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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百二十七話

 
前書き
強くて優しいゼファー先生が伝わるかな? 

 
 ここは海軍本部の訓練場、ここで黒色坊主に近い短髪で黒色サングラスを掛けた中年将校がゼファーを呼び出していた。


「ゼファー先生、遅い時間に無理を言って申し訳ありません。」


 この男こそ、ドフラミンゴの部下にして海軍本部中将“鬼竹”のヴェルゴであり、彼はゼファーに対してマンツーマンでの訓練を依頼し、ゼファーは二つ返事でこれを快諾して新兵訓練を終えたこの時間にヴェルゴに訓練所に来るように伝えていたのだ。


「気にするな。この時間を指定したのは俺だ。ヴェルゴ、お前の活躍は聞いている。曲者揃いのG-5を希望し、よく纏めているそうだな。」


 G-5とは新世界にある海軍本部第5支部のことで、荒くれ者の海兵達が集ういわゆる窓際部署であり、ヴェルゴは荒くれ者だらけのG-5支部基地長でありながら、本人は荒くれどころか紳士的な良識人で、部下や市民からの信頼も厚い好漢である。


「先生のご指導のおかげです。」


 ゼファーは丁寧にお辞儀するヴェルゴの頬を見て呆れた顔を浮かべながら、疑問を投げ掛ける。


「ところでヴェルゴ、今日の夜飯のハンバーグは美味かったか?」

「好物です。何故俺がハンバーグ定食を食べたと知ってるのですか?」

「頬に食べカスが付いてる。盛大に食べカスを顔につける癖は直ってないと見えるな。」


 ヴェルゴの頬には食べカスと言うにはあまりにも大きく、たった一口齧っただけのハンバーグがベッタリと付いていた。

 むしろ自分で気付かない方が不思議なくらいだが、ヴェルゴは全く気付いておらず、ゼファーに言われて頬を触りハンバーグを口に放り込む。


「もぐもぐ……俺の事よりも先生は右腕を失ったお聞きしましたが?その腕は……!?」


 ゼファーがヴェルゴの頬に付いたハンバーグが気になったように、ヴェルゴはウィーブルとの戦いで右腕を失ったはずのゼファーの右腕が健在している事に驚いていた。


「これはゴジが作った義腕だ。まぁ、気にするな。無駄話はこれくらいでいいだろう。さぁ来い!久々にみっちりと稽古を付けてやる!!」


 ヴェルゴはゼファーを呼び出す口実として稽古を付けてもらうように頼み、ゼファーは二つ返事で快諾して今に至るのだが、彼は動揺している。

 ゼファーは代名詞である両腕を黒く硬化させてヴェルゴを待ち構えるので、ヴェルゴも両腕を黒く硬化させた。


「お……お願いします…!“剃”……“指銃”!!」


 1つはゼファーの右腕が本物そっくりな義腕であること。


「ふん……まぁまぁな速度だが、ぬるい!!」


 ゼファーはヴェルゴの右手から放たれた指銃を右手を広げたまま、指の間に挟んで受け止めるとそのままヴェルゴの拳を鷲掴みにして、左腕でヴェルゴの顔面を殴る。


「“鉄塊”!ぐはっ!?なっ……!!?」


 ヴェルゴは顔面を覇気で黒く硬化させてゼファーの黒腕から放たれた拳を受けたが、覇気で受け止めたにも関わらず、よろけてダメージを受けたことに動揺する。


「どういう事だ……やはり筋力は十年前よりも多少衰えてはいるが、この覇気は一体……ぐぼっ!?」


 ゼファーは動揺するヴェルゴの腹を右拳で殴り飛ばすと、彼はそのまま訓練所の壁に激突する。

 武装色の覇気を纏う体でダメージを受けた理由は一つ。殴った相手の武装色の覇気が自分のそれを上回っている場合である。


「戦いの最中に考え事とはな……昔のお前はそうではなかった。徹底的に稽古を付けてやる。ヴェルゴ、遠慮せずに鬼竹を使え!!」


 ゼファーは右手クイクイっと動かして代名詞である背中に背負った竹竿を使うように示唆しながら起き上がってくるヴェルゴを誘う。

 ヴェルゴは背中に背負った1.5m程の長さの竹を右手に持つと竹ごと黒く硬化させて“剃”で距離を詰めながらゼファーに迫る。


「確かに俺の武装色の覇気はゼファー先生の武装色の覇気を超えたはず……何かの間違いに違いない。“鬼・竹(おに・たけ)”!!」


 ゼファーはヴェルゴの神速の竹を右腕一本で軽々と掴んで受け止めると同時に左拳で彼の顔面を殴り付けた。


「ふんっ!!」

「なっ……ぐはっ!?」


 現在一線で活躍している海軍将校のほとんどがゼファーの教え子であり、彼は“全ての将校を育てた男”と呼ばれているが、彼の訓練は単純明快、実戦形式でボコボコにされながら育ってきたのだ。

 そんなゼファーが右腕を失ったと聞き、稽古と称して新兵時代の鬱憤を晴らそうとする大将“青雉”始めとした多くの将校達は全て返り討ちにあっていた。


「ヴェルゴ、動きが正直すぎる。感情が高ぶっている証拠だな。なるほど……お前もやはり右手を失った俺に新兵時代の恨みを晴らそうとするクチだな?」


 ゼファーは壁に激突しながらも立ち上がろうとするヴェルゴと一瞬で距離を詰めると、右拳で顔面を殴り付ける。


「くっ!?なっ……先生……その右手は一体……!?」


 しかし、すんでのところで地面を転がるようにゼファーの拳を躱したヴェルゴが見たのは壁にめり込んだゼファーの拳を起点に蜘蛛の巣状に亀裂が走っていることである。

 ヴェルゴは、ゼファーの左拳による攻撃ではたたらをふむ程度が、指銃受け止め、自分を殴り飛ばしていたのはゼファーの右手だったことに気付いて目を丸くする。


「ちっ……つい力が入りすぎた。まだこの右腕の力を完全には制御出来ん。またセンゴクにドヤされるな……この右腕は平和主義者(パシフィスタ)の腕を改造したものらしい。」


 ゼファーに移植した腕は鋼鉄を超える世界最硬度の物質で作られた平和主義者(パシフィスタ)の腕であり、身体に負担の掛からない機械の腕だからこそ、右腕だけは常にゼファーの力を100パーセント引き出せるようにゴジが手を加えていた。

 ゴジがレイドスーツの扱いに四苦八苦しているようにゼファーも強すぎる右腕の力の使い方を日々学んでいる。

 確かに年老いて身体能力も現役時代よりも衰えたゼファーだが、その義腕の右腕だけは若き日の大将の力そのものであり、ヴェルゴの渾身の鬼竹を軽々と受け止め、易々と訓練所の壁を砕く力がある。


「まさかゼファー先生の覇気が強くなってるのも“黒麒麟”が何かしたのですか!?」


 ヴェルゴはゼファーの覇気が以前よりも強くなったこともゴジが関わってるのでは疑問に思った。


「覇気か……ヴェルゴ、知っての通り覇気とは意志の力だ。かつての俺は正義に疑問を抱いていた。一線を退いて新兵の訓練官を引き受けたのは俺の逃げだったのだろう。」


 かつてのゼファーは妻子を失って以来、海軍の正義に疑問を持ちながらも仲間に自分と同じ想いをさせたくないという情熱を胸に秘めて次代を担うヒーローとなる海兵達を育て続けてきた。


「でも、ゴジが気付かせてくれたんだ。俺は正義から逃げたんじゃねぇ。お前達という次代のヒーローを守り育てるこそ俺の“体現する正義”だとな。」


 ゼファーの背負う“体現する正義”は次代を担う絶対的正義の体現者である若き海兵を守り育てることであり、正義への誇り取り戻した今のゼファーが持つ意志の力は海軍本部大将と呼ばれた時と遜色ない。

 ヴェルゴは世界最高峰の技術の結晶である右腕と長年の経験による勝負勘、そして自分よりも格上の武装色の覇気を合わせ持つゼファーを前に苛立ちを隠せない。


「ちっ……“黒腕”のゼファーの力を見誤ったか?格上の武装色の使い手を相手に加減など出来るはずもない。仕方ない貴方を殺します。ゼファー先生!!」


 ヴェルゴは己の間違いに気付いたが、もはやゴジがドレスローザ上陸を目前に控えた今作戦を変更出来ない。最悪彼の遺体でもゴジを止める人質として役に立つと踏み、全力でゼファーを殺す為に覇気を漲らせていく。

 彼がゼファーの実力を見誤った主な2つ。

 1つ目は海軍本部基地から離れたドフラミンゴとの連絡の取りやすい窓際部署を希望したこと。2つ目は“黒腕”のゼファーを現役を退いた脱落者と見なして詳しい調査せず、伝聞情報を過信したことである。

 ヴェルゴが過去にゼファーへ再稽古を望んだ将校達に聞いた話は『もう少しで勝てた。』、『ゼファー先生も歳には勝てない。』等であったが、考えても見てほしい。

 右腕を失った高齢のゼファーへ鬱憤を晴らしに行って返り討ちに遭った将校達が『やはりゼファー先生には敵わない。』、『失った右腕に平和主義者(パシフィスタ)の腕が付いてさらに強くなっている。』、『昔よりも覇気が圧倒的に強くなっている。』と正直に話すはずもない。


「そうだ。それでいい!ヴェルゴ、俺を殺す気で来い!!」


 ゼファーは本気になったヴェルゴに応える為に武装色の覇気を両腕に纏って硬化させる。

 ヴェルゴは一度ゼファーから距離を取ると黒く硬化した竹を両手で持つとその端を口に咥え、反対側をゼファーに向ける。


「お得意の吹き矢か?俺も新しい飛び道具を試してみるか?」


 竹筒に空気を送り込むと武装色の覇気で硬化したはずの竹が吐き入れられた空気によりぷくっと丸く脹れ上がり、最後には竹筒の中で膨張した空気に押し出された吹き矢が音速を超える速度でゼファーに発射された。


「吹き飛べ!ゼファーぁぁぁ!!!」


 ただの吹き矢と侮ることなかれ、その矢は小型の砲弾であり、その威力は船一隻に風穴をあけて船内で爆発し、一発で大型の船を沈めてしまう程の威力がある。


「俺を呼び捨てとは一から教育が必要だな。いくぞ。ボルサリーノ風に言うと……確かこうだったか…“れーざーびーむ”!!」


 ゼファーは右掌をヴェルゴに向けると、掌から銃口が現れる。

 その銃口が明るく光輝くと太陽光を利用したボルサリーノのピカピカの実の能力を模したビームが光の速度で発射され、ヴェルゴの吹き矢から放たれた砲弾を飲み込みながらヴェルゴに迫っていく。


「まさか……それは平和主義者(パシフィスタ)のビーム兵器!?そんなものまで!!くっ……“鉄塊”!?」


 ゼファーはヴェルゴの真っ直ぐに飛んでいく右手から放たれたビームを見ながら、笑顔で語るゴジの顔を思い出した。


『爺さん、ビームはロマンなんだぞ。』

「ガハハハハ!!これがゴジの言うロマンか?中々爽快だな!!」


 ヴェルゴは黒く硬化させた両手をクロスされる事で何とか受け止めたが、その威力により訓練所の壁まで弾き飛ばされた。

 ゼファーは自分の腕から発射されたビームを見て笑っているが、ヴェルゴは余裕綽々なゼファーに対して怒りのあまりに全身に武装色の覇気を纏って黒く硬化させる。


「くそ!?“黒麒麟”余計な真似を……ならば小細工なしに全力で殴り潰すだけだ。死ねぇぇぇぇ!?」

「全身硬化か?強くなったなヴェルゴ…さぁ、来おおぉぉい!!」


 武装色の覇気により全身を黒く硬化したヴェルゴの雄叫びと教え子の成長を喜ぶ楽しそうなゼファーの声が訓練所に木霊していた。


 ◇


 ロビンから『ヴェルゴがドフラミンゴのスパイでありゼファーを捕らえようとしている』という連絡を受けたつる急いで新兵訓練所に走った。


「今日ヴェルゴは自身を鍛え直すためにゼファーに教えを乞い、海軍本部に来ていたはず……それがゼファーを誘う罠に違いない!!」


 つるが新兵の訓練所に向かうとそこに既に二人の姿はなく、壁の一部が崩壊して地面に大穴が空き、激しい戦闘の後が生々しく残されていた。


「まさか……ゼファーに限ってそんなことは……」


 最悪の事態を覚悟したつるは急いで海軍本部基地を捜索すると、何事もないように医務室から一人で出てくるゼファーを見つけた。


「はぁ……はぁ……ゼファー、あんた……ヴェルゴと会ってないかい?」


 息を切らせたつるは息を整えながらゼファーに確認をとると、ゼファーはあっけらかんと答える。


「ん?つる……息を切らせてどうした?ヴェルゴなら医務室のベットに放り込んだところだ。怪我はそこまで酷くはねぇが覇気の使いすぎでくたばってる。全身硬化なんて大技は覇気の無駄遣い。しばらく寝かせといてやれ。」


 ゼファーは自分を殺す気で挑むヴェルゴに対して、怪我をさせぬように彼の長所を引き出しながら、彼が覇気の使いすぎでぶっ倒れるまでしっかり訓練を施したのだ。

 武装色の覇気は使えば使うほど消費する。ゼファーが両腕にしか武装色の覇気を纏わないのは長期戦に対応するためである。

 ヴェルゴの武装色の覇気による全身硬化は強いが、覇気の消費量は高く、数分しか使えない苦肉の策でないのだ。


「ゼファー、ヴェルゴに変わったとこはなかったかい?」

「変わったことと言えば大人しい奴には珍しく、俺を呼び捨てにする程にえらく好戦的だったくらいか。しかし、ヴェルゴの長所は冷静に戦局を見極めて戦闘を運ぶ所にある。それを欠くとはまだまだだが、武装色の覇気と鬼竹はいい。ヴェルゴはまだまだ強くなるぞガハハハハ!!」


 ヴェルゴがドフラミンゴのスパイで自分を捕らえようとしていたなんて思ってもいないゼファーは彼の更なる成長を願っていた。


「そうかい……まぁ、あんたの心配なんざ鼻っからしてないさね。」


 こうして教え子であるヴェルゴを信頼し、彼に裏切られた事など気付きもしないゼファーに呆れるつるは医務室のベットで気絶するヴェルゴを発見したのだった。 
 

 
後書き
次の更新は27日です。

ドレスローザに戻ります。 
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