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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百二十八話

 つるからの報告で内通者ヴェルゴの身柄を無事に確保した事を知ったゴジはヴィオラに優しく語り掛ける。


「ヴィオラ王女のおかけで内通者がすぐに逮捕できた。本当にありがとう。早速だが、王女である貴女が名を変えてドフラミンゴの部下となった理由を聞かせてほしい。やはり6年前に起きたドフラミンゴの電撃的な国王就任事件と関わりがあるんだね?」

「え……えぇ。」


 ゴジがヴィオラを落ち着かせるように優しく声を掛けると、彼女は一呼吸おいて首を縦に振る。


「聞いたことあるわ。6年前、過去何百年にも渡ってただの一度も戦争を起こさずに“奇跡の王”と呼ばれたリク王が突如国民から金品を巻き上げた挙句、多くの国民を手に掛けている所をドフラミンゴが救った事で一夜にしてリク王は失脚し、ドレスローザの英雄ドフラミンゴが国民から熱望されて国王となった事件よね。」


 ロビンが世界的なニュースとなった事件を話す中、ゴジは“戦争屋”として国を潤していた頃の父が8年前の世界会議(レヴェリー)から帰国後して、すぐに苛立っていた事を思い出していた。


『ちっ……せっかく戦争の火種を作ったのに“外交の鬼”に邪魔された。』


 世界会議(レヴェリー)を終えてジェルマ王国に帰ってきたジャッジは荒れており、それを見かねた当時9歳のゴジが心配して声を掛けた。


『父さん、“外交の鬼”とは誰のことなの?』

『ゴジか?ソラの治療後のリハビリと、レイドスーツの開発は順調のようだな。ドレスローザ王国のリク・ドルド3世だ。あの国王は口を開けば国民が傷付くと戦争を回避する為に鬼の如き気迫で外交に望むのだ。』

『へぇー。だから“外交の鬼”か……。』

『そうだ。全く忌々しい。』


 リク王は戦争で国民を傷付けない為に外交努力を惜しまないことで有名であり、他国の王たちからは“外交の鬼”と呼ばれていた。

 ドレスローザ王国はリク王家が王座について800年間、一度も戦争を起こしたことのない唯一無二の国であり、“戦争屋”として国を潤してきたジェルマ王国とは対極にあると言ってもよく、彼の外交努力により数多くの国が戦争を回避してきた。


「ドレスローザが800年間戦争を起こしてこなかったのは奇跡なんかじゃないさ。国民を戦争に巻き込みたくないという強い決意で外交に臨むリク王は諸外国では“外交の鬼”として恐れられていた。この国が戦争を起こしてこなかったのはリク王の外交手腕に他ならない。」


 だからゴジだけでなくは、諸外国の多くが国民が傷つくの誰よりも嫌うリク王が暴挙に出たと聞いた時は世界が驚愕した。


「ゴジ中将ありがとう。父が聞いたら喜ぶと思います。皆様、私の目をじっとご覧下さい。あの日の真実は口で語るよりも私の記憶をお見せする方が早いです。」


 ヴィオラは父を褒めるゴジに頭を下げた後、ジェガードの海兵達に自分の目を見るように促す。


「見せる?それもギロギロの実の力なの?」

「えぇ。ギロギロの実の能力の一つに私の見た記憶を共有出来る能力があるのよ。いくわよ“記憶共有(シェアメモリー)”!」 


 ヴィオラの記憶はゴジ達の想像を絶するものだった。



 ◇


 かつてのドレスローザ王国は今ほど栄えてこそいないが、800年もの長きに渡り一度も戦争を起こしたことがなく、人々が当たり前に平和を矜恃する貧しくとも笑顔溢れる国だった。

 しかし、6年前の悲劇の夜にドンキホーテ・ドフラミンゴは王城に音もなく姿を現し、リク王に言い放つ。


「今帰った。俺はドンキホーテ・ドフラミンゴ。この国の正当なる王だ。」


 かつてドレスローザ王国を納めていたドンキホーテ家は世界貴族の一人であり、他の世界貴族と共に800年以上前にマリージョアに移住したのを機にドレスローザ王国はリク家が治めることになった。

 ドンキホーテ・ドフラミンゴは何を隠そうその世界貴族ドンキホーテ家の子孫である。

 もちろん800年も前に国を捨てた一族の横暴など承諾出来ずに反抗するリク王に対して、ドフラミンゴは国を荒らすと脅し、一夜で100億ベリーを支払う事が出来れば何もせずにドレスローザ王国から出て行き、今後一切ドレスローザ王国へ関わらない事を約束した。


「ドレスローザ800年……戦争の無いことは我らが獣ではない証。野生に堕ちるな!人間であれ!!時間はない各町々へ散れ。国中から100億ベリーをかき集める。成さねばこの国は海賊の国に成り下がる!」


 リク王はドフラミンゴとの戦いを望む兵士達を叱咤激励し、戦いを認めずに自らも恥も尊厳も捨てて国民に頭を下げ、それに心打たれた多くの国民がリク王のために自らの金品を差し出し始めた。

 しかし、本当の悲劇はここから始まる──。


寄生糸(パラサイト)!」


 リク王が突如武器を抜き放ち、金品を持って来た国民を切り、家に火を放つ暴挙を始めたのを皮切りに王国の兵士達もそれぞれ武器を手に国民達に斬りかかったのだ。


「やめろ!止めてくれ!私に近づくなぁ!」

「体が勝手に……」

「いやだぁ!斬りたくない!国民を傷つけるくらいなら死んだ方がマシだ。誰か……私を殺してくれぇぇぇ!!」

「「「誰か……助けてくれぇぇぇ!!」」」


 ドフラミンゴは超人(パラミシア)系悪魔の実、イトイトの実の能力で国王や兵士達を操り人形の操っており、助けを求める国民達の悲鳴と体の自由が効かずに守るべき国民を傷付けていくリク王達の叫びがドレスローザ王国に響き渡る。


「フッフッフッ!全くひでぇ王だ。」


 国民達の恐怖が最大限まで高まったその時、ドフラミンゴ率いるドンキホーテファミリーが現れて、暴挙に出たリク王や兵士達を瞬く間に制圧した。

 ドレスローザ王国の国民達は自分達を救ってくれたヒーローの登場に歓喜する。


「「「ドフラミンゴ!ドフラミンゴ!ドフラミンゴ!」」」


 国中に響くドフラミンゴコール。

 それに応えて広場の高台に立つドフラミンゴが国民に告げる。


「過去何百年貧しい国を営み続けたリク家の王族。終いにゃ、私欲が為国民から金品を奪う浅ましさ!俺はこの国に富を与える!!」


 そう全てはドンキホーテ・ドフラミンゴの罠だった。


「「「ドフラミンゴ!ドフラミンゴ!ドフラミンゴ!」」」


 その後、窮地を救われた国民達から圧倒的な支持を受けたドフラミンゴは国王となる。

 ヴァイオレットの記憶はまだ続く……ドフラミンゴはリク王の娘であるヴィオラ王女の持つ超人(パラミシア)系悪魔の実ギロギロの実の能力に惚れ込んでいた。


「ヴィオラ王女、リク王はまだ生かしてある。俺は仲間の望みであれば聞く男だ。」


 ヴィオラはすぐにドフラミンゴの言いたい事を悟り、彼に頭を下げて忠誠を誓う。


「父を殺さないと約束してくれるなら、私はあなたに従います。」


 こうしてリク王の娘ヴィオラ王女はヴァイオレットと名を変えてドフラミンゴの部下となったが、その数日後、最高幹部ディアマンテから最愛の姉スカーレットの死を告られる。


「ヴァイオレット!スカーレットはお前の姉だったな。街の市場で食料を買い込んでたんだ。空腹ぐらい我慢すりゃ死なずに済んだ。マヌケめ!!」


 ドフラミンゴがヴィオラと約束したのはリク王の安全であり、スカーレットの安全は約束しておらず約束を反故にしたわけでない。

 それを知ったヴィオラは部屋に戻るなり、怒りで短剣を持ち出した所をドレスローザ軍の兵士長であるタンクに止められる。


「離してタンク!もう嫌ぁぁぁ!!」

「早まった真似はおやめ下さい。我々も城に残ります。貴女をお守りする為に……!!」


 こうして旧ドレスローザ軍の兵士の多くはヴィオラを守る為にドフラミンゴに忠誠を誓い、ヴィオラはドレスローザに住む国民を守る為にドフラミンゴに尽くして暗殺者兼ドフラミンゴの愛人となった。

 ドフラミンゴはヴィオラとの約束を守り、リク王には手を出さず、国中から恨まれている彼は旧ドレスローザ兵士に匿われて身を隠しながら何とか生きながらえており、そしてスカーレットの忘れ形見であるレベッカはスカーレットの死を看取ったオモチャの兵隊と共にひっそりと暮らしている映像で幕を閉じる。


 ◇


 全ての記憶を見終えたゴジ達は言葉が出ずにただ涙した。


「「「う”ぅぅ……」」」


 特に女性陣にはより多くの情報を得る為にも愛する国を奪った男の仲間になるだけでなく、より信頼を得るために愛人となる事を選んだヴィオラの国を思う覚悟は強烈に映った。


「ヴィオラ王女……全てはあんな男を王下七武海にした俺達の責任だ。本当に申し訳な…」


 ゴジは泣き崩れるように膝を付いて頭を下げようとしたところ、突然パンっという音が宵闇にこだます。

 自分が殴られた事に気付いたゴジが顔を上げるとそこには烈火のごとく怒りに顔を歪めたヴィオラが平手を振り切った状態で睨んでいたが、その後、彼女はゴジと目が合った直後に顔を両手で覆って泣き崩れた。


「止めてよ!!私は6年前のあの日から今日ここで貴方に会うまで、ずっとドフラミンゴを七武海に任じた世界政府や海軍を恨んでいたわ。でも、貴方に出会った瞬間に気付いてしまったの……。」


 言うまでもなくゴジの体は外骨格と常に纏い続けている武装色の覇気で守られており一切ダメージはないが、対照的に力の限りゴジの頬を打ったヴィオラの掌は青く腫れていた。

 先程崖の上でゴジを待っていたヴィオラはドフラミンゴを王下七武海に任じた責任を海兵であるゴジに果たしてもらおうと強い気持ちで待っていた。


 ───これで私たちは赦される……


 恨み言の一つでも言ってやろうと思っていたヴィオラは崖から上がってきたゴジの姿を見た瞬間にただ安堵し涙した。


 ───救われるではなく、赦される?


 ヴィオラはドフラミンゴをによる支配から解放される事に対する安堵感よりも己の罪から解放されると言う安堵感に気付いてしまった。


「ずっと……気付かないフリをしてきた……。でも、気付いてしまった以上、もう誤魔化すことなんて出来ない。この国が無様にも海賊に乗っ取られたのは政府のせいでも、海軍のせいでもない!!国民を守るという義務を果たせなかった私達リク家の責任よ!!!」

 
 ヴィオラはドフラミンゴを王下七武海に任じた世界政府を恨んだのだが、真に恨まれるべきは自分達リク家であり、国を奪われた責任は自分達にある事にようやく気付いた。

 いや、正確には6年前のあの日にあまりにも呆気なく国を奪われた絶望感でそれを認める事は出来なかったが、天の裁判官とも呼ばれる麒麟の名を冠するゴジの姿を見た瞬間、否応なく己の罪を認めさせられた。

 そう……彼女が今日までドレスローザ王国の為にドフラミンゴに尽くして来たのは国民を守るという責任を果たせなかった贖罪に他ならなかったのだ。


「王の条理!?」


 ゴジはそんなヴィオラの言葉を聞き、7年前にジェルマ王国を出る直前、兄イチジの言っていた言葉を思い出して目を丸くして驚いていた。


『父上、王には王たる条理があるのならば俺達四人は王族としての勤めを果たしてみせます。』


 そのヴィオラの王女たる迫力に飲まれたヒナ達ですら動けない。

 仮に動いたとしたら自らの間違いに気付いたゴジに止められていただろう。


「ゴジ中将……お願いだから無責任に私達の責任を奪わないで!?貴方の言葉に甘えてしまったら……私は私を許せなくなる!!」


 王家は国民から税金を徴収して贅沢な暮らしをする代わり、国民を養い、外敵から守る義務がある。

 その義務を果たせなかったのはリク家であり、それを今日まで認めることさえ出来なかったヴィオラは不甲斐ない自分を恥じながら、ただゴジに助けを求めたのだ。


『ゴジ中将……どうか…この国……を……ぐず……助げで……ぐだざい!!』


 しかし、やっと気付くことのできた罪の責任まで背負うと言ってくれるゴジの甘い誘惑に縋りそうになる自分を許せなかった。


「ヴィオラ王女、先程の失言を訂正させて欲しい。改めて俺は一人の海兵として海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴを捕らえに来た。それがこの国を救う事に繋がるなら協力して欲しい。」


 力の限りゴジを殴ったヴィオラの手の骨にはヒビが入っているが、それは国を奪われた責任を無責任にもゴジに押し付けようとした自分への罰であり、何よりも完全な不意打ちの攻撃を受けても無傷。全く意にも返さないゴジの噂通り以上の強さを垣間見れたことが彼女にさらなる希望を抱かせた。


「えぇ。私がこの6年で得た全ての情報を貴方達に伝えます。ゴジ中将、そしてジェガートの皆様、どうかこの国を救って下さい。」

「あぁ。任せてくれ!!」

「「「うん(えぇ)!任せて!!」」」


 ゴジ達の力強い言葉にヴィオラは涙を拭って顔をあげてゴジ達を見た後、笑顔で再び深々と頭を下げた。 
 

 
後書き
次は29日です。

ドレスローザ王国奪還の作戦概要が明らかになります。 
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