲れた・・・・すこし横になるね・・・・おやすみ、シンジ・・・』


そう言って部屋の扉に手をかけた














『・・・ちょっと待ってよアスカッ!!』








『ぎくうっ!?』








『・・・な、なに?』


『何か忘れてない?』


『えっ・・・えっとお☆・・・・あははははは・・・何かあったかしら?(汗)』


『確か・・・勝った方は負けた方を好きにしていいんだったよね?』


『そ、そうだっけ?・・・やだっ♪ あははは・・・アレ本気にしてたワケ?』


『さっき・・・本気で僕をのしちゃうつもりだったでしょ?』


『あ、バレてた?・・・あれは・・・その・・・』


『約束したよね?』


『・・・あ・・・うん・・・・はい☆(シクシク)』


『それじゃあ、まずは・・・・』


『あ、あの・・・シンジ・・・』


『・・なに?』


『ヒニンとか、ちゃんとしてよね♪』


『なっ☆ 何いってるんだよっ! そんなことしないよっ!!』


『ダメよっ!ちゃんとしなきゃっ! この年で子供なんか欲しくないもん☆』


『そ、そうじゃなくて、僕そんなコト・・・しないよ・・・』







『・・・・・・・しないの?』



『・・う・・・うん・・・・多分・・』


『・・・そっかあ・・・』



アスカは、ホッとしたような、ちょっぴり残念なような複雑な表情をしていた



『・・・それじゃ、どうするの?  何にもなし?』


『う~ん・・・ひとつだけ・・・いいかな?』


『・・・・・いいよ・・・・約束だもん・・・・なに?』














『僕のこと・・・・好き?』







『・・・・・!?』




『・・・・正直に答えてよ・・・・』






『え・・・・ちょっと待ってよ・・・それずるいっ☆』


『どうしてさ? アスカは僕の気持ち、知ってるだろ?』


『知らない、知らないっ☆ そんなの知らないっ☆』


『さっき言ったじゃないかっ・・・・好きだって・・・』


『・・あ・・・う・・・・』


『・・・もう・・・いいだろ?・・・・知りたいんだ・・・・アスカの・・・気持ち・・・・』


『・・・でも・・・言いたくない・・・』


『どうして?』


『だって・・・恥ずかしいし・・・』




・・・・それって言ってるようなものだと思うけど(汗)


でも・・・アスカの口から聞きたい





その言葉を





『・・・約束・・・だよね?』


『・・・う・・・』






『・・・もう一度聞くよ・・・僕のこと・・・・・好き?』




























僕は、アスカのそばに歩み寄り、腰に腕をまわす


そして君は、伏し目がちに・・・


僕の首に腕を回す




それから・・・




耳元でそっと囁く











『・・うん・・・・・好・・きぃ・・♪』























気がついたら・・・僕らは恋に落ちていた




ごく自然に僕らは求め合い




ごく普通の恋人同士のようになった





でも









アスカはやっぱりアスカだった














『アンタとはぜんっぜん気が合わないっ!』





ぷいと僕に背を向けてふくれる


本当にいつも通りのアスカだ(笑)




美しいブロンドの隙間から


透き通るように白いうなじや


折れてしまいそうなくらい華奢で細い腰が覗く



それが



とても綺麗だった






『・・・どうしてこんなやつと・・・』


まるでつい先程の事が一時の気の迷いであったかのように、君はぶつぶつと愚痴る


でも、なんでかな・・?


憎まれ口も、確かに本音なんだろうけど


今ではそれが照れ隠しでもあるって事もわかる


『・・・いや・・・そういう意味じゃなくってさ・・・』


なんの躊躇もなく、僕はそう切り出す


ついさっきまでの僕だったら、多分何も考えずに『ごめん』って謝って彼女をイラつかせていたに違いない


別にいいわけするつもりではなく


単に・・・素直な僕の言葉を・・・君に伝えたかっただけ




『・・?・・・どういう意味よ?』


さっきまでの不機嫌はどこへやら


今までの僕とは違うリアクションに、君は気を惹かれたみたい


さも、『興味ありません』みたいなふりをして


横目でちらと僕のほうを見る君の仕草が愛らしかった



『・・・その・・・雨が降ってるって気付かなかったんだ・・・・』



『え?・・・どうして?・・・あんなに雨音を立ててるのに???』



不思議そうに、海の色をたたえた瞳で僕の顔を覗き込む


僕は、この瞳に弱い


吸い込まれてしまいそうなくらい、深くて青い・・・瞳


いつまでも、こうして君と見詰め合っていたい・・・


それだけで・・・僕はしあわせだった




『・・・だって・・・・君に夢中だったから・・・・その・・・』



『・・・え・・・?』



『・・・・・・・・』



『・・・・・・・・』



『・・・・・・・・』



『・・・・・・・・』



『・・・・あの・・・アスカ・・・!?』




覗き込んだ君の顔が


トマトみたいに見る見る真っ赤に染まってゆく


つま先から・・・ゴホン・・・耳たぶまで・・・全身が綺麗なピンク色に染まっていた



『・・バッ・・・バッカじゃないのっ!!』



そう言うのがやっとだった


口調こそいつもの憎まれ口だったものの、二の句を告げられずに口をパクパクしていた
































今・・・・僕らの置かれている深刻な状況は、僕のような人間にとっては大して不幸な事とは思えない


いや、むしろ好都合であったと言えるかも知れない


でも


アスカ・・・


君にとっては


輝かしい未来を永久に失ってしまった


最悪のシナリオに違いなかった




きみにとって不利なこの状況に



僕は・・・・甘えたくなかった



それは卑怯だと思ったから















『・・・ねえ・・?』


おずおずとアスカが口をひらく


『その・・・さっき言ったのって・・・・本当?』


『・・・本当さ・・・』


『・・・冗談じゃなく?』


『・・・うん・・・』


『・・・・・・・』


そう言って僕はアスカを抱きしめる



『・・・あ・・・



・・・うん・・・



・・・えと・・・



・・・あ・・・



・・・ありがと・・・』




何だか返答にもなっていない言葉が君の口からこぼれる


君はもう恥ずかしさで消え入りそうなくらい小さくなっていた




ああ・・・今までの僕は、なんて馬鹿だったんだろう


君は、こんなにも可愛い女の子だった


もっと早く・・・君の気持ちに応えてあげればよかった


僕の気持ちを・・・伝えればよかった





後悔しても、全てがもう遅かった





僕らは・・・しばらくこうして抱き合っていた


始めは恥ずかしがって顔をうずめていた君


まだ、ほんのちょっぴりプライドが邪魔をしているのか、中々すっきりと現実を認められないみたいだ


僕は・・・君が戻ってくるのを


ゆっくりと待った








半刻位はこうしていたかな?


『・・・・・・・た・・・』


『・・・・えっ?・・』


ようやく君が口を開く




『・・・・お腹すいた・・・』


『・・・え・・・?』


開口一番がそれか(汗)


『ブッ!!』


僕は思わず噴出す


でも、君は少し照れながら、悪びれずに答えた


『・・・だって、お腹すいたんだもん!』


『そうだね・・・そういえば今日はまだ何も食べてなかったっけ・・・・何か作るよ!』


『・・・・いい・・・』


『・・・えっ?』


『・・・外に・・・食べにいこ・・・』


『えっ・・・で、でも、外は雨だよ?・・・嫌いだろ?・・雨?・・・・それに・・・』


君は・・・少し照れながら答える


『・・・雨も・・・』


『・・・雨も?・・』


『・・・ちょっと・・・・いいかな~・・・・なんて・・・ね・・・』




『・・・え・・!?』




あれ?


あれっ?


君ってこんなだったっけ???




僕の思考がフリーズした




今度は・・・


君が・・・僕が戻ってくるのを、ゆっくりと待つ番だった

















―epilogue―



















『・・・雨だ・・・』




『・・・雨ね・・・』




僕らは一本の傘を二人で持ちながら、コンフォート17のエントランスで呆然と立ち尽くしていた


外は想像以上のどしゃ降りで、とても傘一本で何とかなるような状況ではなかった




彼女は雨に濡れるのが大嫌いだった


理由はよくわからないけど、子供の頃に何か嫌な思い出があるとか言ってたような気がする


朝から雨模様だったりすると、そもそも学校にさえ行かない


天気予報で1%でも降水確率があるなら、必ずと言っていいほど傘を持って出かけた(実際に携行するのは僕だが)


夕立が来て靴に泥はねでもしたらもう大騒ぎ


どしゃ降りの時は、わざわざ徹夜明けでグロッキーのミサトさんを迎えに来させたりもしてたっけ(汗)


だから、雨の日の君には誰も近寄らなかった


僕以外はね


みんなの期待を一身に背負って、とばっちりを食うのは僕の役割だった


まぁ、いいけど


そんな君が、この雨の中を傘で出かけようというのだからわからない


しかも・・・二人で傘一本・・・・(汗)


女の子って本当によくわからない


まぁ、でも相々傘なんて僕も初めてだったし、悪い気はしない


というか、正直にいうととても嬉しい


でも、これはちょっと降りが激しすぎだった


5m先も見えないほどの土砂降り


さすがの君も、考え込んでいた


あんまりにも真剣に悩んでいる君が、何だかとても可愛かった





『や、やっぱりさ、やめようよ・・・僕がなにか作るからさ』


『う~ん』と唸りながら、なおも考え込む君


『でも、いつもシンジばかりに探させて悪いもん・・・今日はアタシも手伝う♪』


ずいぶん殊勝なコトを言うなぁ・・・・まるでアスカじゃないみたい(笑)










『・・・ね、シンジ・・・』


『・・・なに?』


『・・・今日・・・何の日だか知ってた?』


『さぁ、どうだったかなあ?・・・確か日曜日だったような気がするけど・・・』


『・・・日曜日は当たり♪・・・でも、それだけじゃないの・・・・』


『・・・・君の・・・誕生日だろ?・・・15才の・・・・』


『・・・知ってたの?』


『・・・一応・・・プレゼントのつもりだったんだけど・・・あの紅茶・・・・』


『・・・あ・・・それで・・・!』



雨脚が・・・徐々に弱まり、それまで何も見えなかった目の前に、うっすらと物陰が姿を見せ始める



『なんかさ・・・もっと色々してあげたかったんだけどね・・・』


『ううん、嬉しかった・・・・・・・だって無理ないわよ、この有様だもの・・・』

























雨が、やんだ

























そこは、かつて第3新東京市だった場所











コンフォート17のエントランスを一歩出れば、そこは一年前と変わらない







ただ、ただ・・・・廃墟が広がっているだけだった








そこはもう、誰もいない世界










シンジと・・・・



アスカ以外は・・・・誰も・・・














『・・・ね、知ってる?』


『・・・何を?・・』


『その昔、神様は天地創造をおこない、七日目にその全ての作業を終えて休まれたんですって・・・』


『・・・そう・・・だね・・・』


『でも、その結果がこれだなんて、あんまりだと思わない? テレビも録画ばっかだし、お洒落なケーキ屋さんだってないんだもの!』


『・・・ごめん・・・』


『・・バカね・・・アンタだけが悪いんじゃないわよ・・・これは、みんなが望んだ結果でもあるんだから・・・・・・』


『・・・そう・・・だけど・・・』


『・・・それにね・・・この世界はアタシが望んだ世界でもあるの・・・・』


『・・君の?』


『・・・シンジがいれば、他になにもいらない・・・・なんて、ちょっと失敗だったかも♪ ケーキ屋さんとコンビニくらいは残して置けばよかったわよね♪』


『・・・え・・・・そう・・・だったの?』


『・・・ばかぁっ! 聞き流してよっ! 言うの恥ずかしいんだからぁ・・・』












まさかと思うけど・・・・










アスカ・・・君はひょっとして・・・・


















僕らは、エントランスを出て廃墟の街を歩き始める



僅かに残された民家や商店街を彷徨い、“食料”を探す



外の風景は、あの時のまま・・・



・・・リリスの亡骸と・・・・



十字架に磔けられた“天使”たちの墓標・・・







僕は薄々気がついていた






いや、気付かないふりをしていただけかも知れない・・・・








この世界は多分・・・・・・・








いや、言うまい







全ては・・・もう過ぎてしまった事・・・・














『・・・・・アタシたち・・・・アダムとイヴになるのかなあ・・・』







誰に問いかけるでもなく、自問するようにアスカは呟く









『・・・・どう・・・かな・・・・・』








『一年間も女の子と二人っきりなのに、全く手ぇ出さない“アダム”ってのもどうかと思うけど』







『・・・・さっき出したよ・・・・』







『“イヴ”が誘惑したからじゃない! アタシに先代と同じ過ちを繰り返させるワケぇ?』







『・・・・・・・・』






アスカは・・・・多分、気が付いている・・・






この世界の・・・・意味・・・






『・・・・ねぇ・・・・』





『・・・ん・・・?』





『・・・アタシ・・・いいお母さんになれるかなあ?』





『・・・・・・・・』





『今はとても無理だけど・・・でもいつか・・・』





『いつかアタシもシンジも大人になって・・・・もっとやさしい気持ちになれたなら・・・・・』





『・・・・アスカは・・・今だってやさしいよ・・・』





『・・・嘘っ!』





『・・・嘘じゃないさ!  そりゃあ僕にしかわからないけど・・・』






『それじゃあ意味ないじゃない!』





アスカは苦笑する





『・・・・あんまり・・・悩むのやめなよ、シンジ・・・・』



『・・・悩む?  僕が?』



『隠したって駄目・・・せっかく・・・アンタの生きられる世界になったんじゃない・・・・』



『・・・・・・・・』










『・・・アンタについて来た・・・アタシの身にもなってよ・・・・』
























アスカ・・・・君は・・・・








全て・・・









全て承知の上で、この世界に残ったの?











僕の・・・為に?




























『・・・アタシのためよ・・・』



『・・・アスカ・・・』



『あんまり買いかぶらないで・・・・アタシはただ・・・』



『・・・シンジと・・・いたかっただけ・・・・』














『・・・それだけなの・・・』


















『・・ねぇ・・シンジ・・・』




『・・・なに?・・・』




『・・・・なんかしてよ・・・・』




『・・・・なんかって?・・・・』




『・・・・・・・・・・』




『・・・・・・・・・・』




『・・・・・・・・・・』




『・・・アスカ・・・』






『ね・・・・キス・・・しようか?』




『・・・え・・・?・・・』




『・・・あの時の・・・続き・・・・忘れたとは言わさないわよ・・・』
























『・・・うん・・・』





























―fin―
 
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