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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百二十六話

 ゴジはヴィオラの肩を掴んで慌てた様子で詰め寄る。


「ヴィオラ王女…!?海軍の内通者とは誰だ!」

「海軍本部第5支部基地長“鬼竹”のヴェルゴ中将です。」

「「「なっ……!?」」」


 ヴェルゴの名前を聞いて、彼を知る全員が驚きを隠せない。

 彼は部下や市民にも優しく、そして強い。まさに理想の海兵を体現したような人だからである。


「っ!?ロビンちゃん!すぐに婆さんへ報告だ!」

「任せて!」


 ロビンはその場で電伝虫をコールしてつるに報告する。


「それで……ヴェルゴ中じ……いやヴェルゴが襲う俺の大切な人って誰なんだ!?」

「それは……貴方のお爺様……“黒腕”のゼファーよ!!」


 ヴィオラが切羽詰まったようにターゲットの名前を告げると、真剣に話を聞いていたゴジ達は別の意味で驚愕した。


 ◇


 今から5年前、ヴィオラがドフラミンゴの配下となって約1年がたった頃、彼女はある海兵の躍進を知る。


「ドフィ、たった12歳の新兵が“若月(みかづき)狩り”カタリーナ・デボンを捕まえたって本当なの!?」

「フフフ……どうせ何かの間違いだろうが、念の為、確認しとくか……」


 ドフラミンゴは海軍に潜入させている部下からもたらされた情報は事実を肯定するだけでなく、曰くその新兵は元海軍本部大将の“黒腕”のゼファーの孫、僅か11歳で大将“青雉”に土を付け、彼を育てる為だけにCP-0(シーピーゼロ)が動いたというものだった。


『ドフィ、あのクソガキ……“麒麟児”は危険すぎる。』

『ヴェルゴ、お前の正体がバレないようにこのガキを始末することは可能か?』

『厳しいな。さらに悪い知らせだ。闇の世界でトップに立つ女“歓楽街の女王”ステューシー、この女の正体はCP-0(シーピーゼロ)だった。この女が海軍に入隊するや否や“麒麟児”に四六時中張り付いている。』


 サイファーポール・イージス・ゼロと呼ばれる世界政府直轄のCP-0(シーピーゼロ)の実力はこの海に住む誰もが知るところである。


『フフフ……そうか。政府は闇の世界でトップに君臨するあの女狐を表に引きづり出す程に“麒麟児”を買っているのか……引き続き動向を探れ。』


 ここドレスローザにおいてヴィオラのギロギロの実の能力に死角はない。


「ドフラミンゴには海軍に潜入させている部下がいるのね……ヴェルゴって……まさか“鬼竹”のヴェルゴ准将!?」


 彼女は自室にいながら、ドフラミンゴの電伝虫での会話を見て、ヴェルゴという名前を聞いて、覇気と六式を使って新世界でも大活躍している海兵だと気付いた。


「世界政府が七武海の称号を与え、この国に君臨する事になった海賊ドフラミンゴに私達はこれだけの傷を負わされたのに……海軍は身内にいるスパイの存在にすら気付いていない。何が……正義……笑わせるわ!」


 ヴィオラはドフラミンゴに国を奪われた挙句、最愛の姉を失い、その男に尽くすことを強いられている。さらに、父と姉の忘れ形見である姪は国中の反感を買い、正体を隠した日陰生活を余儀なくされている現実に対して、無能な政府や海軍への怒りで歯ぎしりする。

 当時のヴィオラは海軍や政府に絶望しかなく、ドレスローザを守る為にドフラミンゴの信頼を得るという決意を新たにして与えられた暗殺者としての仕事だけでなく、公私においてドフラミンゴに尽くした。


「ドフラミンゴは仲間の頼みならある程度聞いてくれる。彼の信頼を得て、私がこの国を守らないと……」


 そして、今ではドンキホーテファミリーと呼ばれる幹部だけではなく、ドフラミンゴの愛人という地位を確固たるものとして“若”と呼ばれるドフラミンゴの対となる“姐さん”と呼ばれる地位までのし上がった。

 しかし、昨年、彼女の考えを180度変えた出来事が起こった。


「“麒麟児”が七武海であるクロコダイルを拿捕!?どういう事なの……何故、海兵が七武海に手を出すのよ!?」


 彼女の疑問を解消したのはドフラミンゴが五老星から入手したニコ・ロビンへの恩赦の真相をファミリー全員に話した時だった。


「“麒麟児”……いや今は“黒麒麟”か。このガキはアラバスタ王国の乗っ取りを目論んだクロコダイルの思惑をいち早く看破し、王下七武海である奴を独断で拿捕したそうだ。そしてニコ・ロビンというたった一人の女を救う為に五老星を脅して司法取引を認めさせたらしい……フフフ……。」

「「「なっ……!?」」」


 ドフラミンゴは苛立ちながら、ファミリー全員に警告する。

 この世界において海賊ですら世界貴族には逆らわないのが鉄則。この世界の絶対のルール。

 ドフラミンゴがそのルールを平然と犯せるのは彼がかつてマリージョアで暮らす世界貴族の一人であり、世界貴族しか知りえない秘密を武器に世界貴族と高いコネクションを持っているからである。


「いいな?お前たち……この男だけはこの国に入れるな!ヴァイオレット、この男が来たらすぐに知らせろ!この国に入る前に必ず俺が殺してやる!!」


 しかし、ゴジは世界貴族ではないにも関わらず平然と世界のルールを犯す異端の海兵であり、ドフラミンゴはゴジという存在を世界貴族の誇りにかけても許す事は出来ない。


「えぇ……。ドフィもちろんよ!私は貴方の眼だモノ!」


 ドフラミンゴに妖艶な笑顔で微笑むヴィオラは己の中に湧き上がる興奮を必死で押さえ込んでいた。

 5年間、ドフラミンゴ達の前で従順な部下を演じ続けてきた彼女の笑顔というポーカーフェイスを誰も疑わない。


 ───ニコ・ロビン。歴史の本文(ポーネグリフ)を読めると言うだけで懸賞金を掛けられたオハラの生き残り。


 公式では戦艦7隻を沈めた“悪魔の子”と発表されているが、ある程度闇の世界に精通した者ならば、それは冤罪であり、僅か8歳の少女が7900万ベリーという多額の懸賞金をかけられた本当の理由を知っている。


 ───“黒麒麟”……彼は……彼だけは違う。

 ───七武海の称号や世界貴族すら、彼の前では意味をなさない真の正義を背負う男!!


 世界貴族や王下七武海を諸共もせず、正義の為に七武海であるクロコダイルを拿捕し、無実の少女を救い出したゴジだからこそヴィオラはもう一度だけ正義を信じて賭けてみようと思った。

 この決意から約1年が経った先週、ドフラミンゴはファミリーに再度招集を掛けた。


「先日、“黒麒麟”がモリアを拿捕し、“鷹の目”に瀕死の傷を負わせたらしい。」

「若……それはなんの冗談だ!?どちらも七武海だぞ……何故海兵が七武海を襲っているんだ!?」

「簡単な話だ。元々王下七武海ってのは海軍本部だけでは四皇に太刀打ち出来ないと判断し、名だたる海賊に恩赦を与えて対四皇に備えようと作られた制度だが、ジェルマ王国の躍進によって必要なくなったから“黒麒麟”に始末させてるのさ。」


 ジェルマ王国の躍進によりかつての三大勢力の均衡は崩壊して今は四大勢力と呼ばれているが、世界政府は“黒麒麟”を使って王下七武海を切り捨てようとしているとドフラミンゴは推察した。

 ゴジが与えられた勅命は王下七武海を見極めて恩赦を与える海賊と拿捕すべき海賊を見定めよというものだが、“悪のカリスマ”とも呼ばれるドフラミンゴの頭脳から導き出されたそのそこに至った推察はほぼ正しい。


「「「なっ……!?」」」


 ドンキホーテファミリーは息を飲む。

 ドフラミンゴがドレスローザで好き勝手やってこれたのは他ならぬ王下七武海という称号に守られているからである。


「海軍本部のほとんどの海兵が世界会議(レヴェリー)の警備に参加している中で、奴は魚人島に行ってるらしい。どういうことか分かるか?」


 ここまでの話の流れでドンキホーテファミリー全員がゴジの狙いに気付いて声を揃える。


「「「“海侠”のジンベエ!?」」」

「そう。俺が世界会議(レヴェリー)に参加しないと知ってすぐにターゲットを切り替えたのさ。せっかちな野郎だ。奴が魚人島から戻ってきたら次に来るのはここドレスローザだ……フッフッフッ!!」


 ドフラミンゴは世界会議(レヴェリー)に参加する為にマリンフォードへ行けばその場で拿捕されると読み、参加を取りやめたのだ。


 ───本当に凄い。もうすぐ……もうすぐこの国……彼が来る!!


 一度は正義に絶望した彼女が待ちに待った日がとうとう訪れることになる。

 先日、ヴェルゴからドフラミンゴに対してある報告がもたらされた。


『ドフィ。“黒麒麟”が魚人島でジンベエと殺りあった末、マリンフォードに戻ってきた。』

『フフフ……。やはりか。それで“海侠”のジンベエは捕まったか?』

『いや……“黒麒麟”が魚人島で数名を拿捕し、海底大監獄(インペルダウン)のレベル6へ移送する予定だったが、急遽取り止めになった事から考えると……』

『海の中は元々魚人の領域。一度は捕らえた“海侠”のジンベエとタイヨウの海賊団の幹部共に逃げられたか……。』


 ゴジが移送する予定だったのはホーディ一味であり、ジンベエとは手合わせしただけだが、断片的な情報を繋ぎ合わせたヴェルゴとドフラミンゴは『ゴジは捕らえたジンベエを移送する予定であったが、逃げられた。』と推察した。

 ホーディ一味によるリュウグウ王国の乗っ取り計画はゴジの活躍で計画段階で頓挫し、主犯格のホーディ一味もE.S(エネルギー・ステロイド)の副作用で余命幾ばくである事や地上移設が決定したリュウグウ王国の悪評に繋がるといった観点から世間には公表されていない。


『“黒麒麟”はマリンフォードへ帰ってきて早々に数名の部下を連れて新世界へ向けて帆を進めた。』


 “海賊女帝”ボア・ハンコックがいるのは凪の帯(カームベルト)に存在するとされる女ヶ島であり、新世界へ向かったということは目的地は一つしかない。


『やはり、奴が向かっているのはここドレスローザ。次のターゲットはこの俺だなフフフ……。ヴェルゴ、早急に例の作戦に移る。すぐに“黒腕”のゼファーを捕らえろ。』


 ドフラミンゴは慎重な男である。

 ゴジとの衝突に備えて彼が祖父と慕う“黒腕”のゼファーを人質に取ろうと考えたのだ。


『容易い。今の奴はルーキーである“牛鬼”エドワード・ウィーブルに遅れをとる程度の年老いた隻腕の老人にすぎん。』


 ヴェルゴは十数年前から海軍に潜入して実力のみで一兵卒から中将まで昇進し、海軍本部本部第5支部の基地長を任させれるが、当然新兵時代にはゼファーに鍛えられた将校の一人である。

 当時こそまだ実力ではゼファーに及ばぬと感じたが、彼は六式と覇気を極めて当時より圧倒的に強くなり、当時のゼファーを完全に超えた自信があった。

 さらに齢70を迎えて体力も老い衰え、隻腕となったゼファーと強くなった今の自分では負ける要素はないとドフラミンゴに断言した。


「大変……!?“黒麒麟”が来たらすぐに知らせないと!」


 ドフラミンゴはファミリー総出でゴジの出自や性格等を洗って判明したことは、ゼファーが北の海(ノースブルー)で出会った戦争孤児の子供であり、極度の女好きだが、それを逆手に利用する強かさも併せ持つ。

 戦闘においてはゼファー直伝の拳法、六式、魚人空手を始めとした様々な武術の他に、さらなる力を求めて剣技を習得し始めて手が付けられないという話であった。


『“正義のヒーロー”気取りの小僧が正義を取るか大切な家族をとるか見ものだな!フフフ…フハハハハ!!』


 ドフラミンゴが目を付けたのはゼファーを馬鹿にした三大将に噛み付いて覇王色の覇気に目覚めたこと。

 ドフラミンゴ自身も長く苦楽を共にしてきた幹部に対しては「家族」と呼んで非常に大切にしており、笑われることすら嫌い、彼らの失態は自分の采配ミスとして一切咎めず、人質にされれば家族を救う為に全力を尽くす男であり、ゴジの家族であるゼファーこそ、ゴジの弱点になり得ると睨んだのだ。


 ◇


 ターゲットがゼファーだと知ったゴジ達は張り詰めていた緊張の糸がプツリと切れて腹を抱えて笑う。


「「「わっはっはっは(キャハハハハ)!!」」」

「えっ……“黒腕”のゼファーは片腕を失った上、もう70歳を迎える高齢じゃないの?貴方、心配じゃないの?」


 ヴィオラはゴジ達の反応に唖然とするが、誰よりもゼファーを知るゴジは笑顔で断言する。


「“黒腕”のゼファーは俺の爺さんである前に俺の“ヒーロー”だぞ!爺さんならたとえドフラミンゴ本人が相手でも負けねぇさ。」


 ゴジが断言した直後につるから連絡を受けたロビンが声を上げる。


「ゴジ、おつるさんが医務室でボコボコにされて気を失ってるヴェルゴ中将を発見したわ。もちろんゼファー先生は怪我もなくピンピンしてるそうよ!!」

「なっ……!?」


 笑顔で報告するロビンを見て、今度はヴィオラが口を開けて驚いていた。

 ヴィオラはヴェルゴとは会ったことはないが、ドフラミンゴが絶大な信頼を寄せるヴェルゴはファミリーの幹部でも随一の実力者ではないかと思っていたからである。


「皆忘れてるかもしれないけどさ……“仏”のセンゴク、“英雄”ガープ、“大参謀”つるという現在の海軍本部の中枢を支える同期生を抑えて、この世代で一番強いのはかつて史上最年少で海軍本部大将になった“黒腕”のゼファーなんだよ!」


 ヴィオラはゴジの笑顔を見ながら安堵して微笑む。


「うふふっ……そう。よかったわ。どうやら私の取り越し苦労だったようね。」


 さて、ゼファーを襲ったはずのヴェルゴが何故医務室で眠っていたのか?

 それはゴジがドレスローザ王国に到着する数時間前に遡る。 
 

 
後書き
次の更新は25日です。

結果はすでに判明してますが、もちろん次はゼファーVSヴェルゴです。 
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